北天の梢真中にま夏の宵を期して
ミウジックの女神が現われる
つよいほし琴と命つぐるこの星座
海から生れてここに昇った音楽の司は
リズミカルな藻なす腕に立琴をだき
女神なのに前立のある兜で額を飾る。
その左右に音楽の弟子二人よりそう。
右の一人は龍座、左の一人は白鳥座
二人とも美少女ながらやはり少年の装。
龍は鱗にはづみをつけて絃をひき
白鳥は矢をくわえて翼を整えるのは
音は発して速やかにゆくものの故か。
ひびきは弦と弓の力の調和であるからか
つたわって流れて遠ざかってゆくからか
龍も白鳥もミウズに海からついて来た。
一夜かなでた音のしたたりは
よあけ朝つゆになって地にしづくして
煌めいて人の目は息に吸われて消える。
それは人々の魂ふかくしみこんで
ああいつか呼ばうひびきのある時に
こたえて鳴り出すしほを待つために。
(ギリシャへのノスタルジア)
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