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青森縣俚諺集(東奥日用語辞典及青森県方言集)

青森縣俚諺集(東奥日用語辞典及青森県方言集)

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青森縣俚諺集(東奥日用語辞典及青森県方言集)

『東奥日用語辞典及青森県方言集』(昭和7年刊)の一項目に「青森縣俚諺集」があります。(青森県の方言

地域に残る「ことわざ」がまとまって収録されているのは珍しいと思い、テキストにしました。

読みやすくするために表記を変えたり、差別的な表現を削除したりしていますので、学術的な引用には適しません。参考程度にお使いください。

画像は書籍内に掲載されていた広告です。(あなたを健康と快活に導くチヨコレートの最高水準……森永チヨコレート)

(2013年2月 金森国臣)


アの部

上げだ中の屋根石 (其人のやった事として案外成績がよい……嘲笑の時に用う)

アパよりワッパ (色気よりも生活が先きだとの意)

誂へた股引 (シックリ合う意)

甘口サ塩 (甘い人間には刺激を与えろとの意)

アダリバッァコガ(槽) (罰のあたる時はコガを冠っていても当る、悪事必罰)

青田と赤子は褒められぬ (稲作も人間も完成しない中は価値が解らぬ)

あつけ別にした様だ (低能者を孤立させた様だ)

朝起と早作りに損したものァ無い (早作りは田の早植)

あたりほとり見て糞たれろ (事を始めるにはよく調査してやれ)

小豆飯サ草履 (郷里を逃走すること)

あえものからコバシ味 (あえものから香味をとった様だ、即ち気抜けた場合介を云う)

アンペ放楽猫の皮 (道楽息子を揶揄したる言葉)

熱い飯サとろろ又は熱い飯サ筋子 (塩梅のいいこと)

アッケラポンな日本見でら (迂鈍な者の風刺)

尼コサ風鈴 (恰度似合うた)

尼コさ簪 (不調和な態)

アグドとノドペ

油紙さ火 (快弁の者)

あるァ病い (一、人には必ず病気がある 二、あるに任せて古い帽子など其のまま冠る)

雨気に星ない、たわけにとどりない (たわけものに締りがない)

秋あれ半作

秋山はやすい(吝嗇な)おばの家よりいい (秋山にたべもの沢山)

秋の茄子嫁に食わせな

あてごととモッコふんどしは向うから外れる

合せもの離れもの

アブと糞 (中よしの形容)

あきんどと屏風は曲ねば立たぬ

あずき餅、絹漉し(ささやかな事にも注意行屈くを言う)

当るも八卦当らぬも八卦

あてられた茸汁

あかの六月でも火の側ァいい (火の親しみあるを云う)

朝眼前の煙草と死ぬ時の気つけァ何サもきかぬ

赤いものァおなごサ薬 (女は宜しく着飾るべし)

イの部

痛い事と悲しい事ァ黙っていられねぇ

稽妻サとろろ (早いことの比喩)

犬と糞(離れる事の出来ない仲……悪く云う時に用う)

いい馬鹿ァ三人前 (其の愚や及ぶべからず)

犬の屁、ごま味噌 (醇いこと)

従弟と馬の糞ァ(或はべこの糞ァ)何処にもある。

家でハダガレば外でハダガル (躾の悪い者は他所でもそうだ)

色気と瘡気ァ無い者ァない (色気は人間の本能だ、人の心は同じだとの意)

石カラさ馬 (殺風景な意)

石カラさ橇 (無理を通すこと)

犬サ投げる土も無い (落魄した態を云う)

犬ァ撫ぜ塩梅、人ァさがしあんべァ (人を使用するに対しての教訓)

石から綿 (吝な者を云う)

家の前の鬼コ、他家の前のメンコ (家で威張って他へ出ると意気地ない臆病者)

犬とワラシは痛いうち泣く

色気より食い気

一升徳利サ二升はいらぬ

ウの部

熟んだ柿ァ潰れるテも物言わない (大人は濫りに騒がぬ)

