新日本フィルハーモニー交響楽団新潟公演
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2022年9月24日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:井上道義
ピアノ:小山実稚恵
コンサートマスター:伝田正秀
 
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

(ソリストアンコール)
ショパン:ノクターン第2番 変ホ長調 作品9-2


(休憩20分)

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35
  第1曲:海とシンドバットの船
  第2曲:カランダール王子の物語
  第3曲:若い王子と王女
  第4曲:バクダットの祭り−海−船は青銅の騎士を戴く岩で難破−終曲

(アンコール)
ハチャトリアン:「仮面舞踏会」より ワルツ

 今日は、新潟日報創業145年(創刊80周年)を記念しての新日本フルハーモニー交響楽団の新潟公演です。指揮者は井上道義さん、ピアノは小山実稚恵さんという豪華な布陣で、曲目もラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とリムスキー=コルサコフのシャエラザードという親しみやすく魅力的なプログラムです。
 このプログラムで、昨日は秋田市で、あきた芸術劇場のグランドオープン記念特別公演として演奏し、26日には千葉市で、千葉県文化会館開館55周年記念公演として演奏する予定です。
 秋田から移動しての新潟公演ですので、長距離移動でお疲れと思いますが、井上さんのことですので、熱い演奏を聴かせてくれるものと思います。

 さて、新潟は東京交響楽団が新潟定期演奏会を開催している関係もあってか、他の在京オケの来演は少なく、新日本フィルの新潟での演奏を聴くのは、2009年8月の久石譲オーケストラコンサート、2011年9月のクロネコファミリーコンサート、2014年10月の宮川彬良さんとのコンサート、2016年7月の久石譲さんとのコンサート以来8年振りになりますが、新日本フィル独自のコンサートとしては、2008年5月の小澤征爾指揮新潟特別演奏会以来になります。東京でも何度か聴いていますが、2018年7月に、すみだトリフォニーホールでの定期演奏会を聴いて以来4年振りです。

 指揮の井上さんは様々なオケと何度も新潟に来演されており、調べるのも面倒になりましたので紹介は割愛させていただきますが、2021年6月の東京交響楽団第120回新潟定期演奏会以来になります。
 咽頭癌で休養されたことがありましたが、見事に克服され、従前と変わらぬエネルギッシュな指揮で楽しませてくれています。しかし、2024年末で引退することが発表されており、今回の新潟公演は、新潟での最後の指揮になるかも知れず、記念すべき演奏会となるものと思います。

 ピアノの小山さんは、これまで新潟に何度か来演されており詳細は割愛しますが、2017年3月のだいしホールでのリサイタル以来となります。
 2012年4月のラ・フォル・ジュルネ新潟では、最終公演で今回と同じラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏しており、音楽祭のフィナーレを飾る素晴らしい演奏を聴かせてくれたことは記憶に新しく、今回も期待が高まりました。 
 

 今日はシルバーウィーク終盤の土曜日。連休でお休みの人、仕事に励んでいる人などいろいろと思いますが、私は幸い休みが取れ、昨日に引き続いてコンサートに行くことができました。
 掃除・洗濯、カメの水替え、ネコのトイレ掃除、ゴミ出しなど、与えられたルーチンワークを黙々とこなし、雑務を終えて、家を出ました。
 雨が降りそうで降らないどんよりとした天候は、私の心そのものです。某所で昼食をいただき、りゅーとぴあへと向かいました。
 白山公園駐車場は今日も満車でした。陸上競技場の駐車場には空きがありましたが、昨日出るのが大変でしたので、今日は市役所駐車場に駐車してりゅーとぴあ入りしました。
 りゅーとぴあ周辺の木々は黄色や赤色に色付き、早くも紅葉の始まりです。彼岸が過ぎて、いよいよ本格的に秋になりましたね。

 館内に入りますと、ちょうど開場時間となり、チケットの半券に住所・氏名・連絡先を書き、自分でちぎって入場しました。
 受付で配布されたプログラムは、チラシと同じデザインのA4の紙の裏に簡単な曲目解説を載せただけのもの。日報さん、創業145周年の記念公演でこれはないでしょう。2つ折のプログラムを作ったっていくらもかからないと思うんですけどね。新潟のアマオケだって、こんな失礼なことはしませんよ。

 ホールに入りますと、ステージ中央にはピアノが置かれていました。指揮台は設置されていません。オケの配置は通常の配置で14型。弦5部は 14-12-10-8-6 です。弦楽器の場所にはひな壇が作られておらず、ステージ上にそのまま椅子が並べられていました。コントラバスや管楽器など、団員が音出ししており、コンサートに臨む気分が高まりました。

 日報さんは強気でSS席の発売がありましたが、私は2階正面のS席です。SS席より1200円も安いんですけど、ここで十分すぎます。
 直前まで大きな新聞広告が出ていましたので、チケットの売れ行きを勝手に心配していましたが、余計なお世話だったようで、客席は次第に埋まり、それなりの集客となりました。東響定期よりは多いように思われました。私のすぐ近くには、美しき某ソプラノ歌手のお姿もありました。

