新潟メモリアルオーケストラ第31回定期演奏会
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2022年9月25日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:工藤俊幸
チェロ:江口心一
 
(山岡重信先生への追悼演奏)
J.S.バッハ/山岡重信編:G線上のアリア

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104

(アンコール)
カタルーニャ民謡:鳥の歌

(休憩20分)

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 ロ短調 作品104

 今日はシルバーウィーク後半の3連休最後の日曜日です。昨日新日本フィルの見事な演奏を聴いたばかりなのですが、今日は新潟が誇るアマオケの新潟メモリアルオーケストラの定期演奏会です。

 新潟大学管弦楽団のOBを中心に結成されたこのオケは、毎年この時期に、意欲的なプログラムで、無料の定期演奏会を開催してくれます。私はその好意に甘えて、できる限り聴かせていただいています。
 今年も昨年に引き続いて定期演奏会に参加させていただくことにしました。今回は、東京都交響楽団の副首席奏者を務める江口心一さんをソリストに迎えてのドヴォルザークのチェロ協奏曲が注目されます。
 そして後半には、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が演奏されます。どちらもロ短調の曲という共通点があります。
 新型コロナの拡大の中、集まっての練習も大変だったと思いますが、毎回熱い演奏を聴かせてくれますので、今回もどんな演奏になるのか期待が高まりました。

 今朝は早起きして昨日の新日本フィルの記事を書き上げ、ホームページを更新してひと休みしました。疲れもたまっていましたので、今日はどうしようかと思案しましたが、家にいても良いことはありませんし、天気も良いですので、このコンサートに出かけることにしました。3日連続のりゅーとぴあ詣でとなりました。

 今日まで新潟県民会館では人気劇団の連続公演があり、今日も駐車場が混み合うことが必至でしたので、早めに家を出て、いつもの白山公園駐車場に何とか駐車することができました。
 十分に時間がありましたので、古町をうろつき、一回りして上古町の楼蘭でワンパターンの冷やし中華をいただきました。一昨日に食べたばかりなのですが、その美味しさは飽きることはありません。そろそろ今シーズンの食べ納めと思いますと、寂しさも感じます。
 お腹を満たした後は、暑さも感じる中、上古町を歩き、爽やかな秋の風が吹く白山公園を抜けて、りゅーとぴあ入りしました。

 館内に入り、自販機で喉を潤していますと、ちょうど13時となりました。開場の時間でしたが、それほどの混みようではありませんでした。すぐに入場して昨日と同じ席に座り、開演までの間、ゆっくりとこの原稿を書きました。
 配布されたプログラムに書かれていましたが、1995年から2012年まで、このオケを指揮して、数々の名演を引き出してくれた山岡重信先生が6月20日に逝去されたそうです。超個性的な演奏でしたが、今でも記憶に残る名演を聴かせていただいたことに感謝したいと思います。ご冥福をお祈り申し上げます。

 開演時間か近付くにつれて席は埋まってきましたが、客の入りはそれなりでしょうか。コロナ対策で、間隔を空けて座るようにとのアナウンスがありましたが、密接して座り、おしゃべりしている人が多いのは、毎度のことですね。客席には十分に余裕があるのですから、しっかり間隔を空けて座れば良いのにと、いつもひとりの私は思うのでありました。もちろん私は、他者としっかりと距離をとって聴かせていただきました。

 ステージでは、早くからコントラバスの皆さんとティンパニが練習しておられましたが、開演時間が近付くにつれ、そこにチェロが加わりました。その後、管楽器、ヴィオラ、ヴァイオリンとステージに出てきて、いつしか全員が揃い、音出しを始めました。これがいつものメモリアルオケ方式です。

 開演時間となり、オケの代表者がステージに登場し、6月に91歳で逝去された山岡先生との思い出が語られ、山岡先生の編曲によるバッハのG線上のアリアを献奏するので拍手しないようにとの要請がありました。
 場内が暗転して、チューニングが行われました。指揮者の工藤俊幸さんが静かに登場し、G線上のアリアがしんみりと演奏されましたが、弦楽のアンサンブルの重厚さと美しさに驚きました。この素晴らしい演奏を聴き、天上の山岡先生も感動して喜んでおられることでしょう。場内が真っ暗となり、しばしの沈黙の後、工藤さんがステージを去り、団員全員も一斉にステージから退場しました。

 場内が明るくなり、ステージが整えられて、指揮台横にチェロの演奏台が設置されました。拍手の中に団員が入場し、チューニングとなりました。オケのサイズは12型ですが、チェロの数が通常よりも多いようでした。

