3人の女神
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2022年9月23日(金) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ヴァイオリン:礒 絵里子・神谷未穂(デュオ・プリマ)
ギター:河野智美
 

インファンテ(藤井眞吾編):エル・ビート (磯、神谷、河野)
バルトーク(啼鵬編):ルーマニア民俗舞曲 (礒、神谷、河野)
ビゼー:歌劇「カルメン」より ジプシーの踊り (礒、神谷、河野)
ファリャ:スペイン舞曲1番 (礒、河野) 
プロコフィエフ:2つのヴァイオリンのためのソナタ (礒、神谷)

(休憩20分)

タレガ:アルハンブラの想い出 (河野)
グラッペリ:レ・ヴァルスーズ (神谷、河野)
グラッペリ:マイナー・スイング (神谷、礒、河野)
ピアソラ:忘却(オブリビオン) (礒、神谷、河野)
ピアソラ:「タンゴの歴史」より
     カフェ1930 (礒、神谷、河野)
     ナイトクラブ1960 (礒、神谷、河野) 
ヴュストホフ:サンバ・クエカ (礒、神谷、河野)

(アンコール)
ディエンス:タンゴ・アンスカイ (礒、神谷、河野)
アルベニス:セビーリャ (礒、神谷、河野)


 

 シルバーウィーク後半の金曜日。今日は秋分の日で休日です。気温は随分と下がり、体感でも暦の上でも、季節は秋になりました。

 今日は「3人の女神」と題された、デュオ・プリマの2人とギターの河野智美さんの3人によるコンサートです。他にも行きたいコンサートが同時刻にあり、どこに行こうか悩みましたが、東響定期会員枠でのチケットがありましたので、苦渋の選択でこのコンサートを選びました。

 デュオ・プリマは、ヴァイオリンの礒絵里子さんと神谷未穂さんの従姉妹同士が20年前に結成したユニットです。新潟での演奏会は、2004年9月のギターの高田元太郎さんと共演したりゅーとぴあ・能楽堂での「女神と天才」と題された演奏会が最初です。
 2007年1月にもりゅーとぴあ・能楽堂でギターの鈴木大介さんとの「女神と俊才」と題されたコンサートが1日2回公演であったのですが、私はチケットを買っていたものの、行けなかったことを思い出します。
 その後2011年10月に、新津美術館でのコンサートを聴く機会があり、そのときに会場でデュオ・プリマのCD(DUOISM)を買ってサインをいただき、今も大切にしております。

 そのほか、今年はデビュー25周年という礒さんは、新潟に度々来られていて調べきれませんが、デュオ・プリマとして以外でも、個人でのリサイタルもありましたし、クリスマスオルガンコンサートへの出演や、新垣隆さんとのコンサート、高橋多佳子さんとのコンサート、あるいは茂木オケのメンバーとしてなど、様々な形で新潟に来演しておられます。新潟でもすっかりおなじみとなり、私を含めてファンも多いものと思います。私としましては、2020年9月の椿三重奏団の演奏会以来で2年ぶりになります。
 一方神谷さんは、デュオ・プリマとしてのほかは、新潟での単独での演奏会はかなったように記憶していますが、仙台フィルのコンサートミストレスとして何度か新潟に来られており、私も聴かせていただいています。
 また、今回共演するギターの河野さんは、これまで演奏を聴く機会はありませんでしたので、どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。
 なお、3人は昨日から新潟入りしておられ、コンサートホールで入念なリハーサルを行って本番に臨まれています。


 今日は、厚い雲が空を覆い、小雨がぱらつくあいにくの休日となりました。愛猫と戯れ、おもむろに家を出ました。今日はたくさんのイベントが重なり、いつもの白山公園駐車場は満車で、陸上競技場の駐車場に車をとめて、白山公園から上古町へと歩きました。
 もう食べ納めかと思い、楼蘭で極上の冷やし中華をいただきました。また仕込んだので、もうしばらく冷やし中華はやっているので、食べに来てくれとのことでした。ありがたいことです。
 美味しくお腹を満たし、幸せ気分で上古町から白山公園を抜けてりゅーとぴあ入りしました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、チラシ集めをしていますと開場時間となり、すぐに入場して、この原稿を書きながら開演を待ちました。
 客の入りは、定期会員の席を除けば、ほどほどの入りでしょうか。もう少し混雑するものと思っていましたが、私の周りは混雑もなく、ゆったりと聴くことができました。

 開演時間となり、コンサートのタイトルの「女神」をイメージした衣裳だと話されていましたが、礒さんは白、神谷さんはピンクがかった白のドレス、河野さんは上は白いロングドレス風、下は黒のパンツ姿で登場しました。
 左から礒さん、神谷さん、河野さんという並びで、河野さんの席にはギター用の小型PA装置が設置されていました。

