東京フィルハーモニー交響楽団 長岡特別演奏会
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2016年10月22日(土) 14:00  長岡リリックホール コンサートホール
 
指揮:アンドレア・バッティストーニ
コンサートマスター:依田真宣
 


ヴェルディ:歌劇「ルイザ・ミラー」序曲

ヴェルディ:歌劇「マクベス」より 舞曲

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲

(休憩20分)

ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67 「運命」

(アンコール)
ラフマニノフ:ヴォカリーズ

 毎年開催さている東京フィルの長岡公演ですが、今年は長岡市立劇場が改修工事中のため、長岡リリックホールでの開催となりました。客席数は長岡市立劇場の半分以下の700席の小さなホールですので、今年は10月21日(金)と22日(土)の2回公演となりました。

 私はこれまで東京フィルの長岡での演奏会を、2000年5月以来何度か聴かせていただき、毎回楽しませていただいてきましたが、一番最近は、2015年5月のチョン・ミョンフン指揮による演奏会です。
 新潟市では東京交響楽団が定期演奏会をやっているためか、東京フィルの来演はなく、東京フィルを聴くなら長岡で、というのが定番になっています。

 今年の指揮は、東京フィルの主席客演指揮者のバッティストーニです。イタリア出身、29歳の若手指揮者ですが、すでに素晴らしい実績を重ねており、注目すべき指揮者です。今月の「題名のない音楽会」にも2週に渡って出演し、若さあふれるエネルギッシュな指揮ぶりに感銘し、今日の演奏が楽しみでした。

 曇り空ののはっきりしない天候ですが、ときどき日もさして、過ごしやすい土曜日となりました。今日は休みが取れましたので、早めに長岡入りし、リリックホールの隣の県立近代美術館で開催中の「ボストン美術館・ヴェネツィア展」を鑑賞しました。音楽もいいですけれど、本物の絵画というのも良いですね。

 開場時間にホールへ移動し、席に着きました。客の入りは8〜9割というところでしょうか。開演のチャイムが鳴り、拍手の中楽員が入場。小さなホールに合わせてか、オケの編成は若干小振りで、いわゆる12型。弦5部は、私の目視で12-10-8-6-5です。指揮台には譜面台はありません。

 バッティストーニが登場し、ヴェルディの序曲で開演しました。演目はすべて暗譜での指揮。軽快でぐいぐい飛ばす演奏に胸が高鳴りました。大太鼓の締まった音が心地良く、オケの質の高さも感じさせました。「ウィリアム・テル序曲」冒頭のチェロのソロとアンサンブルもお見事。疾走するようなフィナーレに、早くもブラボーが贈られました。

 後半は「運命」です。指揮台に上がって振り返るとともにすぐに演奏開始。出だしからオケは息がぴったりで、見事なスタートダッシュです。猛スピードでぐいぐい進み、生命感と躍動感にあふれる元気の良い演奏でした。暗さは微塵も感じさせず、地中海の太陽が降り注ぐような明るさが感じられました。さすがにイタリア人だなあという印象です。
 バッティストーニはオケを煽りに煽っていましたが、それに追従して一糸乱れぬアンサンブルを聴かせた東京フィルの皆さんには脱帽です。まさに若さの爆発。高速道路をスポーツカーで疾走すような爆演に、理屈なしで気分は高揚し、気分爽快になりました。

 何回かのカーテンコールの後、指揮台前に譜面台と楽譜が運び込まれ、「興奮した演奏の後はリラックスする音楽を」というバッティストーニの挨拶があった後、「ヴォカリーズ」をしっとりと演奏し終演となりました。

 日頃東京交響楽団ばかり聴いていますので、たまにほかのオケを聴くのは新鮮で良いですね。バッティストーニは期待通りの指揮ぶりで、この若さで、これだけの演奏を引き出すなんてたいしたものです。もちろん東京フィルの皆さんの演奏あってのものであり、ブラボーを贈りたいと思います。

 久しぶりの長岡遠征。例によって農道経由で快適に家路に着きました。先日東響定期を聴きそびれたうっぷんが晴れるような見事な演奏に、気分も晴れやかです。

 

(客席:9-10、¥8000)