恒例になった東京フィルの長岡特別演奏会です。長岡市の音楽アドヴァイザーを務める船橋さんが指揮を執ります。この公演の前日には、長岡市内の小学校5年生全員を招待した「東京フィル夢づくりコンサート」も開かれ、長岡出身のソプラノの鈴木愛美さんと共演しています。
新潟市では東京交響楽団による鑑賞教室(わくわくキッズコンサート)が9日、10日と開催されますが、長岡市では東京フィルの鑑賞教室が開かれるというのも面白いですね。同時期に新潟県内に在京オケが2つ来ているというのもすごいと思います。
今日のプログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番と交響曲第5番です。一昨日は東響新潟定期でべートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と交響曲第4番を聴いたばかりであり、何という偶然と面白く感じました。指揮の船橋さんは最近まで新潟交響楽団の指揮を務めておられてお馴染みであり、懐かしく感じました。
今日は柏崎出張の日であり、帰り道に長岡に寄って聴くことができました。発達した低気圧の影響で、大荒れの一日でしたが、夕方は雨が降らずに助かりました。ホールに着くと船橋さんによるプレトークが行われており、ピアノを弾きながら分かりやすい曲目解説をしてくれました。
満席のホールに興ざめのけたたましいブザー音が響き渡り、いよいよ開演です。拍手の中楽員が入場し、最後にコンマスが入場してチューニング。その後、船橋さんと上原さんが登場しました。
上原さんは3人目の子供の出産間近であり、何と来月が予定日とのこと。大きなおなかを鮮やかな黄色のマタニティドレスで隠してノシノシと登場しました。
前半は「皇帝」です。良く言えば力強い演奏と言えましょうがが、実際は荒っぽく、乱れまくった演奏でした。音とびやミスタッチなど何のその。ママサンパワー全開です。ピアノの音も濁っていて、きれいではありません。調律が悪かったのかもしれません。デッドなホールのせいもあってか、オケの音も響かず、音の厚みに欠けた印象でした。
大好きな第2楽章も荒っぽく、鍵盤を叩いているだけで、メロディが生まれません。もっと歌ってくれたら良いのにねえ・・・、とため息が出てしまいました。
でも、日本のお母さんの力強さを実感しました。早産しなければ良いのにと心配するほど熱が入っていましたが、無事演奏が終わってほっとしました。
アンコールに応えてショパンの「子犬のワルツ」が演奏されましたが、子犬というより酔っ払いの千鳥足という演奏でイマイチでした。
休憩後は「運命」です。これはなかなかの演奏でした。身振り手振りの大きい指揮で、見事にオケをコントロールしていました。音楽鑑賞教室で何度も演奏しているためか、手馴れたようでした。第3楽章(短調)から第4楽章(長調)への切れ代わりの素晴らしさを小学生にも聴かせているとプレトークで話されていましたが、このあたりの演奏はお見事と思いました。全体として正統的な堂々とした演奏で、好感が持てる演奏でした。
オケはやっぱりホールのせいもあってか薄味に感じました。団員の多い東フィルにあって、今日のメンバーはベストメンバーではない様に思いますが、一昨日の東響と比べると、一歩下がるように感じました。
プログラムにはコンマスとして依田真宣さんの名前がクレジットされていましたが、東フィルのホームページを見ても名前がありません。調べてみたら今年25歳の期待の新進奏者のようです。ゲスト・コンマスとして迎えたのでしょうか。
アンコールはサービス良く3曲演奏されました。最初は5番がらみということか、ブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏されました。これはオケもよく鳴って、なかなか良い演奏でした。でも、曲目を言うとき船橋さんは第3番と言っていたような・・・。
これで終わりかと思いましたが、弦楽だけでバッハのアリアが演奏されました。しっとりと心に響く良い演奏だったと思います。
さらに、その後小太鼓の音がホールに響いてラデツキー行進曲が演奏されました。最後を盛り上げて終わるには良い選曲だったと思います。
演奏内容としては難点はありましたが、楽しめたコンサートでした。上原さんに期待していたのですが、やはり出産間近の状態では名演を期待する方が無理でしょうね。身重の体をおして長岡に来てくれたことに感謝すべきなのでしょう。元気なお子様が生まれますようお祈りしたいと思います。
船橋さんの指揮は久しぶりになりますが、ますますのご活躍のようです。良く整理された分かりやすい演奏で、爽やかさを感じさせてくれます。潟響との契約が切れてからは新潟市には来られなくなりましたが、長岡や見附では活発な活動をされており、新潟の音楽向上に貢献されています。今後益々の活躍を祈念したいと思います。
(客席:20-37、S席:4000円) |