北区フィルハーモニー管弦楽団第10回定期演奏会
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2022年6月26日(日) 14:00 新潟市北区文化会館
指揮:長谷川 正規
クラリネット:伊奈るり子
ゲストコンサートマスター:加藤礼子
 
プレコンサート
 弦楽四重奏
    モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
    ドヴォルザーク:ユーモレスク
 クラリネット三重奏
    曲目不詳
    シューマン:トロイメライ


シベリウス:カレリア序曲 Op.10

モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

(アンコール)
シューベルト:アヴェ・マリア

(休憩15分)

ドヴォルザーク:交響曲第8番 Op.88

(アンコール)
ステンハンマル:カンタータ「歌」より 間奏曲
 

 今日は北区フィルの記念すべき第10回の定期演奏会です。ソリストとして共演するのが新潟クラリネット界の重鎮であり、ファンも多い伊奈るり子さんというのも注目され、古くからの新潟のクラシックファンは集結するんじゃないかと勝手に思っています。
 とはいえ、今日は東響新潟定期の日でもあり、どちらに行くか苦渋の選択をした人も多いかもしれません。欲張りな私は当然両方を狙いましたが、北区文化会館からりゅーとぴあへの移動がスムーズに行くのか危惧されました。以前も同様の強行軍の経験があり、そのときは何とか間に合いましたが・・。

 北区フィルは、2010年6月にオープンした北区文化会館を拠点として、同年10月に結成された市民オケですが、2011年5月のLFJ新潟のプレ公演での有志によるロビーコンサート、同年10月の第1回ファミリーコンサート、そして2012年6月の第1回定期演奏会から聴いている私としましては、この節目の第10回定期演奏会を聴かないわけにはいきません。
 北区フィルを聴くのは、昨年12月の第10回ファミリーコンサート以来ですので、半年振りになります。今回も出演される知人よりチケットをいただきました。いつもありがとうございます。


 今週は、まだ6月にもかかわらず、連日の猛暑続きで、早くも夏バテしそうな毎日でした。今日も気温が上がって暑い日曜日になりました。
 ゆっくりと昼食を摂り、新潟西バイパス〜新潟バイパス〜新新バイパスと快適に車を進め、13時前には北区文化会館に到着しました。
 今日は東響新潟定期にも行かなければなりませんので、終演後に車を出しやすい場所に車をとめて中に入りますと、既に開場待ちの列が長く延びており、私も列に並んで開場を待ちました。
 13時15分の開場とともに入場し、帰りのことを考えて、出口に近い中段右前方に席を取りました。この原稿を書いていますと、13時半から舞台の右袖でプレコンサートが始まりました。
 チラシにはプレコンサートがあることは書いてありませんでしたので、得した気分でした。右に席を取ったのが正解だったとにんまりしました。
 弦楽四重奏で2曲、その後クラリネット三重奏で2曲演奏され、その美しい調べにうっとりと聴き入りました。個々の奏者の力量が推し量れて、北区フィルのレベルの高さが感じられました。本来ならロビーでの演奏だったはずですが、ホールで聴けて良かったです。

 開演時間が近付くとともに次第に客席は埋まり、なかなかの盛況となりました。8〜9割は埋まっていたのではないでしょうか。
 開演時間となり拍手の中に団員が入場。最後にゲストコンマスの加藤さんが登場して大きな拍手が贈られました。

 指揮の長谷川さんが登場して、1曲目は、シベリウスのカレリア序曲です。まずは弦のアンサンブルの美しさにうっとりしました。私の席では、管の音量のアンバランスさなど若干気になりましたが、総じて良く仕上がった演奏だったと思います。

