東京フィルハーモニー交響楽団 長岡特別演奏会
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2024年3月24日(日) 14:00 長岡市立劇場 大ホール
指揮:アンドレア・バッティストーニ
ソプラノ:木下美穂子、メゾ・ソプラノ:中島郁子
合唱:長岡フェニックス合唱団(合唱指揮:駒井ゆり子)
 
ビゼー:「カルメン」組曲より
   前奏曲/アラゴネーズ/間奏曲/アルカラの龍騎兵/闘牛士
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲

(休憩20分)

ロッシーニ:歌劇『ウィリアム・テル』序曲より “スイス軍の行進”
ヴェルディ:歌劇『イル・トロヴァトーレ』より 鍛冶屋の合唱
ヴェルディ:「レクイエム」より “アニュス・デイ”、“リベラ・メ”
プッチーニ:歌劇『マノン・レスコー』間奏曲
マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より “復活祭の合唱”
ヴェルディ:歌劇『アイーダ』より “凱旋行進曲”

(アンコール)
ヴェルディ:歌劇『ナブッコ』より “行け黄金の翼に乗って”
 

 今日は、久しぶりに長岡まで遠征して、長岡市立劇場開館50周年記念の東京フィルハーモニー交響楽団長岡特別演奏会に行ってきました。
 長岡市立劇場は、1978年10月に開館し、昨年10月に開館50周年を迎えました。これを記念して、昨年1月にプレイベントとして「藝大フィルハーモニア管弦楽団ニューイヤーコンサート2023」が開催され、その後、6月の「どうする太郎」など、様々な開館50周年記念イベントが開催されてきました。
 この一連の記念イベントのフィナーレを華やかに飾るのが今日の東京フィルハーモニー交響楽団長岡特別演奏会です。主席指揮者のバッティストーニの指揮により、長岡フェニックス合唱団と共演するというのが注目されます。

 東京フィルは、以前より毎年のように長岡市で演奏会を開催しており、私も2000年5月(指揮:現田茂夫)、2002年4月(指揮:船橋洋介)、2003年12月(指揮:チョン・ミョンフン)、2010年11月(指揮:船橋洋介)と、何度か聴く機会がありました。
 そして、2015年3月に長岡市と東京フィルは事業提携協定を締結し、その関係はより密接なものとなりました。これを記念して、2015年5月にチョン・ミョンフン指揮による特別演奏会が開催され、以後毎年長岡特別演奏会が開催されて現在に至ります。私は、2016年10月(指揮:バッティストーニ)、2017年7月(指揮:チョン・ミョンフン)、2019年9月(指揮:バッティストーニ)、2022年9月(指揮:バッティストーニ)の演奏会を聴かせていただいており、今回の演奏会は1年半ぶりになります。

 一方、今回共演する長岡フェニックス合唱団は、2006年に長岡市制100周年記念事業として開催された「メンデルスゾーン「讃歌」演奏会」に際して公募により結成された合唱団で、中越地震からの復興を祈念してフェニックス合唱団と命名されました。
 その後も何度か特別な演奏会に出演しており、私は2012年5月の「K.ジェンキンス「平和への道程」演奏会」(指揮:船橋洋介、東京シティ・フィル)を聴く機会がありました。
 今回は、前半がスペインにちなんだ曲で、後半がイタリアの曲ということはあるものの、種々雑多な、細切れの名曲プログラムですが、ここは堅苦しいことは言わず、長岡市民とともに、素直に開館50周年を祝いたいと思います。
 公募による市民合唱団が、一流のプロオケと、指揮者ともに、どのような演奏を聴かせてくれるのか、期待が高まりました。

 とういうことで、長岡遠征をすることになりましたが、長岡市でのコンサートは、2023年11月の、やはり開館50周年という位置付けだった「佐渡裕指揮シエナ・ウインド・オーケストラ」を聴きに行って以来になり、今年になってからは初めてです。

 昨日まで冷たい雨が降り、肌寒い日が続いていましたが、今日は朝のうちは鉛色の雲が広がっていたものの、昼前頃から雲は薄くなり、雲間から青空が見え、日も差すようになりました。気温も上がって、過ごしやすい春の陽気になりました。
 いつものように、高速は使わずに、分水〜与板経由で長岡入りしました。途中、某所で休憩して昼食を摂り、長生橋を渡って長岡市立劇場入りしました。ここは駐車場が無料でありがたいですね。

 時間調整して館内に入りますと、既に開場されており、私も列に並んで入場しました。入場とともに立派なプログラムのほか、50周年記念のチケットケースが配布されました。前にもらっていましたけれど。
 開演までかなり時間がありましたので、ロビーでこの原稿を書きながら開演を待ちました。ホールからは、オケの皆さんの音出しの音が賑やかに聴こえていて、次第に気分が高まりました。
 ロビーから外を眺めますと、いつの間にか雲はが少なくなって青空が広がり、気持ち良く感じられました。このまま春になってくれると良いのですが、まだ落ち着かないようです。

 開演時間が近付いたところで、客席に着きました。今回はA席の最前列です。ステージの後方には合唱団席が設けられていました。次第に席は埋まり、ほぼ満席となりました。
 興ざめのうるさいブザー音が鳴った後、開演時間となり、拍手の中に団員が入場しました。弦は通常の並びの12型で、弦5部は、私の目視で12-10-8-6-6 です。