うるだぐ男ァ金にならねェ

馬に銭

馬の尻サ念仏 (無駄)

うるだぐ男とハダカる女は見られない。

売物サ花コ (一、売物を美しく飾り立てよ 二、年頃の娘を美しくせよ)

うどの大木 (一、えらそうに見えても中味がない 二、達者そうでも病気がち)

うそは日本の宝 (註、これは他地方より流入したるものらしいが地方老人より採集したもの)

うまいところは骨にある (一、肴の骨をしゃぶればうまい 二、努力すればよいことがある)

エ、ヱ、ヰの部

エヘンてば吐月峰(はいふき) (気のきく事)

得手勝手ァ寝てても糞する

絵こサ描いだ地震 (座り込んだ侭ガミガミ八釜しい人間)

オ、ヲの部

大きネブタ後から (一、徒らに急いだり狼狽する事は大人の態度でない 二、大器は晩成する)

男ァ度胸、女ァ愛嬌、坊主ァ御経 (いづれも欠いはならぬもの)

お前ァ一番、馬の糞ァ二番、 (対者の無能を揶揄したる言葉)

おまるサ糞 (二度手間の意)

男元気、蛸イボ (蛸にイボが必要な如く男は元気が要る)

お天道様さ石 (及ばぬ事)

思う様になれば蟹ァ横に歩かぬ

親の意見とカスベのとげ (怖くないとの意)

おうほう盗まれたのと賭博の借賃ァ人に云わねェ (おうほうは南部の方言で濁酒のこと)

おぼこネ花コ

おなごァ化物 (婦人は化粧次第全然変ったように見える)

お寺にケカツなし (寺院の経済に困らぬを言う)

おふく嫁に呉れて虱襦袢をカチャに着る。

女心と秋の空―男心と秋の空

大つかみより小つかみ (欲張ると損)

オンヂとベコぁ死んでも損がない

思うように行けばゴンダイの才兵衛ァ坊主にならぬ

遅れ三杯 (宴席に遅着せるものへの制裁)


カの部

嬶と畳ァ新し方ァいい

ガンド原サ昼寝 (何処にいても油断するな)

ガジョ馬さジョ水 (良馬に米洗水……いくら遣っても限りがない、又は大食の意味)

カヅ(人の名)嬶ァ寝言 (妄想狂をさす)

カネ(人名)股引の紐

燗鍋かからねば薬鍋かかる (酒の燗をし得るのは一家が達者な証拠だ……上戸の気焔)

ガノ字(娼妓)ァ嫁 (以前が以前だから今も今だの意)

空骨病(からぼねやみ)の大まぐらい (怠け者の穀つぶしの意)

烏ァ垢離取る (早いこと)

河童の水くれェ (猿も木から落つると同意)

カチャクチャさ棒 (混雑の中へ体を通した様で紛糾錯綜真相を把握出来ぬこと)

カラボネヤミのイタデ仕事 (怠者に限って無理仕事をする)

金持ァ糞ァ味噌になる、貧乏者ァ味噌ァ糞になる (金持は座して愈々富み、貧乏者は働いても更に貧乏になるとの意)

がの字なら良いがの字 (ドン底に落ちても気概を失う事はよくない、よい心掛を失うなとの意)

金持と貧乏者はだまって居られぬ (一は乱費のため一は生活のために)

金持と灰吹はたまれば溜る程きたなくなる

金槌の川流れ

餓鬼も人数 (人多ければ天に勝つ)

嬶の顔ァ三品 (嬶の顔を見れば三品食したほど気もちよく夕飯がうまい)

キの部

ギャロの子ァ鱒にならぬ

ギャロの面サ水 (恥を知らぬ者に意見しても無駄)

木で鼻かむ (素っ気なくて取つく島もないこと)

義理と褌ァ外されない (義理は欠き難いもの)

木サ餅ァ成る (下らない事を空想する意)

金銭に親子ァ無い (金銭取引は厳密にすべきを戒むるときに云う)

着床寝は百病の因

茸食うなら虫くえ (茸に虫多し)