 チェロの江口心一さんと工藤さんが登場し、前半はドヴォルザークのチェロ協奏曲です。明るめで軽快な演奏で序奏が始まり、ホルン→クラリネット→オーボエとつながる最初の聴かせどころをそつなくこなし、チェロが加わって第1楽章が始まりました。
 江口さんのチェロは音量豊かに朗々と鳴り響き、その素晴らしさはすぐに伝わってきました。さすがに都響の副主席を務めながら多彩な音楽活動をされているだけはありますね。
 工藤さんは早めのテンポでオケをグイグイと鳴らし、力強いチェロとせめぎ合い、躍動感のある生き生きとした音楽が創り出されました。
 第2楽章は、最初の木管のアンサンブルが美しく、チェロがゆったりと情感豊かに歌い、束の間の激しさのある中間部経て、オケと絡み合いながら、抒情的な楽章をしっとりと静かに閉じました。
 第3楽章は、切れの良いリズムでオケが突き進み、トライアングルが鳴り響いて力を増し、チェロも負けじと力強く熱を帯びて演奏して応えます。後半のコンミスとの掛け合いや金管のコラールも美しく、静かにゆったりと情感豊かにチェロが歌った後、オケが全奏で応えて、勝利のファンファーレを奏でて感動の中にフィナーレとなりました。
 全体として、スピード感と躍動感に溢れる演奏で、重苦しさはなく、爽やかで小気味良いものでした。チェロと対等に渡り合うオケのパワーに感銘を受け、圧倒されました。

 大きな拍手が聴衆とともに団員からも江口さんに贈られ、花束が贈呈されました。そしてアンコールは、弦楽合奏とともにチェロの名曲「鳥の歌」が演奏されました。協奏曲での熱気と興奮を鎮めてくれるような、しっとりと心打つ演奏が胸にしみ、静かな感動の中に休憩に入りました。拍手が早い気がしましてけれど。

 休憩時間の終わりとともに、団員が順に出てきて音出しを始め、全員揃ったところでコンミスが立ち上がってチューニングとなりました。後半は、チャイコフスキーの「悲愴」です。第1ヴァイオリンは1人増えて13人になっていました。工藤さんが登場して演奏開始です。

 コントラバスとファゴットによる暗くもの悲しい序奏に始まり、弦楽が加わって第1主題が奏でられ、スピーディな流れの中で、チャイコフスキーの音楽世界に一気に引き込まれました。金管が咆哮し、甘美に歌う第2主題に涙しました。弦のアンサンブルとともに、管楽器群の美しさに感動しました。
 クラリネットからファゴットへ受け継がれ、静寂から一気に強奏に転じる聴かせどころもバッチリと決まりました。激しい感情の高ぶりが爆発し、嘆き苦しみ、その後涙は枯れて安静を取り戻し、甘美な第2主題で癒されました。弦のピチカートとともに奏でられる管も美しく、静けさの中に楽章を終えました。
 第2楽章の優美なワルツも美しく、弦楽も管楽器も乱れのないアンサンブルで歌い上げ、聴衆の心をを魅了しました。
 そして第3楽章は、スピード感に溢れ、激しく高らかに行進曲を奏で、圧倒的な熱量と迫力でグイグイと突進し、否応なく高揚させられました。ここぞとばかりに打ち鳴らされる大太鼓とシンバルの迫力は生演奏ならではの楽しみです。
 そして第4楽章。悲しみでむせび泣く弦楽。それにからむ管楽器の切なさ。切々と胸に迫る嘆き節に胸の痛みを感じます。悲しみの感情の高まりが頂点に達して爆発し、再び静かにむせび泣き、弦楽からヴァイオリン、ヴィオラが順に消えていき、最後はチェロとコントラバスだけになり静寂の中に消え入るように曲を閉じました。
 しばしの沈黙の後に指揮者の手が下ろされ、大きな拍手が贈られました。となるはずだったのですが、最後の音が消えないうちに、見事なフライング拍手が1階席後方からありました。それに続く人は誰もおらず、しばしの静寂の後に大きな拍手が沸き上がりました。
 数ある交響曲の中で、フライング厳禁なのが、この曲とマーラーの第9番です。空気を読んでくれない人には幻滅してしまいますが、今日は前半も後半もフライング拍手が起こってしまいました。余韻や静寂も演奏のうちなんですが、真っ先に拍手しようと待ち構えている人がいるんですよね。まあ、無料のコンサートでしたので、文句を言うのはよしましょう。

 ともあれ、演奏は素晴らしいものでした。前半の江口さんの演奏も良かったのですが、工藤さんの指揮に見事に応えたオケの素晴らしさがあってのことです。
 終始速めのテンポで駆け抜けて、躍動感に溢れる演奏は、多少の乱れなど意味はなく、そのエネルギー感と心を揺さぶる音楽にひれ伏すのみでした。
 昨日の新日本フィルと比べるのも変ですが、それなりの料金を払って聴くプロオケとの差は決して大きくはなく、受ける感動は何ら変わるものではありません。むしろアマオケだからこそ感じる何かがあるようにも思えます。1年間この日を目指して練習を積み重ねてきた情念でしょうか。職業としての演奏と、音楽の喜び、演奏する喜びを感じながらの演奏の違いでしょうか。

 ともあれ、素晴らしい演奏を無料で聴かせていただいて感謝でいっぱいです。無料でありながら、しっかりとしたプログラムも配布されました。昨日の新日本フィルはチラシ1枚だけでしたけれど。

 大きな満足感を胸にいだいてホールを後にし、空を飛ぶドクターヘリを見上げながら、駐車場へと早足で向かいました。
 連休が終わり、明日からまたあわただしい生活が待ち構えています。明日の予定を考えると心が暗くなりますが、アルビの勝利を確認して、明るい気分で家路に着きました。

 

(客席:2階C6-11、無料)