りゅーとぴあ第4代専属オルガニストの石丸由佳さんは、4年間の任期を終えて、今日が最後のリサイタルとなりました。
演奏もさることながら、プログラムの斬新さや、わかりやすい語り口で楽しませてくれました。任期を延長してもらいたいところではありますが、始めから1期4年間の契約だったそうです。
全国区で活躍し、東京に活動拠点(ココペリオルガンスタジオ)を持ち、武蔵野音楽大学の非常勤講師も務めておられる石丸さんですので、新潟出身とはいえ、新潟に縛り付けておくことはできません。すでに4月から所沢市民文化センター・ミューズの第5代ホールオルガニストに就任することが決まっており、さらなる活躍を祈念したいと思います。
私が石丸さんの演奏を聴いたのは、2011年2月の「第22回シャルトル国際オルガンコンクールグラン・プリ受賞記念リサイタル」が最初で、その後も2012年10月の「石丸由佳オルガンリサイタル in りゅーとぴあ
No.2」でヨーロッパで研鑽を積んだ成果を披露してくれました。
そして、2020年4月に、絶大な人気を誇った第3代専属オルガニストの山本真希さんの後任として、第4代専属オルガにストに就任されました。
以後、2020年6月の就任記念の「石丸由佳オルガン・リサイタル」から、毎年のリサイタルやクリスマスコンサートをはじめ、様々な機会で演奏を聴く機会がありましたが、2021年6月のプラネタリウムを投影しての演奏会や、2022年10月の「死の舞踏」と題した演奏会など、これまでにない斬新な演奏会が記憶に残っています。
直近では、昨年12月のクリスマスコンサートは聴きに行けませんでしたので、昨年9月の「パイプオルガンのふしぎずかん2」以来、半年ぶりになります。
今回のラスト・リサイタルでは、新潟での専属オルガストとしての4年間の総決算として、「新潟の風景」をテーマに、新潟で生まれ、新潟で活躍されている作曲家の後藤丹先生、宮下秀樹先生の作品が演奏されるのも楽しみです
今週前半の冬の寒さがうそのように、昨日から天候が回復して、春の陽気になりました。明日から再び崩れる予報が出ていますが、今日は朝から晴れ渡り、雲ひとつない青空が広がりました。
ルーチンワークの掃除・洗濯を終えてネコと戯れ、着飾ってデパートに出かけた暴君を見送り、ゴミ出しをして家を出ました。
某所で簡素な昼食を摂り、白山公園駐車場に車をとめました。陸上競技場では、アルビ・レディースの試合があり、応援団の歓声が賑やかでした。
白山公園の桜のつぼみは膨らみ始めていましたが、もう2週間もすれば開花することを思いますと、気分も高まります。もう少しの辛抱ですね。
県民会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあ入りしましたが、時間がありましたので、春の陽気に誘われて、屋上を一回りしました。ビル群の彼方に、真っ白な雪に覆われた飯豊・朝日連峰の山並みが、青空に映えてきれいでした。
日光と春の風を身体に受けてリフレッシュし、2階に降りますと、ロビーは開場を待つ人たちでごった返していて、熱気に満ちていました。
開場時間となり、しばらく経って列が短くなったところで、私も列に並んで入場しました。ステージにはスクリーンが設置されていました。客席は、1階から3階まで満遍なく埋まり、オルガンの演奏会としましては、最高の入りと言っても良いのではないでしょうか。石丸さんの人気の高さが伺われました。
開演時間となり、グリーンの衣裳の石丸さんが助手を従えて登場。ヴィヴァルディの「四季」から「春」の第1楽章で開演しました。オルガンの多彩な音色が、弦楽での演奏に慣れた耳にも、何の違和感もなく響いてきました。りゅーとぴあのオルガンの素晴らしさと、それを引き出してくれる石丸さんの素晴らしさを実感しました。
ステージ上のスクリーンには演奏の様子が映し出され、四肢を使って神業のように演奏するオルガニストの凄さを、改めて目の当たりにしました。
ここで石丸さんの挨拶があり、鳥屋野中学校時代にお世話になったという音楽の先生との対談がビデオで流され、興味深く拝聴しました。
ビデオ終了とともにバッハの「オルガン小曲集」からの2曲が続けて演奏されました。荘厳にして穏やかに、しっとりと響くオルガンの音色が、萎えた心を癒してくれました。
