東京交響楽団 定期第718回 Live from Suntory Hall!
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2024年3月30日(土) 18:00 サントリーホール
指揮:原田慶太楼
ピアノ:オルガ・カーン
コンサートマスター:小林壱成
 
藤倉大:Wavering World

シベリウス:交響曲 第7番 ハ長調 op.105

(休憩20分)

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 op.18

(アンコール)
プロコフィエフ:4つの練習曲より 第4番 ハ短調
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 フィナーレ部分
 
 

 東京交響楽団の新潟定期演奏会は、昨年12月3日の第135回新潟定期を最後に、6月16日まで開催されませんので、寂しい日々が続いています。
 こんなときに、昨年12月以来、久しぶりに東京交響楽団のライブ配信がありましたので、聴かせていただくことにしました。今回はサントリーホールでの第718回定期演奏会です。
 前半は、藤倉大がシベリウスの交響曲第7番と併せて演奏する作品として委嘱されたという「Wavering World」で、2023年2月にシアトル響で世界初演されたばかりの曲です。
 後半は、原田さんが共演を強く望んだというアメリカのピアニストのオルガ・カーンとのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番です。

 ニコ響のサイトに接続しますと、無人のステージが映し出されていました。開演のアナウンスが入り、ホールいるかのような緊張感を感じました。
 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスの小林さんが登場して大きな拍手が贈られました。弦はヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で14型。コントラバスとチェロが左です。

 原田さんが登場して、1曲目は藤倉大の「Wavering World」です。原田さんは指揮棒なしです。怪しげといいますか、不気味な音楽で、いかにもというような現代曲です。
 神が住む天上の世界と死者が住む地下世界、その間で人間が住む中層世界。そこには葦が生い茂り、揺れ動いている。そんな不確実な浮遊感を表現しているようです。
 凡人の私には高尚な世界は理解できませんが、音楽を楽しむというより揺れ動く音響を楽しみました。ティンパニが大活躍で、ばちさばきがお見事。
 現代曲の中でも、まだ聴きやすい方かも知れず、音を楽しみ、飽きることなく聴き通せました。こういう機会でもない限り聴かない曲ですので、貴重なプログラムと言えましょうか。

 2曲目はシベリウスの交響曲第7番です。単一楽章の、シベリウス最後の交響曲です。冒頭から美しいメロディが心にしみてきます。藤倉さんの曲を聴いた後で、美しさが一段と引き立つように感じました。楽章を追うように曲調を変えながら曲が進みます。
 日頃聴く機会がない曲ですが、当然ながら、いかにもシベリウスしてるなあという感慨にふけりました。なかなかいい曲ですね。CDを持っていながら聴いていなかった曲であり、今度じっくりと聴きたいと思いました。

 休憩後の後半は、ピアノが設置され、オケは12型となりました。チューニングが終わって、しばらく間をおいてから赤いドレスの大柄のカーンさんと原田さんが登場。後半はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番です。
 ゆったりとしたピアノの鐘の音で始まりました。ちょっと癖のあるピアノ。ねちねちした、ロマンチックな気分は削ぎ落し、醒めた感のあるドライな印象を感じました。
 泣かせどころの第2楽章も、感傷さもほどほど。第3楽章も緩急を大きく動かして、聴く方も付いていくのが大変。パワーあふれるピアノに圧倒されました。原田さん率いる東響も堂々と渡り合い、感動と興奮を誘いました。
 
 大きな拍手に応ええ、アンコールとして、プロコフィエフの練習曲第4番が演奏され、原田さんも指揮台に座って聴いていましたが、大柄のカーンさんが繰り出す機関銃に打ち殺されました。
 拍手は鳴りやまず、原田さんとカーンさんが何やら会話して、最後にラフマニノフのフィナーレ部分をもう一度演奏して感動を呼び戻してくれました。これは反則ですよ原田さん。興奮しないわけにはいきません。

 前半に交響曲、後半にピアノ協奏曲という変則的なプログラムでしたが、曲目も演奏も良かったです。原田さんの分かりやすい曲作り、それに見事に応える東響。音楽の素晴らしさをダイレクトに伝えてくれました。新潟定期で聴きたかったなあという思いを胸に、ニコ響のサイトを離れました。

 さすがに各オケから引く手あまたの原田さんですね。アメリカにもポストを持っておられますし、素晴らしい指揮者だと思います。
 2021年4月に東響の正指揮者に就任した原田さんですが、任期が2026年3月まで延長されました。ありがたいことであり、新潟での演奏を楽しみにしたいと思います。
 

(客席:PC前、無料)