 開演時間から5分遅れで、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスの伝田さんが入場し、チューニングとなりました。
 ブルーのドレスが麗しい小山さんと、井上さんが登場して、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番でコンサートが開演しました。

 鐘の音を模したピアノが次第に音量を増し、そこにオケが加わって、重厚な主題が力強く奏でられ、ラフマニノフの音楽世界へと誘われました。
 日頃このホールで聴く東響とは音色が明らかに異なり、オケの個性を感じました。全身を使って踊るような井上さんの指揮に応えて、分厚いサウンドのオケが小気味良くメロディを歌い上げました。
 小山さんのピアノは力強く、強靭な打鍵から繰り出される音は、悪く言えば粗っぽさも感じましたが、パワーに溢れていました。オケがフルパワーで鳴り切っていましたので、それに合わせてピアノもパワー全開だったようです。
 第2楽章は、美しい木管のメロディと絡み合いながらピアノがしっとりと、甘く切なく歌い、感傷的なメロディが心に染み渡り、うっとりと聴き入りました。寄せては返す感情の波が大きなうねりとなって打ち寄せ、再び切なく歌い、感動の極みとなりました。
 静けさがオケの強奏で打ち砕かれて第3楽章へ。スピード感とパワーに溢れて突き進み、哀愁漂う主題が奏でられ、それが大きなうねりとなっていきました。そしてギアチェンジとともにフルスピードで突進し、ピアノとオケがせめぎ合い、否が応でも胸は高鳴ります。一息ついて、再びエンジン全開となって駆け抜けて、高らかに力強く主題を歌い上げ、興奮と感動のフィナーレを迎えました。
 何だかんだ言っても、いい曲ですね。ダイレクトに心に迫る甘いメロディは、まさにラフマニノフ節。演奏の良さもあいまって、感動の音楽世界に身を委ねました。
 大きな拍手に応えて、ソリストアンコールは、ショパンのノクターン。感動で熱く燃え上がった心を、優しくクールダウンしてくれました。

 休憩後の後半は、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」です。前半同様に指揮台は置かれていません。井上さんが颯爽と登場して演奏開始です。
 第1曲冒頭の勇壮な金管のファンファーレを鎮めるように優しい木管が加わり、静けさの中にハープとともにコンマスの伝田さんのヴァイオリンソロがシェエラザードの主題を奏で、アラビアンナイトの物語が始まりました。
 大きな海原を航海する様子が壮大なメロディで表現され、聴く者の心も大波のうねりとともに揺り動かされました。
 第2曲は、寂しげなヴァイオリンソロから始まりました。その後のファゴットのソロ(カランダール王子の主題)が濁って聴こえましたが、私だけでしょうか。その後の木管は美しく演奏しましたので、気のせいでしたでしょうね。金管のファンファーレとともに曲調が変わって激しい場面となり、静けさと激しさを繰り返しました。
 第3曲は、優しく美しい弦楽のアンサンブルで始まり、ロマンチックなメロディに心もほっこりとしました。木管群の美しさと弦楽の柔らかさにこのオケの魅力を感じました。舞曲風の中間部に引き続いてハープとともにヴァイオリンソロがシェエラザードのテーマを奏で、それが大きく盛り上がって曲を閉じました。
 第4曲は、冒頭から緊張感にあふれ、オケは激しくリズムを刻み、嵐で荒れ狂う海が眼前に広がりました。金管の咆哮と激しく打ち鳴らされる打楽器群が大爆発しました。ついに難破してしまいますが、命は助かったようで、銅鑼の音とともに静けさが訪れ、ヴァイオリンソロがシェエラザードのテーマを物悲しく奏でて、消え入るように物語は終わりました。

 こんな豪華絢爛・総天然色の音楽絵巻が、新日本フィルの見事な演奏で具現化されました。全身を使った井上さんの指揮。ステージ上を動き回り、指揮台を設置しなかったことが理解できました。これだけ激しく動くと転落の危険がありますものね。
 井上さんは全身を使って指示を出しており、場面ごとに細かくオケのメンバーに指示していました。以前サントリーホールのP席で井上さんの指揮を見たことがありましたが、指示の細かさに驚いたことがあります。
 井上さんの素晴らしい音楽作りと、それに見事に応えた新日本フィル。先日の東京フィルでも感じましたが、日頃東響ばかり聴いていますので、たまに他のオケを聴きますと新鮮な感動をもらえます。

 ホールを埋めた聴衆に大きな感動を与え、割れんばかりの拍手が贈られ、井上さんの挨拶があって、もう年だからと言いながらも、アンコールに仮面舞踏会のワルツを演奏してくれました。
 ホールは舞踏会の会場となり、井上さんは踊りながらの指揮。聴衆も舞踏会に参加しました。興奮も絶頂となり、感動の中にコンサートは終演となりました。

 演奏の質がどうの、音楽性がどうのと議論することは意味はなく、単純に音楽の洪水に身を委ね、束の間ではありますが、心を無にすることができました。
 エネルギッシュでサービス精神旺盛な井上さん。まだまだお元気であり、引退表明は撤回していただきたいですね。またの新潟への来演を楽しみにしたいと思います。

 

(客席:2階C6-11、S席:¥6800)