「たいようオルガン」と言われても、不勉強な私には何のことかわかりません。荒井良二作の「たいようオルガン」という絵本をもとに、作曲家の野村誠の手により水戸芸術館の委嘱作品として作られ、昨年11月に石丸由佳さんと小林沙羅さんにより初演されたそうです。
公演は好評を博したため、6月12日に水戸での再演が決まり、石丸さんの本拠虚地である新潟での公演につながったものと思います。
人気絵本を題材にしたコンサートということで、子供やファミリー向けのコンサートと想像され、実際に水戸では「小さな聴き手のためのコンサート」として開催されています。
「たいようオルガン」のことを全く知らない者としては、どういう趣旨のコンサートなのかさっぱり理解できず、私のようなジジイが聴きに行ってもよいのかと疑問に感じましたが、出演者に魅かれてチケットを買ってしまいました。
今日は朝から晴れ渡り、快晴の空。気持ち良い青空ですが、その分暑さもきびしくなりました。ゆっくりと昼食を摂り、りゅーとぴあへと向かいました。
陸上競技場では中学生の県大会が行われており、歓声が聞こえてきました。猛暑のなか、ご苦労さんです。熱中症になりませんように・・。
りゅーとぴあに入りますと、ちょうど開場時間となりましたが、それほどの混みようでもなく、行列することなく入場しました。
予想通りと言いますか、期待通りに、親子連れが多くみられました。将来を担う子どもたちに、大オルガンの美しい響きと迫力を味わってもらい、音楽の素晴らしさを知ってもらえると良いですね。
客の入りとしましては、ちょっと寂しい感じもありました。絵本のコンサートということでしたので、子ども向けの内容で、一般の音楽ファンは、参加しにくい印象を与えたものと思います。私もどうしようかと迷いましたが、昔は子どもだったということで、参加させていただきました。正直言えば、美しい人に弱い私は、コンサートの内容よりも、石丸さんと小林さん目当てなんですけれど。
開演時間となり、ブルーの衣装の石丸さんが登場して、「バッターリャ」で開演しました。ステージに設置されたスクリーンに石丸さんの演奏風景が投影され、視覚的にも楽しめました。オルガンの響きは、やっぱりいいですねえ。子ども向けということもあり、うるさすぎない選曲をしたものと思いますが、迫力あるオルガンの響きを楽しめました。
石丸さんのMCがあり、ステージに薄い水色のドレスが麗しい小林さんが登場して、小林さんが好きな曲という「この道」がしっとりと歌われました。日本語の発音も美しく、響きが豊かなホールでも歌詞がきれいに聴き取れました。さすが小林さんです。
小林さんのMCがあり、来週七夕ということで、「たなばた」が歌われました。その後は、日本の四季の歌ということで、春夏秋冬を代表する童謡として、「さくらさくら」「うみ」「まっかな秋」「雪やこんこ」の4曲が続けて歌われ、私も童心に帰って、心がほっこりとしました。
オルガンの伴奏によるソプラノもいいですね。オルガンとステージはかなり距離があって、時間差があると小林さんが話されていました。歌いにくさはあるものと思いますが、素晴らしい歌声でした。
小林さんが下がって、オルガン独奏でラインベルガーの「カンティレーナ」が、しっとりと演奏され、その美しさにうっとりとしました。こんないい曲があったとは知りませんでした。
オルガン前の特設ステージに小林さんが登場して、フォーレの「ピエ・イエス」とバッハ/グノーの「アヴェ・マリア」が歌われました。
これはパイプオルガンとともに歌うにはこれ以上ない曲であり、しっとりとしたオルガンの響きとともに、小林さんの清廉な歌声がホールにこだまし、心が清められ、災害や戦禍に苦しむ人たちへの鎮魂にもなったようにも思われました。これを聴けただけでも、今日来た甲斐があったように思われました。
休憩後の後半は、いよいよメインの「たいようオルガン」です。赤いドレスの小林さん、白い衣装の石丸さんが助手とともに登場。オルガン前のステージで小林さんが語り、歌って物語が進みました。ステージのスクリーンには、色彩豊かな絵本の場面が投影されました。
空でオルガンを弾いているたいようの下で、ゾウバス(ぞうの形をしたバス)が人を乗せたり降ろしたりしながら旅をする物語で、朝から夜までの旅の様子が歌い語られました。途中嵐にあったりもありましたが、楽しい旅の様子が、コミカルな曲とともに描かれ、楽しませてくれました。
この絵本は、子どもたちには人気のようであり、楽しげに聴いていました。途中、「バスに乗りたい人」という話しかけに子どもたちは「はーい」と手を挙げていました。
小林さんの歌声は、もちろん素晴らしく、多彩な曲も楽しかったです。オルガンのこれまで聴いたこともない音色、特に超高音の響きは新鮮に感じられました。
夜のとばりの中に、楽しいゾウバスの旅は終わりましたが、子どもたちだけでなく、ジジイも楽しい時間を過ごすことができました。
二人には大きな拍手が贈られ、1階席最後方で聴いておられた作曲者の野村誠さんにも大きな拍手が贈られました。
演奏も内容的にも素晴らしく、決して子どもだましではなく、大人も十分に楽しめるものでした。今日来られた人は、皆さん満足して帰られたものと思います。束の間の時間でしたが、童心に帰って、穏やかな気分でホールを後にしました。
話はずれますが、スクリーンに写し出された絵本の画像は色鮮やかであり、プロジェクターの性能の良さにも驚きました。
(客席:2階C2-9、¥2500) |