今日は、今シーズン4回目の東京交響楽団新潟定期演奏会です。今回の指揮者は、今年で10年目の節目を迎えた音楽監督のジョナサン・ノットということで注目の演奏会です。
今回のプログラムは、前半がベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番、後半がベートーヴェンの交響曲第6番「田園」というオールベートーヴェン・プログラムで、昨夜サントリーホールで開催された第716回定期演奏会と同一プログラムです。
これまでの東京交響楽団新潟定期演奏会を振り返って、前半で演奏されるピアノ協奏曲第2番は、2021年11月の第123回(指揮:ウルバンスキ、ピアノ:児玉麻里)以来2回目、後半の交響曲第6番「田園」は、2012年1月の第69回(指揮:秋山和慶)、2019年3月の第112回(指揮:高関
健)以来3回目になります。
共演するゲルハルト・オピッツは、ドイツ正統派を代表する演奏家だそうですが、奥様が日本人ということもあって親日家として知られています。新潟にも何度も来演しており、すっかりお馴染みです。
東京交響楽団新潟定期演奏会では、2003年7月の第21回(指揮:スダーン)では、ブラームスのピアノ協奏曲第2番、2009年11月の第56回(指揮:スダーン)では、ブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏しています。
そのほかにも何回か新潟に来演しており、私個人としましては、2012年12月のりゅーとぴあでのリサイタルを聴く機会があり、最近では、2022年11月のNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団(指揮:アンドリュー・マンゼ)とのベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を聴いていますので、1年ぶりになります。
今日は毎回熱い演奏で楽しませてくれるノットとの共演で、どのようなベートーヴェンを聴かせてくれるのか期待が高まりました。
今週は、前半は気温が高めで暑さを感じるほどでしたが、週末は寒い空気に入れ替わって天候が崩れ、肌寒さを感じるようになりました。新潟県内でも山間部は積雪となり、季節は晩秋から初冬へと向かっていることを実感しました。
冷たい雨が降る日曜日、朝は今シーズン一番の冷え込みとなりました。本公演の前に、13時からは新潟定期の日に恒例の「東響ロビーコンサート」がありましたので、聴かせていただきました。
今回はフルートの相澤政宏さん、ヴァイオリンの水谷有里さん、ヴィオラの武生直子さんにより、本公演にちなんでベートーヴェンの曲が演奏され、素晴らしいアンサンブルに感嘆しました。
一旦帰宅して記事を書き、雨が降り続く中に、再度りゅーとぴあへと向かいました。気温は上がらず、車の外気温計は8℃。12月並みの寒さの中に、りゅーとぴあ入りしました。
館内に入りますと、りゅーとぴあ館内の各会場はフル稼働のようで、賑わいを感じました。コンサートホールは既に開場されており、チラシ集めをして、早めに入場しました。
席に着きますと、ちょうど今シーズンから始まった榎本さんと廣岡さんによるプレトークが始まるところでした。本日のプログラムについての解説があり、恒例の団員紹介コーナーはホルンの上間さんの紹介でした。
その後、本日の指揮者のノットさんの紹介があり、質問コーナーは、オケの編成の大きさは誰が決めるのかで、楽しく聞かせていただきました。
プレトークが終わり、ステージに設置されていたピアノの蓋が開けられ、開演の準備が整いました。ステージで音出ししていたティンパニとコントラバス奏者がステージから下がり、いよいよ開演です。
今日のメインは人気が高い「田園」ですので、集客が良いかと期待しましたが、客の入りはいつも程度でしょうか。私の直ぐ近くの席には、団長の廣岡さんが着席されました。
拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にニキティンさんが入場して、大きな拍手が贈られました。弦の配置は、ノットさんのときの常ですが、ヴァイオリンが左右に別れる対向配置です。オケのサイズは12型で、弦5部は、12-12-8-6-5