クの部

噛ッつき犬サ棒 (粗暴、暴慢の者に近寄るな)

火事と蟹ァ横に這う

糞喰た狢 (ムッツリし過ぎてる人間)

糞ド虻 (仲善しの意)

喰ったり持ったりテンガグ婆 (好待遇を受けた場合を云う)

食い物ど化物ァ油断すな (謙遜遠慮又は躊躇し過ぎると損する)

糞と味噌一つ口 (物の区別を知らぬとの意)

食い物と親の仇ァ逃がすな (食い物には遠慮してるな又物事の機会を外すなの意)

糞喰れァ観音 (偶像礼拝対する反感。自力で行けの意)

暗隅サ捧 (頗る突然の意)

呉れたものを取れば盗人だ

薬ソウ倍百姓百ソウ倍

食い溜め寝溜めは何にもならぬ (多食多眠を戒め勤勉奨励)

ケの部

煙い方ァ色男 (男振りがよければ煙まで寄ってゆく)

ゲガヅ坊主ヅサイコ (腹の空いた坊主が法事へ行った時のよう)

尻サ分銅 (尻の重い奴)

尻ふまれて酒代

芸なしの大まくらい

毛虱に附かれたよう

喧嘩は御免、砂糖餅ァ食いほぎゃ

コの部

コゲの後分別 (馬鹿者ほど後悔をする)

子供と犬の仔ァ喰い方さつく

鴎(ごめ)の高上り雇いの高枕 (時化のため出漁出来ぬこと)

言葉に御用銭がかからぬ (敢て税はかからぬから言うべきことは言うべし)

米の飯ァ仕事をする (克く活動するものは克く食す)


サの部

サッてがら三服 (仕事は落付いてかかれ)

賢し鰍丘サ上る (小賢しく走回る者は却って失敗するの意)

先勝(さきかち)バカ勝ち、あと勝ちァ千勝ち (勝って油断するなの意)

薩摩の飛脚

サルケのくべだてァ聟逃げる

シの部

情っぱり無理通す、春風ァ壁とおす、ホッバレ(寝小便)莫蓙とおす (強情者に対する風刺)

死なば盆前、飲まば飯前 (何事をなすにも時機がある)

シミツ(礼儀厳格系の意)と下痢ァ腹サ物入ってる中 (貧すれば礼儀、厳格をも欠く)

虱着物カチャ(裏) (サッパリした気持の意)

獅子踊サおがし (真面目ばかりでは通らぬ、柔か味も要る)

死ぬ馬も屁 (どうせ負けるまでも最後まで踏張れの意)

邪魔になねば一人前 (役に立たぬまでも人の邪魔にならなければマァ一人前さ)

七兵衝ァ牢 (悪党七兵衛が捕手に「明日行く行く」で遂に代官所に出なかった、用の足りぬ時を言う)

庄屋殿ァ御用 (唯々として従うを云う)

しかたに骨ない、あくどに爪ない、

仕事にかければ鬼

虱たかれの十九日

仕事ァ仕事教える

シミツとサルコじぎァするものでない。

スの部

好き連ァ泣き連れ

雀のタノモシ (姦しい形容詞)

末ばって臭いのァ神原(かはら)の森ァ屁(北郡神原村の森と云う者、鼻先に糞をつけてるのを知らずに『末張って臭い、之ァどうした屁だ』と歩いていた。頗る間抜けた人間を云う)

セの部

船頭ァよげァ(多い)だば船ァ丘さ上る (中心となる統率者がなくてやる仕事は失敗する)

疝気サ目薬 (見当違いの意)

節句より前の日

切ないばバラかぶ (苦しくなれば向う見ずとなる)

せく男は金にならぬ

疝気やみサやませ(敵同志)

ソの部

蕎麥と眼ァねる程よい

損した処とまま貪った跡に永くいな

外サ張る人ァ内詰める


タの部

大木サ蝉 (妻より夫が小さい夫婦)

田走るよりクロ(畔)走れ (急がば廻れの意)

タゴ馬も得手 (詰らない人間にも得意があるもの)

