軍事用語のサイト

サイトマップへのリンク
軍事用語サイトのトップページへ戻る 自己紹介へのリンク サービス内容へのリンク お問い合せへのリンク

電子復刻

日本擬人名辞書

ヨヘイ画集

小泉八雲-幽霊

小泉八雲-童謡集

うしのよだれ

一語千笑

滑稽笑話

滑稽百笑話

明治・大正の川柳

つむじまがり

野草の食べ方

近世少年日用文範

マコチン虹製造

青森縣俚諺集

安全いろはかるた

新撰いろはかるた

語原学式仮名遣新書

歌集しがらみ

林泉集(中村憲吉)

梅の栽培と加工

うしのよだれ
うしのよだれ

うしのよだれ

うしのよだれ

うしのよだれ

うしのよだれ』(坪井正五郎著)を抜粋してテキストにしました。

明治期の滑稽文なので大部分は現代の風俗にマッチしていませんが、そのなかでも何とか通用しそうなものを選んでみました。

当初は原文に忠実な表記を目指しましたが、能わず、大部分は現代語の表記に変更しています。

(2011年1月 金森国臣)


西郷の犬

ある夫人が上野公園で例の南州犬をひいて立つ銅像を指差し

 「あれ御覧あれが西郷さんの像よ」と言うと

子供は不審な顔をして

 「象なもんか犬だァ」

と叫んだそうな

カラスは口偏

覚え書きを取り出してゴチャゴチャと書いた所を見ながら

 「エー、芝のトリモリと申すのはどの辺でございますか」
 「トリモリとは聞いた事が無いがそれはカラスモリの間違いではございせんか」
 「左様左様、カラスと言う字には口偏が付いていましたっけ」

カラスは口偏

ホトトギ団子

工学士の某氏がまだ大学予備門の生徒で寄宿舎にいた時分の事だが、僕と左の通りの問答をした

 「オイ 向島へ散歩に行ってホトトギ団子でも食っ来やうではないか」
 「なにホトトギ団子 そんなものが有るものか」
 「あんな事を言っている。向島のホトトギと言えば有名なもんだ。あれを知らないのか」
 「そりゃぁコトトヒ団子の間違いだろう」
 「なァにホトトギさ。その証拠には」
 「どんな証拠が有る」
 「暖簾にも道具にも鳥の形が付いているではないか」
 「あれは いざ言問はん都鳥の都鳥サ」
 「そうか 僕はホトトギスだとぱかり思っていた」

どうぞお先きに

ある所で多人数一緒に写真を撮ろうとした事があった。

その時来なければ成らぬ筈の某氏の来ようが遅いので使いをやって

 「モウ皆揃いました。写真師の用意も出来ていますからお早くお出で下さい」

と言い送ったところ

その使い復命にいわく

 「お云い付けの通りに申しましたら、先き様では只今差し掛かった用事が出来まして手を明け兼ねます。どなた様もお構い無くお先きにお写し下さるようにと云うお言葉でございました」

