東京フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会
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2003年12月27日 長岡市立劇場 大ホール
 
指揮:チョン・ミョンフン
ソプラノ:アンナ・トモア=シントウ、アルト:寺谷千枝子
テノール:福井 敬、バリトン:ディミトリ・ティリアコス
合唱:東京オペラシンガーズ、公募による地元合唱団(コーラスマスター:船橋洋介)
 

 
モーツァルト:モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付」

 
 

 
 

 長岡市立劇場開館30周年記念事業による特別公演です。チョン・ミョンフン指揮ということで、大いに楽しみにしていました。
 東フィルとチョンの組み合わせを地方で聴けるなんて幸運です。また、アンナ・トモア=シントウも楽しみ。昔、カラヤンの「第九」というとよく彼女が歌っていましたもんねえ。ということで、期待を胸に雪模様の中会場に赴きました。

 チケットは完売し、満員の盛況。合唱団をステージに載せるため、ステージを前方に拡張しています。以前、ヴェルディのレクイエムをやったときもこうしていたっけ。

 合唱団、次いで楽員が入場。チューニングを終えチョン登場。まずは「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。柔らかな弦楽に染み入るような合唱。曲が短すぎたのは残念でしたが、極上の前菜でした。振り返って、第九よりも楽しめたように思います。そして、残りの楽員と独唱陣が入場してすぐに「第九」です。

 第1楽章の出だしから「アレッ?」と感じました。音が汚いなあ・・。がさついた音に感じます。座席はホールのほぼ中央。そんなに悪い席ではないはず。管の演奏も危なげ。どうなることやらと最初は不安がよぎりました。演奏が進むにつれ悪い音に耳も慣れ、演奏も多少調子が乗ってきた様子でした。

 チョンの情熱的な指揮ぶりで、力のこもった演奏でした。合唱もプロも混じっていたとはいえ力一杯の力演。逆に力が入りすぎていたようにも思われました。独唱陣は、バリトンは声質、歌い方が軽くイマイチ。アンナ・トモア=シントウは往年の華はなく、声の張りがなくお疲れの様子。福井さんはいつ聴いてもすばらしいです。どんな演奏でもそれなりの感動を与えてくれるのがこの曲のすばらしいところではあるのですが、さすがにチョン、会場は盛り上がり、感動の中コンサートは終了しました。

 と言いたいところですが、やっぱり音が良くなかったなあ。厚みのない薄いサウンド。乾いていてフリーズドライしたようなサウンドで全然響きません。
 これはオケのせいなのか、単にデッドなホールのせいなのか定かでないです。合唱団をステージ後方に配置するため、オケがステージ前方に横長に配置されたのも一因であったかもしれないです。あるいは、響きのいい「りゅーとぴあ」に耳が慣れてしまったからかもしれません。
 と不満はあったおですが、チョンの情熱的な演奏のすばらしさの一端は垣間見えました。精神性がどうのこうのというより熱のこもった分かりやすい演奏が私は好きです。チョンの情熱に応えるだけのオケの技量、ホールの響きがあったらもっと感動できたに違いありません。
 明日はオーチャードホールでの公演。これはインターネットで生中継されるそうな。是非聴きたいところですが、ブロードバンドとは無縁な私は無理かな。

 これで今年のコンサートは聴き納め。来年は何を聴きにいこうかな。
 

(客席:26−24、A席7000円)