立板さ豆 (快弁の者)

大黒柱さボタ餅 (醜女を云う)

だまって降る雪ァよげ積る (浅き瀬にこそ仇波は立て)

大黒様サ赤目 (貧乏を自嘲した意)

建元がいつも損をする。

だまっていたら親でも使え

タマ風六時間 (タマ風は長く吹いて六時間余に及ばず漁師等の諺)

たたりもツけは外サ生れない (外敵恐るるに足らず内患憂うべし)

タダより高いものはない (タダで貰った物は返礼せねばならぬので却って高値になる)

チの部

チョチョジさ鈴 (行々子鈴のことで饒舌を風刺す)

爺ァ姥がら、姥ァ爺がら

提灯持ちは先

近いどこの手あぶり

ツの部

津軽の手長、南部衆のメノゴ (津軽人が油断がならない、南部人はメノコでも好きな程好色だと云う旧藩時代より両地方人の性格を言ったもの)

つきあいコだば家コも焼く (世の義理の辛さを言う)

使われる者より使う者ァ涙三粒多げァこぼす (同)

津軽衆ァしゃべてれば来る (噂をすれば影と同意)

津軽の雁立ち (一人が帰れば皆帰る津軽人のクセを風刺したもの)

津軽の続き小便 (右と同じ癖を風刺したもの)

面(つら)洗わずの味噌桶 (無精者を風刺した言葉)

搗き臼さ猫

土貪う虫は土

漬物時ァ嫁ァ逃げる。

テの部

天サ竿 (とどかぬ意、非望を戒む)

手代コ番頭コ盗人コ (奉公人根性を風刺したもの)

テドリ(大釜)煮立てれば隣が儲げる (無駄に大釜を煮立ててる様では隣家より貧乏になる)

天神様から勘当 (無学者の事又は文字の下手な意)

手桶から火 (あり様のないこと)

出もの腫れもの所嫌わず

トの部

遠くのオヤグ(親類)より近くの他人 (去る者は日に疎し遠く住む親類より近隣の情は大切だとの意)

年寄と金釘ァふくんだ方ァいい (年寄りは余り出裟張るな)

年寄り馬さアリゲア (アリゲアは馬の速歩―出来ぬものに無理に事を教えても無駄との言)

年寄りの耳喰う (マセたことを云う奴のこと)

道草医者 (役に立たぬ意)

ドンヅさ目薬 (見当違いの事)

鳶(とんび)から鷹

戸口三寸 (男は戸口三寸外へ出れば敵がある)

どした畳でも叩けばほこりが出る (如何なる人にも欠点はある)

隣の二才馬と他村の火事ァ面白い (利己心の強いものである)

泥棒にも三分の理屈 (如何なることにも理屈はある)


ナの部

流れ川で尻(けつ) (都合のいい、さっぱりした事)

無いものハダレば親の業タガレ (無理に無心して親に心配をかけるの意)

長話ァ糞話 (長い座談は結局尾籠な処へ落つる)

鳴る腹ァ下る (ものには必ず原因がある)

何事も三度 (一回二回失敗しても心を挫くなの意)

納豆の中だ (同類、縁族の意)

七ツ下りの雨気と年寄の浮気は止まぬ。

夏も小袖

仲う人は七段語る (媒酌人の話に嘘が多い)

ニの部

鰊ど筍 (仲のいいこと心の合う意)

二十後家立っても四十後家ァ立たぬ。

ニグニグ腹からメゴメゴ生れた (憎い嫁の腹から可愛い孫をなしても嫁は憎い)

逃げた魚が大きい

ヌの部

糠サ釘 (労して効なき事)

温(ぬる)いば入る、熱ば上る (利己主義の者を云い)

盗賊と大工気ァ無い者ァない (文字の通り)

糠三升有ったら婿ネ行ぐな (辛い婿になるより独立せよの意)

ぬぐだまた寝床コぁ十人役の田よりも離れづらい

ネの部

寝屁ァ手前損(てめぇそん) (悪事を秘かに覆わんとして独り悩み苦しむを言う)