 バッティストーニさんが登場して、ビゼーの「カルメン」組曲で開演しました。さすがに東京フィルであり、聴き飽きた感のある曲ではありますが、楽しませていただきました。「間奏曲」でのフルート・ソロも美しく、「闘牛士」で賑やかに熱く盛り上がりました。
 ただし、当初から予想していたことではありますが、ホールは横に長く響きが薄いですので、豊潤で濃厚なオケの厚みが感じられず、蒸留水で薄めたような印象でした。良く言えば、透明感があり、分解能の高いサウンドといえますけれど。これは、ホームグランドのりゅーとぴあのサウンドに慣れてしまったためだと思います。

 続いては、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」です。最初は、ゆったりとした演奏で、スペインの明るさというより、薄い霧がかかったような、しっとりとした美しさを感じました。これで終わるはずはなく、コンマスのソロが軽快にリズムを刻み、最後はバッティストーニさんがオケを煽りに煽って、猛スピードで突進し、胸が高鳴る興奮の中にフィナーレを迎えました。
 客席からは、ブラボーの声が上がり、抜群のパフォーマンスを讃えました。音響面は別にして、演奏としては文句のないものであり、オケと指揮者の技量を知らしめてくれました。

 休憩後の後半は、拍手の中に合唱団が入場し、ステージ後方の合唱団席に、左からソプラノ、テノール、バス、アルトと並びました。その後にオケが入場しました。
 バッティストーニさんが登場して、ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」から「スイス軍の行進」で後半が始まりました。スピード感と躍動感に溢れる演奏で、理屈ぬきに気分爽快に楽しめました。

 続いて、合唱団が起立して、ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」から「鍛冶屋の合唱」です。合唱団は声量豊かに、荒削りながらも力強く歌い、賑やかな鍛冶屋のハンマーの音とともに、聴き応えある歌声で盛り上がりました。

 指揮者が一旦退場し、真っ赤なドレスのソプラノ、黒とシルバーのドレスのメゾ・ソプラノとともに、再登場し、ヴェルディの「レクイエム」から「アニュス・デイ」と「レベラ・メ」が演奏されました。
 先ほどの「鍛冶屋の合唱」の賑やかな興奮が冷め遣らないうちに、いきなりの「レクイエム」で、面食らってしまったというのが正直な感想でした。
 「アニュス・デイ」は、ソプラノとメゾ・ソプラノの清廉な二重唱に始まり、合唱が加わり、しっとりと演奏が進みました。心穏やかな中に静かに曲が終わり、拍手が入りました。
 続く「リベラ・メ」は、ソプラノがしっとりと歌い、静寂を破壊するような大太鼓の大音響とともに「怒りの日」の音楽が劇的に歌われました。この迫力は、この曲の聴き所でもあります。合唱団はオケに負けることなく、激しく歌い、感動をもたらしました。
 静かに曲を閉じて、大きな拍手が贈られましたが、独唱者は、聴かせどころがたくさんあったソプラノに比して、メゾ・ソプラノの出番が少なかったのが残念でした。
 指揮者と独唱者がステージから下がり、カーテンコールになるかと思ったのですが、拍手が途絶えて、独唱者を呼び出すことはありませんでした。

 続いてはオケだけで、プッチーニの「マノン・レスコー」から「第3幕への間奏曲」です。チェロの美しいソロに始まり、ヴィオラのソロが加わり、その後の美しい弦楽アンサンブルに酔いしれました。甘く切ないメロディ。ときに官能的に揺れ動く感情の高ぶり。しっとりと美しい音楽に心打たれ、良い演奏を聴いた喜びでいっぱいになりました。

 続いて、ソプラノ、メゾ・ソプラノの独唱者とともに指揮者が登場し、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」から「復活祭の合唱」です。
 オルガンの独奏で始まり、合唱が加わり、トランペットにコントラバスとともに感動の場面が眼前に広がりました。独唱者と合唱とで、劇的な音楽が歌い上げられ、大きな感動をもたらしました。

 独唱者と指揮者が下がって、ステージ袖の左右に、アイーダ・トランペットが3人ずつスタンバイしました。指揮者が登場して、最後はヴェルディの「アイーダ」から「凱旋行進曲」です。
 合唱とともに、まずは左のアイーダ・トランペットに始まり、お馴染みのエジプト軍の勝利を讃える音楽がホールいっぱいに響き渡りました。
 聴かせどころの左右のアイーダ・トランペットの掛け合いのステレオ効果も聴き応えがあり、合唱団は渾身のパフォーマンスで感動の音楽を創り上げ、開館50周年を記念するに相応しい、大きな感動と興奮をホールにもたらしました。

 大きな拍手に応えてのカーテンコールでは、独唱者のほか、合唱指揮者もステージに出てきて、合唱団の頑張りを讃えました。
 そして、アンコールとして、定番のヴェルディの「ナブッコ」から「行け、黄金の翼に乗って」が、美しく歌い上げられて、感動の演奏会は終演となりました。

 おもちゃ箱をひっくり返したような多彩な曲目で、取り留めなく感じたのですが、期待を裏切らない合唱団の頑張りがあって、良い演奏会になりました。
 後半の演目は、イタリア人のバッティストーニさんにとっては得意な音楽と思われ、市民合唱団を見事に導いてくれて、感動をもたらしてくれました。
 ホールの音響は別にして、東京フィルの素晴らしさも感じ取られました。新潟市には全く来てくれませんが、いつかりゅーとぴあで聴いてみたいですね。

 大きな感動と喜びとともにホールを出ますと、青空が広がり、春の空気で満たされていました。西に傾いた日差しを受けながら、新潟市へと車を進めました。
 農道経由で与板に直進、信濃川沿いを進んで国道116号線に出て、長岡市立劇場から自宅まで55km。安全運転で1時間20分余りで帰宅できました。
 

(客席:27-14、A席:¥4000)