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明治・大正の川柳と狂句

明治・大正の川柳と狂句

世の中は次第に忙しく、小うるさく、世知辛くなって、行く末が案じられるのだが、ここでため息ばかりついていても智恵のない話だ。

人に負けず働いて、人に負けず楽しむ工夫をしなければ、妙案など浮かぶはずもない。

人生は理屈で固めたものであると考えるのは大いなる野暮であって、そういう考えでは百年の長計など立つはずもない。世界は四角なものにあらず。

千里の馬も駆け通しではついには腰が抜けるのと同じで、人生には小半時の楽しみがなければならない。

ここに明治期・大正期の狂句や川柳を集めて諸兄に供するもこの手段であって、議論が煮詰まり二進も三進も行かぬときには大いに利用されたい。

  • 狂句集(江草斧太郎編) 出版年:明治38年(1905年)
  • 家庭川柳(角恋坊編) 出版年:明治39年(1906年)
  • 川柳解(雨谷幹一編) 出版年:明治44年(1911年)
  • 川柳選(芳賀矢一校) 大正元年(1912年)

(2009年11月 金森国臣)


演説家竜頭蛇尾の声が涸れ

機関車は出がけに一ッ嚔(くさめ)する

日記帳末になる程ザッと書き

新聞は八分の嘘で客をひき

白露は蝶が末期の一しづく

まだあるをツイと取られるレストラン

混浴の禁止箱根の客が減り

牛若は尻(けつ)を狙はれ山を出る

内々の儲(もうけ)内々消へてゆき

雨舎り立小便は出来ごころ

神仏は人の功徳で家が出来

握飯うけて地蔵は辻に立

かすがひが泣いて喧嘩も下火なり

葬式(とむらい)の頭の方は派手に出来

まづ蠅が喰って夫(それ)から客が喰ひ

かきわけて焼香いそぐ会葬者

角々(かどかど)へ犬は片足見せて行き


髪を結う時に女は目がすわり

あいさつに女はむだな笑ひあり

婿(むこ)のくせいもとがさきへ見つけ出し

まよひ子の親はしやがれた礼を云ひ

乳母の名は請状(うけじょう)の時よむばかり

添乳して何か亭主にかぶり振り

禅僧は座禅が済むと蚤を取る

野雪隠地蔵しばらく刀番

女房をこわがる奴は金が出来

女房へ乳だ乳だと押ッつける

女湯へおきたおきたと抱いて来る

武士(さむらひ)の喧嘩に後家が二人出来

香の物へしおって食ふ独り者

此家(このうち)で生れた内儀まけて居ず

茶の会にかげのうすいが亭主也

美しい顔で楊貴妃ぶたを喰ひ


道問へば一度に動く田植笠

言ひなづけ互ひ違ひに風を引き

駕籠賃をやつて女房ツンとする

子を抱けば男にものが言い易し

女房と相談をして義理をかき

何かしら笑つて帰る新所帯

子を持つた大工一足遅く来る

役人の骨つぽいのは猪牙に乗せ

落武者は榎を植ゑぬ道を逃げ

ふところで褌しめる雨やどり

お内儀の手をおんのける鰯売

大晦日首でも取つて来る気なり

亭主から物を言出す朝がへり

勘当をゆるして口が二人ふえ

形見分はじめて嫁の欲が知れ

寝て解けば帯程長いものはなし

初雪のたつた二尺は越後なり

あまだるい声で殿様おつかける

和尚さま膝へ来る子に数珠を出し

白状を娘はうばにして貰ひ

猪牙船も小馬鹿にならぬ荷をこなし

かげぼしの一つ隠れる膝枕

口説かれて娘は猫に物を言ひ

仲人は小姑一人殺すなり

友達は将棋の事で二日来ず

嘘をつく事が嫌ひで素顔なり

よい後家が出来ると話す医者仲間

うたたねの顔へ一冊屋根を葺き

一人者客に暫く留守をさせ

一軒で呼べば簾が皆動き

貸本屋これはおよしと下へ入れ

死にたくば死になと娘惨(むご)く出る

隣とは庇の事で不破の関


かみなりをまねて腹掛やつとさせ

隣から戸をたたかれる新所帯(あらしょたい)

喰つぶすやつに限つて歯をみがき

子が出来て川の字形(じなり)に寝る夫婦

寝て居ても団扇のうごく親心

長噺(ながばなし)とんぼのとまる鑓(やり)の先

これ小判たつた一(ひ)と晩居てくれろ

あたりからやかましくいふ年に成り

屁をひつてをかしくも無い一人者

此の家できりやうばなしは法度也

風呂しきを解くとかけ出す真桑瓜(まくはうり)

黒い毛をぬいたがよめの越度(おちど)なり

店ちんでいひこめられる論語よみ

まああれも入れろとゆびを一つ折り

内談と見えて火鉢へ貌(かほ)をくべ

若死と聞いてくやみに念を入れ

しかられて枕へ戻るやみあがり

朝がへり行く時程のちゑは出ず

ねかす子をあやして亭主しかられる

一人もの店ちんほどは内に居ず

わらはれる度に田舎の垢がぬけ

田舎道こぼれたやうに家があり

間男の傘は四五間にげてさし

しかられた通りに母はしかる也

見物にむだ口の無いせんがく寺

花嫁はめしをかぞへるやうに喰ひ

女房のちゑは花見に子を付ける

わつわつと泣いてかたみを持つて行き

城をとは家老のまくらことばなり

はやり医者やうじをもつてかごにのり

三年の恋がさめると離縁なり

旅慣れたふりでせつちん先へ聞き

町内のにくまれものがあつ湯ずき

変といふ逃げ道医者は明けて置く

ひざの猫ひざへ渡していとまごひ

よし原のつぶれた夢を母は見る

役がらで気ばかりつよい奥家老

ほととぎす口舌(くぜつ)の腰を折つて行き

立聞(たちぎき)の雪に足跡置いて行き

足おとで二つにわれるかげぼうし

国々の理屈を泊める馬喰町

雨やどり出ようとしてはよしにする

軒下へ花を咲かせる俄雨(にはかあめ)

つらの皮あつく唇うすくなり

風呂敷を子に着せて行く俄雨(にはかあめ)

かりる時息子は舌がよくまはり

爪の火を息子夜な夜な消しに行き

新所帯(あらじよたい)こはめしにでき粥にでき

雪に寝た竹を旭がゆりおこし

鶯の片言梅は笑ひ出し

大石のおもしで出来るかうのもの

褌がとけてけんくわの腰がをれ

かんにんの袋の紐を母むすび

返り咲き仲人つぼみのやうに言ひ

豆腐屋は時計のやうに廻る也

大名に給仕もさせる四畳半

本堂で吉原と衆議一決し

駒組みをせぬに王手は本能寺

きげんよく借す鋸は息がきれ


明治の初期にも狂句や川柳はあるのだが面白いものが少ない。政治的な自由度や文化的な爛熟度が影響するのかと思う。

現在ではとても掲載できない差別的なものがあり、それはとうぜん省いている。面白くもないし。

狂歌もさがしたが、あったとしてもいくらか難解で笑うには時間がかかるので、現代的には合わないような気がした。

著作権に対する意識はほぼゼロのようであって、あちこちに同じ作品が出現している。作者の名前も記載されていない。


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