猫の手サモヅ(鳥黐) (手先の不器用なこと)

猫、婿、ケラツツキ、嬰児籠(えんづこ)クド(竈)カヤギ貝 (好遇されない或は仲間外れのものの総称)

猫のケツさ、さい槌 (釣り合わぬこと)

眠る鶏ァ米。

ねまり弁慶ァ立弁慶使う。

鼠と左官はひかねば食われぬ

猫の目玉と秋の空。

猫、婿、ケラツツキは親の死に目にあわぬ。

寝る程の程ァ山にもねえ。

ノの部

のだばったドくたばった (似てるが大した違だ)

糊かった天紳様(気取屋)

野原サ屁。

飲みてァばさいづち。


ハの部

鰰の焼けたのと坊様の眠ったのは一寸見ても分らぬ

鼻穴サ指 (きッぱり当てはまる意、頗る都合がいい意)

馬鹿さシズガレバ二重(にがえ)馬鹿 (馬鹿には構うな)

馬鹿猫ァ灰カマシタ様だ (不整頓な意)

腹減たら田作れ (貧を慨くより先ず働けの意)

刷毛序でに行燈 (労力を善用するの意)

馬鹿サ付ける薬ァ無い (小人は済度し難いの意)

馬鹿ァ山サ上った (目的なくして労してる意)

はければ(走れば)転ぶ (自重が大切)

馬鹿さ鉄砲 (恐しいことを知らない事、又は矢鱈に権を振り廻す奴)

箒サだんぶり(蜻蛉) (相手が強くてトテも叶わない事)

裸馬ァ鞍返さねェ (無産者は気楽なもの)

春はおひが―ん、秋はおひがッん。

話ァもとから 薪割ァうらから。

化物に面 (途法もないことに遇う)

ばらコサばらコおえる。

針と大名は遠くから見える。

腹は借れもの。

八しゃくァくちすぎせぬ (何でも出来るものは生活は下手だ)

はやりの袢纏着ないものァ馬鹿だ

馬鹿聟ァ嫁待づインた。

話におだちァない

話にうらない、あくどに爪ない。

ヒの部

他人(ひと)の背中で荊棘(ばら) (他人の努力、功績を我物顔に横取する事)

人を見だら泥線ど思え、馬見だら踏むど思え (油断大敵)

他人(ひと)の物ァ吾もの、吾物ァ吾物 (強欲を云う)

日照りにケガヂ無し (干魃に不作なし)

人の疝気病むな (おせっかいするな)

人は洗濯柄、馬はなぜ柄

貧乏だ鳥ァ盆に腹病む (腹空いても一時に大食するな欲張るな)

火ど馬鹿チョセばおごる (怒り易きは小人である)

火焚けねばカマド(家産)持てぬ (火を焚く丹念さがなければ家を治めて行けぬ)

貧乏人の煮る粥ァ湯になる (資本主義経済組織の欠陥を穿てるもの)

一人のめし食わねば人にならぬ (可愛い子を他人に奉公させよ)

百両の馬にも疵ある、しらげの米にもアラある (完全無欠と云うことはあり得ない)

ひぜん三年かき三年もそもそ三年あと三年。

人の飯茶碗サ手を入れる (他人の生業を奪う)

フの部

古くていいのは南京と取上げ(産婆) (古いものにいい物は稀だ)

フンチャギさ(藤崎へ)アンベ (早呑込みで要領を得ない使いのこと)

淵サ糠 (際限のない事)

福の神さケツ (貧苦から浮ばれぬ)

豚の木登り (不可能な事)

褌の虱と川雅魚ァ何時見てもいる。

不調法も調法のうち (不調法したとてソンナに畏まるに及ばぬ)

古物半値

ヘの部

屁ふりの早ことば

ヘラ持ちァ果報持ち

ベコの糞胡麻あえ (訳の分らぬこと)

ホの部

坊主さ鉢巻 (出来難いこと)

ほこつ(又は砂糖甕)で年とる (栄耀栄華尽くして一年を暮し難きを言う)

