りゅーとぴあオルガン・レクチャーコンサート パイプオルガンのふしぎずかん2
  ←前  次→
2023年9月30日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
オルガン・話:石丸由佳
 
メンデルスゾーン:アレグロ・モデラート・マエストーソ

J.S.バッハ:フーガ ト長調 BWV577

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードBWV1007

J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ BWV147
     
M.デュリュフレ :ソワソン大聖堂のカリヨンの主題によるフーガ Op.12

J.シベリウス : フィンランディア

 りゅーとぴあが誇るパイプオルガンについて石丸由佳さんが解説するファミリー向けのレクチャーコンサートです。5月に開催された「パイプオルガンのふしぎずかん」に引き続いての第2回となります。
 前回はオルガンから音の出る仕組みやパイプの種類などを詳しく解説されましたが、今回はオルガニストがオルガンを演奏するためのいろいろなひみつを解き明かすそうです。

 さて、石丸さんは今シーズンでりゅーとぴあの専属オルガニストの4年の任期が終わります。石丸さんのコンサートは、今回のコンサートのほか、12月のクリスマスコンサートと来年3月のラストコンサートを残すだけとなりました。
 石丸さんファンとしましては、任期延長を願いたいのですが、今や日本を代表するオルガニストとなり、全国を舞台に活動されておられますので、見返りの少ない新潟に縛り付けておくことは困難です。
 東京に拠点を持ち、活発な演奏活動をされており、昨夜もサントリーホールで演奏され、そして今日は新潟でのコンサートです。
 新潟市出身であり、私の高校の後輩が、全国的・世界的に活躍されているのを見ますと、新潟県人として、新潟市民として誇らしく思います。今後の更なる活躍を応援したいと思います。

 ということで、石丸さんの演奏を聴く機会はあとわずかであり、今回のコンサートも貴重です。ファミリー向けではありますが、りゅーとぴあのオルガンと石丸由佳さんのファンであるジジイも参加させていただくことにしました。

 雑務を終えて、早めに家を出て、いつもの上古町の楼蘭で昼食をいただきました。いつもの冷やし中華は、今シーズンは終わったとのことで残念でした。
 白山公園を散策しましたが、桜の葉は紅葉し、落葉も始まっていました。少し寂しさも感じましたが、もう本格的な秋の始まりですね。
 りゅーとぴあのインフォメーションで、年末恒例の某コンサートのチケットを買い、やすらぎ堤に出て、川を眺め、日々のストレスで沈んだ気分を癒しました。川面を吹き抜ける初秋の風が、心地よく感じられました。

 りゅーとぴあに戻りますと、ほどなくして開場となり、私も入場しました。ホワイエにはオルガンの模型が置かれ、小型の模型ながらも、きれいな音を出していました。
 席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちましたが、ステージには、スクリーンが設置されていました。客席は親子連ればかりかと予想していたのですが、私のような高齢者も多いようでした。

 開演時間となり、石丸さんが登場。分かりやすい語り口で、前回のコンサートのアンケートで質問が多かった項目についての説明と「オルガニストのひみつ」に関しての解説と演奏が進められました。

 まず最初に前回の演奏会で解説されたオルガンの仕組みについての復習があり、質問が多かったというオルガンの一番上にあって太陽のようなマークが回転してカラカラと音を出す「ツィンベルシュテルン」についての説明があり、メンデルゾーンの曲が演奏されました。実際にオルガンの裏で動く様子がビデオで紹介されて仕組みが良く分かりました。

 続いてオルガニストのひみつの第1として、オルガンに何段もの鍵盤がある理由についての説明がありました。鍵盤ごとに、オルガンのどの部分のパイプが鳴るのか違うんですね。スクリーン投影を交えて、よく分かりました。そして、バッハの「フーガ ト短調」が美しく演奏されました。

 続いて第2のひみつとして、足鍵盤の演奏方法についての解説がありました。演奏に必須のオルガンシューズは、細身で底は滑りやすくなっており、かかとの高さが演奏しやすい高さになっていることなど、興味深く拝聴しました。
 「カエルの歌」を題材にして、足鍵盤での演奏を解説し、観客も一緒に足を動かして、演奏の疑似体験をして楽しめました。
 そして足鍵盤だけでバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番 プレリュード」を演奏し、見事な足捌きがスクリーンに投影され、その演奏技術の高さに魅了されました。

 続いて第3のひみつとして、音色を決めるストップとストップを組み合わせて音色を作り出すレジストレーションの実際についての説明がありました。
 客席からのリクエストによりストップを決めてレジストレーションを行う実演を行い、楽譜を投影しながら、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」を演奏し、レジストレーションの面白さと難しさを実感させてくれました。

 続いて第4のひみつとして、弾いていない鍵盤が一緒に動く仕組みについて、カップラーを操作する実際や、これらのストップ操作やカップラー操作をメモリーに記憶させおき、演奏中に切り替えていることなどを説明してくれました。
 自分で手や足で切り替えたり、アシスタントに切り替えてもらったりするそうですが、切り替えのタイミングなどは楽譜に書き込んでおく必要があり、そのために便利な文房具の説明もありました。
 オルガンによって異なるため、同じ曲を演奏するにも、オルガンごとに楽譜への書き込みを書き直す必要があり、付箋を貼ったり、書いて消せるペンやラインマーカーを使ったりと、オルガニストそれぞれが工夫しているそうです。
 実際にアシスタントが切り替える様子を投影しながら、デュリュフレの「ソワソン大聖堂のカリヨンの主題によるフーガ」が演奏されましたが、オルガン演奏の大変さが理解できました。

 そして、最後にオルガンの音量を変えるシャッターについての説明があり、シャッターの動きを分かりやすくするため、オルガン内に設置された照明がシャッターが開くと見えるという工夫をしてくれて、ホールの照明を暗くして、シャッターの動きを示しながら、シベリウスの「フィンランディア」が演奏されました。実際に音量が変わる様子が良く分かりましたが、それ以上に演奏の素晴らしさに感動しました。 

 入念に準備され、分かりやすい解説は、開館以来りゅーとぴあ通いを続けている私でも目からうろこのことばかりで、大変興味深く、見識を広めることができました。これで私も「オルガン博士」になれますでしょうか。
 レクチャーコンサートということで、演奏よりも解説に主眼が置かれた演奏会でしたが、内容は濃くて、飽きさせず、休憩無しでしたが、時間が経つのも忘れそうでした。

 終演後はサイン会も行われ、サービス満点。このようなオルガニストが新潟から去るのはつらいですが、さらにステップアップしていかれるものと思います。これからも応援していきたいと思います。

 

(客席:2階C6-11 ¥1000)