と小型の編成です。
オピッツさんとノットさんが入場して、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番の開演です。ピアノが入るまでの長い序奏での弦楽アンサンブルの美しさに感嘆し、東響の素晴らしさを再確認しました。
軽快に飛ばすオケとともに、ピアノは自然体で進み、重厚さは排除され、躍動感、軽快感に満ち溢れていました。カデンツァをきっちりと弾いて第1楽章を終えました。
第2楽章はときに重厚感も感じましたが、次第に透明感を増し、終末部での静寂の中でのピアノとオケとの対話は、クリスタルのように透き通り、神々しいまでの美しさが心の奥底まで染み入ってきました。
一転して第3楽章は、明るく爽やかに跳ね回り、軽やかで心地良いリズムで心がワクワクするようでした。躍動感に満ちた演奏に、疲れた心に癒しをいただき、苦難に立ち向かうエネルギーをいただいたように感じました。
オピッツさんに勝手に抱いているイメージとしては、重厚なドイツ音楽の本流を行く巨匠ですが、今日の演奏は、肩の力が抜けて躍動感があり、ノットさんとともに心地良い音楽が流れ出てきました。
ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の中でも聴く機会が少ない曲ですが、この曲の素晴らしさ、楽しさを教えてもらったように思います。
素晴らしい演奏に、ホール内は大きな満足感と爽やかな感動で満たされ、大きな拍手が贈られました。ソリストアンコールを期待しましたが、そのまま休憩に入りました。
後半は交響曲第6番「田園」です。指揮台には譜面台はありません。ノットさんが登場して演奏開始です。第1楽章は速めに進み、単に猛スピードというだけではなく、大きく歌わせて、音楽のうねりを作って、ノットさんの音楽を創り上げていました。弦の対向配置も良さが出ていて、ステレオ効果が演奏を引き立てていました。
第2楽章は、一転して美しくゆったりと歌わせ、透明感のある弦楽が美しく、管楽器も素晴らしいパフォーマンスを発揮し、各楽器のソロの聴かせどころもばっちりと決まっていました。最後のカッコウもきれいでした。
名曲中の名曲であるこの曲は、これまでに何度聴いたかわかりませんが、こんなにも美しい第2楽章は、聴いたことがないようにさえ思えました。
第3楽章は、再びスピードを上げ、大きくアクセントを付け、ノットさん独自の味付けがなされていました。管の掛け合いの後の弦の荒々しいリズムの付け方も聴き映えがありました。ちょっとクセが強すぎかと思う場面もありましたが、心地良い音楽にワクワクしました。
第4楽章の嵐は激しく、雷鳴が鳴り、稲妻が思いっきり光りました。ディンパニは乾いた音であり、嵐の激しさの中にも重々しさが抑制されていました。雷雲が次第に通り過ぎていく距離感が良く表現されていました。
そして、嵐が過ぎ去って第5楽章へ。ホルンに導かれて、弦がゆったりと高らかに歌いました。大きくアクセントを付けて、大きなうねりを生み出し、生き生きとした音楽が創り出され、大きな喜びの中に曲を閉じました。
これまでに何度も聴き、2週間前にも聴いたばかりの「田園」ですが、新鮮な感動をいただき、この曲の新たな魅力を知ることができたように思います。
大きな感動をいただいて、力の限りに拍手しました。ホールのあちこちからブラボーの声も上がって、ノットさんと東響の皆さんの熱い演奏を讃えました。
さすがノットさんであり、名曲に独自の味付けをして、楽しませてくれました。12型という小型の東響も機動力を発揮していました。今日のロビーコンサートでも良い演奏を聴かせてくれた相澤さんをはじめとして、管楽器の各パートの皆さんの素晴らしい演奏も賞賛したいと思います。
終演後は、CDを購入した人にはオピッツさんのサイン会が開催されました。私はCDは買いませんでしたので、そのままホールを後にしました。
感動で熱くなった心とは裏腹に、外に出ますと冷たい雨が降り続いていました。季節は確実に冬へと向かっており、明日も12月並の寒さという予報が出ています。体調管理に気をつけましょう。
(客席:2階C*-**、S席:定期会員:¥7000) |