東京交響楽団第125回新潟定期演奏会
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2022年5月29日(日) 17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:太田 弦
ヴァイオリン:前田妃奈、ピアノ:福間洸太朗、チェロ:宮田 大
コンサートマスター:水谷 晃
 
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 op.16

(休憩20分)

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104

 今日は今シーズン初めての東京交響楽団新潟定期演奏会です。今回の定期は、年に1回恒例になった協奏曲三昧の日です。
 若手指揮者の筆頭として注目される太田弦さんを迎え、前田妃奈さんとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、福間洸太朗さんとグリーグのピアノ協奏曲、宮田大さんとドヴォルザークのチェロ協奏曲が演奏されます。
 超有名曲の3本立てですが、年に1回はこういう名曲コンサートも良いですね。新しいクラシックファンを開拓するには最適なプログラムだと思います。

 通常の新潟定期は、前日に東京か川崎で演奏会をした後、同じ演目を新潟で演奏するのが通例ですが、今回は新潟独自のプログラムです。
 東響の皆さんは、昨日はミューザ川崎で、原田慶太楼さんの指揮でのモーツァルト・マチネ第49回でしたから、リハーサルはどうしていたのだろうと勝手に心配していました。

 また、今日の公演は、新潟市の政令指定都市移行15周年記念と題されています。15周年の節目の記念公演にしては小振りにも思いますが、みんなで15周年を祝いましょう。

 さて、今日の指揮者の太田弦さんは、1994年生まれの28歳。指揮者として期待の新星です。デビューCD(シューベルトのグレイト)を持っているのですが、スピード感溢れる颯爽とした演奏が気持ち良く感じられます。個人的には今シーズンの指揮者陣の中では一番楽しみにしていました。
 ヴァイオリンの前田妃奈さんは、2002年生まれで、今年で20歳という若手です。これまで演奏を聴いたことはなく、フレッシュな演奏が期待されました。
 ピアノの福間洸太朗さんは、1982年生まれの39歳。CDを持ってはいますが、生演奏は聴いたことがありません。柏崎には何度も来られて演奏会を開催されていますが、新潟市にはなかなか来てくれず、今回の来演は楽しみでした。
 チェロの宮田大さんは、1986年生まれで35歳。私は10年前にサントリーホールで演奏を聴いたのが最初でしたが、今や日本を代表するチェリストとなり、その活躍は目覚しいです。新潟に何度か来演されており、一番最近では、2021年7月に、大萩康司さんとのデュオコンサートで来演しています。東響新潟定期でも、2015年8月の第91回に出演し、エルガーのチェロ協奏曲を演奏しています。今回はドヴォコンをどう演奏してくれるのか期待が高まりました。

 今日は朝から晴れ渡り、文字通りの快晴になりました。気温もほどほどに上がって、すがすがしい日曜日になりました。本当なら12時からのロビーコンサートも聴きたいところなのですが、都合がつかずに行けなくて残念でした。

 家を出て、初夏を思わせる暑さの中に車を進め、4時前にりゅーとぴあ入りしました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、東ロビーでこの原稿を書いて時間調整しました。開場時間となり、席に着いてこの原稿の続きを書きなから開演を待ちました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。最後にコンマスの水谷さんが登場して、大きな拍手が贈られました。今日の次席は田尻さんです。オケは小型の10型で、弦5部は、私の目視で10-8-6-4-3です。
 白いドレスの前田さんと小柄な太田さんが登場して、本日の最初はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲です。
 演奏は繊細で美しく、女性らしい優しさに満ち、透明感があって、春風がそよぐような爽やかさを感じました。オケも同様に美しく、躍動感とともに颯爽と駆け抜けました。最初から素晴らしい演奏に魅了され、大きな拍手が贈られました。

 ステージにピアノが設置され、オケのサイズが大きくなって12型となりました。弦5部は、12-10-8-6-5です。福間さんと太田さんが登場して、2曲目はグリーグのピアノ協奏曲です。
 先ほどの繊細な演奏から一転して、福間さんのパワフルなピアノが炸裂しました。荒っぽさと紙一重の力強い演奏で、スカッと爽やかでした。第1楽章終盤のカデンツァの豪快さは聴き応え十分。第2楽章での東響の美しい弦楽アンサンブルにも酔いました。第3楽章もフルパワーで駆け抜け、大きな感動と興奮を誘いました。

 休憩時間にステージが整えられてチェロの演奏台が設置され、後半は宮田さんの独奏によるドヴォルザークのチェロ協奏曲です。これは今日の演奏会を象徴するような素晴らしい演奏でした。
 冒頭の独奏が入るまでの長い序奏から緊張感が漂い、太田さんのオケの統率力が如実に示されました。宮田さんの独奏が加わりますと、その神懸かり的な演奏に触発されて、東響の演奏も熱を帯び、丁々発止の渡り合いが繰り広げられました。
 力強くパワフルなチェロに圧倒され、心に染み入る弱音の美しさにも感嘆しました。寄せては返す波を乗り越えて、興奮と感動のフィナーレを迎え、魂が揺り動かされるような胸の高鳴りを感じました。
 宮田さんの素晴らしさもさることながら、それに負けじと熱い演奏を引き出した若き指揮者のパワーに感嘆しました。指揮台を降りますと小柄ですが、指揮台上では存在感たっぷりでした。28歳でこれほどの統率力は大したものです。
 もちろん東響の皆さんの素晴らしさがあってのことです。水谷さんが率いる美しい弦楽の響き、管楽器の各パートも見事なパフォーマンスで魅了しました。

 終演は7時15分。内容豊富なプログラムで、お腹いっぱい、胸いっぱい。精神の高揚と心地良い疲労感を感じました。
 3人の独奏者それぞれが、持てる力を遺憾なく発揮してその実力を聴衆に示し、若きマエストロとともに一期一会の熱い演奏を創り出しました。今シーズンのスタートを飾るにふさわしい感動の演奏会となりました。
 外に出ますとまだ明るさが残っており、季節の移ろいを実感しました。6月、7月と新潟定期は続きます。大いに期待しましょう。


(客席:2階C*-*、S席:定期会員、¥6300)