クレという時にやれ

甲「彼の人への報酬は少しだけれど盆に贈ろうか。それとも溜めて置いて暮に一緒に贈ろうか」

乙「ボンにやるのはボンヤリだ。クレという時にやるのが当然だろう」

職業は華族

ある時大磯の祷龍舘へ泊って宿帳をひっくり返して見たら、なかにこういうのがあった。

 (姓名)何某 (身分)平民 (職業)華族

結構な職業もあったものだ。

煙草飲みと蠅扣き

ある人の家へ煙草を飲む客が来て下女に向い

 「どうぞ灰をはたく物を下さい」

と言ったら、下女が蠅扣きを持って来たそうな。

煙草飲みと蠅扣き

作文の様な事

戸籍調べの警官が来た時

たまたま玄関にいた子供に向って漢語交ざりで何かいった所

子供には一向訳が解らず

早速奥に走り込んで曰く

 「巡査が来て作文の様な事をいって居ます」

大ブ小ブ

ある教室の小使が試験管の大きいのを大ブ、小さいのを小ブと名付けた。

どうしてそんな名を考へ付いたかといえば

並の大きさのを中ブと呼ぶからだとの事。

つまらぬ事です

新聞売り子

 「号外!号外!」

と威勢好く走り歩く。通り掛かりの人が

 「オイオイそれは何の事件の号外だ」

と尋ねると売り子はうるさいと言う風で

 「ナーニつまらない事です」

と飛んで行ってまた

 「号外!号外!」

幽霊の煮付け

ある日本人が英文練習のため日本の新聞雑報を英訳して英人に見せたところが其中に

 「近頃日本から多量のゴーストをアメリカに輸出する」

と言う事があったので英人は眉をひそめ

 「日本にはそんなにゴーストが有るのか」

と問うた。

 「左様日本に於ては盛んにゴーストを作る」

と答へたから英人いよいよ不審に堪えず

 「シテ其ゴーストを何にする」

と聞いた。英文練習生得意で答へて曰く

 「我々はゴーストを煮て食う」

幽霊を煮て食うと言うのだから大変。英人驚いてかたわらなるヘボン字書を採り

 「どうも変だ。一体君の訳した字は何れか」

と尋ねた。英文練習生ここかしこ探していたがにわかに笑い出して叫んで曰く。

 「仕舞った仕舞った!Yuri(百合)を引く積りでYurei(幽霊)を引いたアハヽヽヽアハヽヽヽ」

幽霊の煮付け

字を崩す暇が無い

常々行書草書を得意がっていた人が急ぎの手紙に四角張った字を書いてよこした。ある人評して曰く字を崩している暇が無かったのだろう。

ころもが落ちる

京郡四條河原で涼みながら天ぷらを食っていた人、揚げ立てを皿に移そうとして、ころもを落し掛け

 「オットころもが落ちそうだ」

と声を立てたら、近所の涼み台にうたた寝をしていた坊さん、あわてて飛び起き身の周囲を撫で廻して

 「イヤどうも成っては居らん」

目薬の後口

薬を飲んだ後で後口と称して菓子を食べるのを常としていた子供

 「眼が悪いからお薬を差さなければいけないと言われ
 「そんなら後口頂戴」

盲腸の用

ある病院で一人の看護婦が同僚に

 「盲腸というものは一体何のために成るんでしょうね」

と尋ねたら

 「あすこで盲腸炎をするんでしょう」

と答えたそうな。

お蔭さまで丈夫

戸籍調べの巡査が帳面を見ながら

 「どうです。こなたでは変わりもありませんか」

と言うと、婆さんが出て来て

 「ヘイヘイ有り難うございます。お蔭様で皆丈夫でございます」


抑も牛の涎と云ふは、同窓会誌の余白に載せた、句切りの付かぬダラダラ文を、物に譬へて呼んだに過ぎぬ、僕の随筆の名で有たが、どうしたひやうりの瓢箪から、飛び出す馬は馬の連れ、牛は牛連れノロノロと、歩みを運ぶ其中に、食ふ路草の笑ひ草、自づと傾く自然滑稽、うしのよだれの名を聞けば、作意を交ぜぬ珍談と、人も思へば我も亦、其気で筆を酉の歳、捜つた種も少くないが、申もの疏く古雑誌は、未の餌食と成るやも知れぬ、年来集めたものの中、彼れや此れやと撰り出して、一小冊子に取り纏め、何時来られても悪くない、福をば招くまじなひの笑ひの、種に致さんとモーす。

明治四十二年の夏

笑語老


『うしのよだれ』の書誌情報

  • タイトル:うしのよだれ
  • タイトルよみ:ウシ ノ ヨダレ シゼン コッケイ
  • 責任表示:坪井正五郎著
  • 出版事項:東京:三教書院,明42.11
  • 形態:129p;18cm
  • 装丁:和装
  • 著者標目:坪井,正五郎(1863−1913)
  • 著者標目よみ:ツボイ,ショウゴロウ(1863−1913)
  • 全国書誌番号:41017303
  • 西暦年:1909

うしのよだれ (知の自由人叢書)
うしのよだれ (知の自由人叢書)


プライバシーポリシー

Copyright(C) 2002-2019 TermWorks All Rights Reserved.