ほが(他家)の握飯ァ大きい (他人の物はよく見えるものだから他人を羨むな)

頬ぺァ叺 (口達者は喰うに困らぬの意)

ホロても落ちない牛蒡の実 (腐れ縁の意)

ボロ糞ァ梅の花コ、青洟ビードロ (惚れればアバタでも梅の花に見え、青洟もビードロに見える)

盆と正月ァ一度に来た (運が一度に来た意)

ぽた稲ァ頭下げない。

盆踊りと材木屋は大きくなればこわれる。


マの部

松本ジュンジュンヅグリ (維新の頃弘前西大工町に松本某と云う者があって穴銭三厘つけてジュンジュンヅグリ(独楽)を製造し二厘に売った.売行が飛ぶ如くである。此男は勘定に迂なる者で人に語って曰く「商売はやり様に依って場所なんか気にする必要はない」と誇ったと云うから出た事で採算外れを嘲笑したのである)

萬太箆商い (採算を知らぬ愚かな者の意)

マゲから脚 (マゲは納屋の屋根裏―間の抜けた始末)

まねコキァ猿

マスゲで天井どヅく (及ばぬことを云う)

ミの部

簑の傍さ笠 (似合の夫婦)

見るより馴れろ

ムの部

婿、猫、けらつつき (十二支に入らぬ猫、釈迦の臨終に間に合わなかった啄木鳥等の如く婿は除け者にされる)

娘三人もてばカマドかえす

メの部

目糞ァ鼻糞嗤う (自己の欠点を知らずに他人の欠点を嗤うの意)

茗荷の子ァ出ればとられる

モの部

餅呉(け)れば粉ハダル (好意に狎れるを云う)

貰い物に損ナ無い (文字の通り)

物喰い魂入ろ (食事する時の真剣な魂でかかれ)

燃えても燃えなくても根この火


ヤの部

山サ行げば蛇ァおかね、川サ入れば蛭ァおかね、野原サ行げばガイダガ(毛虫)おかね、家ネ居れば爺サおかね、怠け者は何処へ行っても駄目だの意

奴の尻ァ寒晒し (下級生活者の生活苦悩を表したもの)

焼げたスネカラ(脛)さ毛ァ生えない (一度失敗しことは取返しがつかない―又は無理な事は結局出来ない)

やすい人に青物見せな。

焼ばた火に転げぬ(焼ばたは南部の方言で火傷者……一度火傷したものは要心するから火には転げない)

八足ァ一所に返る (三戸郡)

焼跡の杭拾い(死んだ子の年を数えるの類)

山で石貰う (始末に困る意)

柳の下の黒鰌

ヤトイは人でない、卵酒ァ酒でない。

ヨの部

嫁より舅(嫁を貰う時は嫁の顔や素行よりも舅の人格を見て貰え)

嫁と鍋ァ古くなる程ずるくなる。

嫁と猫ァ近所から貰うな (足繁くかえる)

夜っぱりの朝寝坊 (怠ケ者の生活を嘲うたもの)

欲せばオダガの爪抜げる (欲張ると損するの意)

ヨデ(末子)子ァ昔ね果ない (小児に昔噺を語れば止めることを知らない)

世の中ァ廻りもち。

ヨゲシャベリの尻トバラズ。

楊枝で重箱のすみ。

リの部

両方いいば頬被り (双方都合よい事は稀なもの)

理屈と膏薬ァつけ次第

ワの部

若竹ァ笛にならぬ (若輩は若輩だけ分より役にたたぬ)

ワラシぁ風の子

ワラシのボコリコぁ泣きボコリ、大人のボコリコぁ死にボコリ (遊んだ挙句子供は喧嘩などして泣く、大人は遂に生命を賭す)

わ、わるいと言うのは桶屋ばかり。


書誌情報

東奥日用語辞典及青森県方言集 : 附・日常便覧』の書誌情報

  • タイトル:東奥日用語辞典及青森県方言集 : 附・日常便覧
  • 出版者:東奥日報社
  • 出版年月日:昭和72

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