先週ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を新潟で聴かせてくれたノットさんとオピッツさんですが、今度はベートーヴェンの「皇帝」です。
昨夜開催された「東京オペラシティシリーズ第136回」と同じ内容で、本日はミューザ川崎で「名曲全集第193回」として演奏され、生配信されましたので、先月に引き続いて視聴させていただくことにしました。
開演10分前にニコニコ生放送のサイトに接続しますと、ミューザ川崎のステージが映し出されていました。右側にはピアノが2台、ハープが2台並び、ステージ後方には右から左まで、所狭しと多彩な打楽器群がずらりと並んでいて壮観です。
開演前にノットさんのメッセージビデオが流れ、前半に演奏されるリゲティの「アパリシオン」に関しての説明があり、リハーサル風景が流れました。その後再びステージ風景に戻りましたが、客席は空席が目立ちました。
拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後に客演コンマスの景山さんが登場して大きな拍手が贈られました。ちなみに景山さんは最近東響を辞めて読響に移籍したハープの景山さんのお兄さんだそうです。弦は12型の対向配置です。コンマス以外も客演奏者が多いようで、見慣れない顔が多く見られました。
ノットさんが登場して、リゲティの「アパリシオン」の演奏開始です。静寂の中にゴーストが出るかのように、ピアノ2台をはじめに、様々な楽器から不気味な音楽といいますか、音が流れ出て、思わずビクッとしてしまいます。
無音の中でもノットさんが指揮をしていて、いやでも緊張感が高まります。そして不協和音の嵐が訪れ、突然あっけなく曲が終わります。こういう現代曲は終始緊張感を要求されますので、聴く方も疲れてしまいます。
そして、ノットさんは指揮台から下がることなく、すぐにドビュッシーの3つの夜想曲より「祭り」の演奏が始まりました。緊張感から解放されてほっとして、束の間の聴きやすい音楽に身を委ねました。
ここで照明が落とされてステージが整えられて、続いては東響が誇るチェロセクションによるブーレーズの「メサジェスキス 〜独奏チェロと6つのチェロのための〜」です。
チューニングの時点では、ステージにはチェロが1人だけ。この人だけ演奏に加われずかわいそうに思いましたが、余計なお世話ですね。ステージ前方、指揮台前にチェロの席が横並びで設けられました。
チェロの伊藤さんと6人のチェロ奏者、そしてノットさんが登場して演奏開始です。6人のチェロ軍団をバックに伊藤さんが演奏しました。
他のオケメンバーは演奏しないので、聴衆としての参加です。さっきのチューニングは何だったのだろうと不思議に感じましたが、この曲と次の曲を続けて演奏したいという意図なのでしょう。
演奏は緊迫感のあるもの。1曲目とは違ってスピード感がある部分もあって多少は聴きやすかったですが、聴く方にも集中力が要求されます。
やはり現代曲は疲れますね。でも、凄い演奏だったということは私のような素人の耳でも感じ取られました。伊藤さんと6人のチェロ奏者に大きな拍手が贈られました。
そのまま指揮台前にチェロメンバーが着席し、アマンの「グラット」の演奏開始です。多彩な楽器が鳴り響いて賑やかで、特殊な演奏方法も駆使され、不気味さを感じる音楽が湧き上がりました。現代音楽にも慣れてきたのか、宇宙空間をさまようなSFチックな響きが心地良く感じられました。
「2001年宇宙の旅」か「未知との遭遇」か、異次元の空間をさまようようで、得も言われぬ浮遊感、無重力感を感じました。
配信を聴いている部屋の窓の外は大荒れで、強風が吹き荒れて激しい雨が窓に打ち付けていて、多彩な楽器による不気味な音楽を打ち消すようでした。人工的な音楽より、自然の音が勝りますね。
新聞大の大きなスコアを見ながらのノットさんの指揮。音楽というより音響を楽しみ、複雑極まりない音楽を演奏する東響の皆さんのすごさを感じるうちに、指揮するノットさんの手が止まり、半ば唐突に演奏が終わりました。
不勉強で音楽的素養のない私には、曲の良さは理解でききませんでしたが、きっと素晴しい曲だったのでしょうね。
休憩時間にチェロセクションの皆さんの挨拶がありましたが、これがネット配信の楽しみです。難しい曲の演奏を無事に終えられてご苦労様でした。
ステージにピアノが設置されて、後半はいよいよ「皇帝」です。ステージ上に並んでいた多彩な楽器群は片付けられて、すっきりした眺めになりました。
拍手の中に団員が入場。景山さんがピアノを鳴らしてチューニング。オピッツさんとノットさんが登場して「皇帝」の演奏開始です。前半の緊張感から解放されて、気兼ねなく音楽に没頭できました。
堂々としながらもしなやかなピアノとオケ。重々しくなく軽やかに歌うピアノが心地良く、明るい気分にさせてくれました。前半とのギャップが大きく、やっぱり音楽というのは楽しくなきゃねと感じたのでした。
第2楽章は、ゆったりと夢見心地。透明感のある弦に導かれて柔らかにピアノが加わり、天上の音楽に癒やされました。
そして切れ目なく第3楽章へ。軽快に力強く歌い上げ、堂々として風格を感じさせました。軽やかに駆け足した後、次第にエネルギーをためていき、オケが高らかに歌い上げてピアノが加わりました。次第に熱を帯びていき、何事にも動じないようなピアノが歌い、興奮と感動のフィナーレへと駆け抜けました。
ブラボーの声とともに大きな拍手が贈られて、オピッツさんと東響の演奏を讃えました。数回のカーテンコールの後、先週と同様にソリストアンコールなしで終演となりました。
舞台裏でのオピッツさんの英語によるコメントを聞き、配信の感想として「とても良かった」をクリックしてサイトを後にしました。
今回も無料で視聴させていただいてありがたかったです。東響に感謝したいと思います。なお、11月26日まで見逃し配信で視聴できますので、皆様方も是非ご視聴下さい。
(客席:PC前、無料) |