東京交響楽団第126回新潟定期演奏会
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2022年6月27日(日) 17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:イオン・マリン
コンサートマスター:小林壱成
 
チャイコフスキー:交響曲 第 4 番 ヘ短調 op.36

(休憩20分)

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」(1910 年版)

 今シーズンの東京交響楽団新潟定期演奏会は開催時期のアンバランスがあり、前半は5月、6月、7月と3ヶ月連続して開催されます。定期会員以外の集客に問題が出るんじゃないかと勝手に心配していますが、いろいろ事情があってのことと思います。

 ということで、先月に引き続いての新潟定期演奏会です。今回のプログラムは、昨夜サントリーホールで開催された第700回定期演奏会と同じ内容です。前半がチャイコフスキーの交響曲第4番、後半がストラヴィンスキーの「火の鳥」で、どちらも私が大好きな曲です。

 前半のチャイコフスキーの交響曲第4番は名曲・定番曲であり、新潟でもプロ・アマ含めて聴く機会が多く、とても紹介し切れません。この曲については、茂木オケでの徹底解説も行われています。
 1999年に始まった東京交響楽団新潟定期演奏会の長い歴史の中では、2004年の第27回新潟定期(指揮:アンドレイ・ボレイコ)、2016年の第95回新潟定期(指揮:ウルバンスキ)で演奏されており、今回は6年ぶり3回目となります。

 後半の「火の鳥」は、1999年の第4回新潟定期(指揮:秋山和慶)で組曲(1919年版)、2005年の第33回新潟定期(指揮:ミッコ・フランク)で組曲(1945年版)、2015年の第92回新潟定期(指揮:ウルバンスキ)で組曲(1945年版)と、これまで3回演奏されていますが、全曲版(1910年版)は今回が初めてになります。
 「火の鳥」は2管編成の組曲(1919年版)は聴く機会が多く、新潟交響楽団新潟市ジュニアオーケストラでも演奏されており、組曲(1945年版)も新潟大学管弦楽団が演奏しています。
 ちなみに、新潟が誇る舞踊団・Noismのレパートリーで、先月のNoism2の定期公演で再演された「火の鳥」で使用されたのも組曲(1919年版)でした。

 しかし、大編成を要する全曲版(1910年版)は、録音は多くてCDを何枚か持っていますが、実演を聴く機会は少なく、1995年に東京でキーロフ歌劇場管弦楽団(指揮:ゲルギエフ)、2004年に新潟でロンドン交響楽団(指揮:コリン・デイヴィス)の演奏を聴いて以来ですので、18年ぶり3回目となります。
 オケは4管編成で、イングリッシュホルン、バスクラリネット、コントラファゴットも使用されます。弦は16型のフルサイズとなり、多彩な打楽器群のほか、ピアノ、チェレスタ、ハープ3台なども使用されます。バンダ(トランペット3、テナー・ワーグナー・チューバ2、バス・ワーグナー・チューバ2)も加わり、総勢100人超えの大編成となります。オケ好きとしましてはこの上ない幸せであり、期待は高まるばかりです。

 指揮者のイオン・マリンさんについては、今回まで全く知りませんでした。ルーマニアからオーストリアに亡命し、カラヤン、アバド、クライバーに学んだ巨匠とのことですが、どんな曲作りをしてくれるのか楽しみです。
 単独でメインプログラムとなる曲目を前・後半で演奏するという豪華プログラムであり、定期会員以外の一般の人たち、特に若者たちに聴いてもらい、オーケストラの醍醐味を是非とも味わってもらいたいものです。


 いつものことながら前置きが長くなってしまいました。まだ6月にも関わらず猛暑続きです。一昨日新潟県で37℃超えが話題となったと思ったら、昨日は関東で40℃超えを記録しました。今日も暑さが厳しい日曜日となりました。

 本来であれば、13時からの東響ロビーコンサートを聴くところなのですが、北区文化会館での北区フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に行かなければならず、今回は断念しました。
 今日のロビーコンサートは木管五重奏で、フルートの相澤政宏さん、オーボエの浦脇健太さん、クラリネットのエマニュエル・ヌヴーさん、ファゴットの福士マリ子さん、ホルンの加藤智浩が出演されて、ルフェーブルの木管五重奏曲ほかが演奏されたのですが、聴けなくて残念でした。