 団員が一旦下がってステージが整えられて、編成が小さくなって、2曲目は、モーツァルトのクラリネット協奏曲です。薄紫のドレスが麗しい伊奈さんが登場して、美しい弦楽アンサンブルに導かれて演奏が始まりました。
 ここは伊奈さんの独壇場となりました。落ち着いていて安定感のある演奏はさすがであり、燻し銀の演奏に身を委ねました。
 第1楽章のお馴染みのメロディを軽快に演奏し、拍手が入って第2楽章へ。弦楽に導かれてクラリネットが優しく歌い、天に昇るかのごとく夢幻の世界へと誘われました。疲れた心を癒してくれるような極上の音楽世界を見事に表現してくれました。
 再び拍手が入って第3楽章へ。明るく爽やかに歌い、踊り、秘められた悲しみを吹き飛ばして、感動のフィナーレへと駆け上がりました。
 さすがと思わせる伊奈さんの落ち着いた演奏に酔いました。北区フィルの皆さんも持てる力を精一杯発揮し、しっかりとバックを支え、伊奈さんとともにモーツァルトの晩年の名曲の魅力を余すことなく伝えてくれました。
 大きな感動と満足感で胸を熱くし、その喜びをホールを埋めた聴衆と分かち合いました。新潟のソリスト、新潟のオケ、新潟の指揮者、新潟の力だけでこれほどの演奏が聴けるというのは素晴らしいことだと思います。
 大きな拍手に応えて、アンコールにアヴェ・マリアを演奏し、しっとりと胸に染み入る感動とともに前半のプログラムを閉じました。

 休憩の後の後半は、再び編成が大きくなって元に戻り、ドヴォルザークの交響曲第8番です。聴かせどころの第1楽章冒頭のチェロの序奏を、若干の危うさを感じさせながらもしっかりと歌わせてくれて演奏に引き込まれました。
 当初は前半にも感じた管の音量のバランスの乱れを若干感じましたが、その後は安定感を増して行き、聴き応えある演奏になりました。
 第2楽章の出だしのアンサンブルも美しく、うっとりとしました。コンマスのソロや管の掛け合いも美しく、良くまとまっていました。
 第3楽章のワルツも美しく、第4楽章の高らかに歌うトランペットのファンファーレもばっちりと決まりました。長谷川さんの曲作りと思いますが、緩急の幅を大きくとり、さすがにゆっくりすぎかと思わせる寸前で踏みとどまり、大きなためを作ってギアチェンジし、エンジン全開で興奮と感動のフィナーレへと突進しました。
 アマオケですので、それなりの不安定さは感じられましたが、それは当然のこと。創り出される音楽は明るさと楽しさに満ちていて、ボヘミアの空気でホールが満たされました。
 結成12年目のアマオケということを考えますと、十分すぎるほどにまとまった演奏であり、高水準だったと思います。演奏技術を論じることの無意味さを実感させてくれる熱い音楽がそこにありました。弦の美しさ、特にヴァイオリンのアンサンブルの美しさは特記したいと思います。

 第10回記念ということで、長谷川さんの挨拶があり、アンコールにステンハンマルの間奏曲が美しい弦楽アンサンブルとともに演奏されて終演となりました。
 この曲は、誰も知らない曲だろうと長谷川さんが紹介されていましたが、私はしっかりCDを持っているのでありました。だからどうだということでもないですけれど。

 新潟市と言っても、中央区ではなく、中心部からかなり離れた北区という地に、このようなオケがあることそのものが素晴らしいことだと思います。市民オケとして地元の方々に親しまれ、アマオケとしては高水準な演奏を聴かせてくれるというのは誇るべきことだと思います。
 楽章間に大きな拍手が贈られていましたが、これはクラシックコンサートになじみが少ない人たちが多数来られていることを示しており、これは素晴らしいことだと思います。
 一部の常連のクラシックファンだけでなく、一般市民が気兼ねなく足を運び、音楽に親しんでくれています。市民による市民のためのオケを見事に体現している北区フィルの活動を称賛したいと思います。

 終演時間は16時5分。駐車場へ駆け足し、17時開演の東響新潟定期を聴くべくりゅーとぴあへと車を進めました。さて、どうなったかは次のベージのお楽しみということにしましょう。

 良いコンサートだったと思いますが、ただひとつ気になったことがありました。席に座っていられない幼児を連れた若いお母さんが来られていました。静かにしていられない幼児が演奏中に騒ぎ、しまいには体操を始めてしまいました。
 お母さんはたしなめることなく、演奏中にも関わらず終始スマホを操作しておられたのには驚きました。たとえアマオケのコンサートであったとしても、コンサートに来たからには最低限のマナーを守って、音楽を聴いていただきたいと思います。
 この年になっても人間の器が小さい私は、つい気になってしまうのでした。もっと寛大になるべきなんでしょうね。でも、スマホは良くないなあ・・。

(客席:11-25、¥1000)