続いて、石丸さんの話があり、オルガンとの出会いが語れました。中学生のときに、りゅーとぴあが開館し、市内の中学生が集う「水辺の音楽会」が開催され、そこでオルガンを演奏する奏者のオーディションがあったそうです。中学3年の受験生であり、オーディション参加に反対もあったそうですが、演奏者の5人の1人に選ばれました。このときにオルガン演奏の指導を受けた先生との対談のビデオが流されました。
ビデオが終わるとともに、バッハの協奏曲イ短調の全3楽章が演奏されました。バッハは様々な器楽協奏曲をオルガン独奏用に編曲していますが、この曲はヴィヴァルディの「調和の霊感」第8曲の「2つのヴァイオリンのための協奏曲」を編曲したものだそうです。オルガンの多彩な音色により、弦楽合奏による協奏曲がオルガン曲に生まれ変わり、石丸さんの卓越した演奏技術により具現化され、美しい響きと音楽に浸り、うっとりと聴き入りました。
再び、石丸さんの話がありましたが、ここまで演奏してきた曲には意味があって、実は新潟高校から東京藝大を受験したときの課題曲だったそうです。受験レベルでこういう曲を演奏するなんて、藝大を目指す人って凄いんですね。と、楽器を弾けない素人は単純に感激してしまいます。
藝大を卒業して大学院を終了された後はヨーロッパで学び、シャルトル国際オルガンコンクールで優勝し、その後はヨーロッパ各地で演奏されました。
その中でノートルダム大聖堂での演奏が、一番思い出深かったそうで、そこで演奏したヴィエルヌのオルガン交響曲第1番のフィナーレが演奏されました。ホールいっぱいに響き渡る豪華絢爛な音色と圧倒的迫力に、パイプオルガンの醍醐味を知らしめてくれました。
休憩後の後半最初は、ヴィヴァルデイの「四季」から「冬」の第1楽章と第2楽章が演奏されました。前半最初と同様に、オルガンの多彩な音色を駆使して、違和感なく曲を楽しむことができました。今後は是非ともオルガンでの「四季」全曲演奏をCD化していただきたいですね。
ここで石丸さんの話があり、この「冬」の情景は新潟の冬のようだと話されていました。そして、新潟の作曲家であり中学校教諭でもあり、吹奏楽界では知らない人はいない宮下秀樹先生の紹介と、対談の模様がビデオで流されました。
そして、委嘱初演となるオルガンのための「ランドスケイプ」が演奏されました。新潟の田園風景を描いた「広がる田園」と変貌を遂げる新潟の街並みを描いた「移りゆく街並み」の2曲でしたが、新潟愛に満ちた親しみやすいメロディが、スクリーンに投影された新潟の風景とともに、快く胸に響きました。
続いて、藝大入試に際してソルフェージュの指導を受けた後藤丹先生の紹介と、対談の様子がビデオで流されました。
そして、新潟にちなんだ曲として委嘱され、今回が初演となる「白い橋」が演奏されました。もちろん「白い橋」とは「万代橋」をイメージしており、親しみやすく美しい音楽が、しっとりと耳に、心に響いてきました。
石丸さんの話があり、最後は石丸さんの大先輩というオルガン奏者の勝山雅世さんの「故郷のテーマによる幻想曲」をしっとりと演奏し、予定されたプログラムは終了しました。
大きな拍手に応えて、アンコールに、3日前に発売されたCDのタイトルにもなった「瑠璃色の地球」を情感豊かに演奏し、感動の涙を誘いました。
石丸さんに花束が贈られて、ラスト・コンサートは終演となりました。花束を贈呈してくれた人は誰でしょうか。男性のようにお見受けしましたが、次期専属オルガニストの方でしょうか。
前半は、石丸さんのオルガンとの出会いと、お世話になった指導者との対談を交えて、石丸さんのオルガニストしての歩みに重要だった曲が演奏されました。
そして後半は、新潟の冬の風景を想像させるヴィヴァルディの「冬」と、新潟の作曲家による新潟の風景を表現した曲が映像とともに演奏され、最後は「故郷」で〆ました。
非常に考え込まれたプログラムであり、石丸さんの人柄も良く現れていて、オルガニストとしての素晴らしさだけでなく、人間としての魅力を感じさせました。
専属オルガニストとしての仕事はこれで終わりですが、石丸さんの故郷は新潟であり、新潟とのつながりが消えることはありません。これからも何かの機会に来演していただけるものと期待しています。
石丸さんのさらなる活躍を願いながら、りゅーとぴあを後にしました。穏やかな春の空気が心地良く、気分良く駐車場へと歩みを進めました。
なお、4月に就任する第5代専属オルガニストには濱野芳純さんが就任し、7月20日に就任リサイタルが予定されています。大いに期待したいと思います。
(客席:3階 I 3-8、¥2500) |