 インファンテの「エル・ビート」で開演しました。音量豊かなヴァイオリン、最小限のPAを使用したギターが美しく絡み合い、河野さんが学んだスペインの空気感を醸し出して、聴衆の心を引き付け、一気に3人の世界に引き込まれました。
 ここで礒さんから順に、3人による挨拶と自己紹介があり、以後楽しいトークと曲目紹介を交えながら演奏が進められました。
 2曲目は神谷さんが大好きな作曲家だというバルトークの「ルーマニア民族舞曲」です。CDにも収録されていますが、短い6曲の対比も鮮やかに、技巧を駆使した演奏で楽しませてくれました。
 3曲目はビゼーのカルメンから「ジプシーの踊り」です。軽快にリズムをきざみ、情熱的なカルメンの世界が眼前に鮮やかに浮かび上がりました。
 神谷さんが退場し、4曲目はデュオ・パッシオーネとして活動している礒さんと河野さんの2人により、ファリャの「スペイン舞曲第1番」です。スペインの民族的音楽を熱く表現し、ホールはスペインの空気に包まれました。
 礒さん、河野さんが退場し、その後に礒さんと神谷さんが登場。MCの間にギターの装置一式が片付けられ、前半最後は、デュオ・プリマとしての演奏で、プロコフィエフの「2つのヴァイオリンのためのソナタ」です。
 この曲もCDに収録されており、2011年10月のコンサートでも演奏されましたが、緩・急・緩・急という4つの楽章からなるソナタで、ボリュームもあり、聴き応えある演奏でした。ヴァイオリンの音量も豊かで、ホールいっぱいに響き渡りました。曲もプロコフィエフとしては聴きやすいものであり、コンサートホールの響きの良さもあいまって、極上の音響と、極上の演奏に酔いしれました。

 休憩後の後半は、河野さんのギター独奏で、タレガの「アルハンブラの思い出」で開演しました。河野さんは上が暗赤色の衣裳で登場。照明が落とされたステージで、河野さんにスポットライトが当てられました。
 緊張感も感じさせる静寂の中で、ギターのトレモロが静かに奏でられ、しっとりとした演奏に心が洗われるようでした。
 ステージが整えられ、暗赤色のドレスの神谷さんが登場し、後半2曲目は、グラッペリの「レ・ヴァルスーズ」です。河野さんは後半はタブレットの楽譜での演奏です。ヴァイオリンとギターが美しく響き合い、哀愁を感じさせる、しっとりと、ゆったりとした音楽に、心が癒されるようでした。
 真っ赤なドレスの礒さんが加わり、左から神谷さん、礒さん、河野さんという並びで、続いてはグラッペリの「マイナー・スイング」です。礒さんはコントラバスの代わりにピチカートでリズムを刻み、曲名の如くスイングして楽しませてくれました。
 続いてはピアソラの「オブリビオン」「カフェ1930」「ナイトクラブ1960」の3曲が続けて演奏され、哀愁と切なさが漂うピアソラの世界をしっとりと歌い上げました。
 そしてプログラム最後は、ヴュストホフの「サンバ・クエカ」です。舞台はアルゼンチンからブラジルに変わり、明るく軽快にサンバのリズムを刻み、南米の明るい太陽の輝きを感じさせ、心躍らせる中に予定の曲目を終え、ホールを感動と興奮で満たしました。

 大きな拍手に応えて、アンコールに定番の「タンゴ・アンスカイ」を軽やかに演奏し、アルベニスの「セビーリャ」で感動の演奏会を閉じました。

 ヴァイオリンとギターは音色的によく調和し、3人の「女神」の卓越した演奏技術と音楽性、そして、りゅーとぴあ・コンサートホールの豊潤な響きとともに、極上の音楽が創り出され、贅沢な2時間を過ごすことができました。

 気分良くホールを後にしましたが、出口が1ヶ所しかない陸上競技場駐車場を出るまでに40分以上を要し、少々イライラ気分を感じながら、小雨降る中、家路に着きました。


 以上、デュオ・プリマのCD(DUOISM)を聴きながら記事を書きましたが、改めてCDを聴きなおしてみますと、いい演奏ですね。お勧めです。ちなみに、このCDでのルーマニア民族舞曲のギターは福田進一さんです。
 また、礒さんは、10月11日に紀尾井ホールで、豪華なメンバーとともにデビュー25周年記念演奏会を開催されます。駆けつけたいところではありますが、陰ながらご成功をお祈りし申し上げます。

 なお、神谷さんは新潟市ジュニアオケ出身の山田さんと共演する予定があると話されていましたが、山田慧さんのことでしょうか。ご活躍を祈念し、応援したいと思います。

 

(客席:2階*-*、S席:東響定期会員招待)