 ゆっくりと昼食を摂り、バイパスを順調に走り、13時前に北区文化会館に到着。出やすい場所に車をとめて館内に入りますと、すでに開場待ちの列ができていました。私も列に並んで、開場とともに入場し、出口に近い場所に席を取り、演奏会に臨みました。
 終演は16時5分。団員の退場とともに駐車場へと走り、大急ぎで車を進めました。しかし、世の中は甘くなく、競馬場ICの上り口から渋滞しており、本線に入ってものろのろ運転。いらいらしながら阿賀野川を渡り、一日市ICを過ぎて漸く渋滞は解消されました。
 白山公園駐車場は入場待ちの列ができており、市役所駐車場に車をとめ、駆け足してりゅーとぴあに着いたのが無情にも17時5分。
 第1楽章はあきらめる覚悟で受付に行きますと、まだ大丈夫とのこと。進行が遅れていたようで、ちょうど団員が入場するところで、奇跡的に開演に間に合ったのでした。神様が味方してくれたようで感謝です。息を切らせて、噴き出す汗をハンカチで拭きながら客席に着きましたが、客の入りはいつもの程度でしょうか。

 拍手の中に団員が入場し、最後にコンマスの小林さんが入場して一礼し、大きな拍手が贈られました。既に後半の「火の鳥」用にステージが設定されていて、3台のハープ、ピアノ、チェレスタがステージの左側に設置されていました。オケは大編成の16型(16-14-12-10-8)で通常の配置です。ステージいっぱいのオケは視覚的にも豪華です。今日の次席は田尻さんで、廣岡さんは2列目におられました。

 マリンさんが登場して、前半はチャイコフスキーの交響曲第4番です。第1楽章冒頭のファンファーレから一気に演奏に引き込まれました。先ほどアマオケを聴いたばかりでしたので、その差に唖然としました。当然のことなんですけれど。
 大編成のオケによって生み出される音の洪水に身を任せ、音楽を聴く喜び、オーケストラを聴く喜びをダイレクトに味わいました。木管楽器が次々にメロディを受け渡していくところが大好きなのですが、これは生演奏の場でしか味わえません。
 第2楽章の聴かせどころのオーボエやファゴットの長大なソロもお見事。さすが東響とうなりました。第3楽章のピチカートも力強く、アタッカで突き進んだ第4楽章は、まさにオーケストラの醍醐味。この第4楽章冒頭の驚き加減が演奏のできと直結すると個人的に思っているのですが、バッチリでした。フィナーレでの煽り加減も素晴らしく、否応なしに高揚させられました。
 マリンさんを聴くのは今回が初めてでしたが、パワー溢れる躍動感のある音楽を創り上げてくれました。この前半だけでも満足感でいっぱいでした。

 休憩後の後半は、ストラヴィンスキーの「火の鳥」です。ステージから溢れそうな100人超えの大オーケストラを見ただけで胸が高鳴りました。
 組曲版とは違って、大編成のオケによる切れ目のない音楽劇が眼前で繰り広げられました。低弦による不気味な導入部から一気に演奏に引き込まれました。
 イワン王子と火の鳥、カスチェイの長大な物語に身を委ねましたが、時折顔を見せる組曲版にも採用された曲にほっとしたりしました。
 舞台裏のバンダを含めて、大編成のオケは音響的にも、視覚的にも豪華であり、贅沢でしたが、ハープは3台もいるのだろうかとか、ピアノは無くても・・とか、やはり編成が小さい組曲版は経済的で実用的なんだなとか、余計なことも考えながら聴いていました。
 終盤には、バンダで舞台裏で演奏していた金管奏者たちがステージ右後方にずらりと並び、フィナーレのファンファーレに加わって、音響的にも視覚的にも盛り上げてくれました。トランペットのほかにワーグナー・チューバが4本も並びますと壮観です。
 暗闇に光が差し、ホールに火の鳥が飛び回り、大音量のフィナーレに否応なしに胸が熱く高鳴りました。混沌として暗く沈んだ現実の生活に、明るさと生き抜くパワーを与えてくれたように思いました。
 この感動はホールに足を運んで、生の演奏に接してこそ味わえるものです。次代を担う若者たちにも是非とも味わってもらいたいものです。

 大きな拍手に応えて、マリンさんは正面のみならず、ステージの左右・後方の客席にも礼をして、好感度満点でした。

 大きな感動を胸に、心地よい疲労感とともにホールを後にし、束の間の夢の世界から苦難に溢れる現実世界へと身を投じました。
 

(客席:2階C*-**、S席:定期会員¥6300)