3月になり、暖かな春の陽気を期待したいところではありますが、連日肌寒い日が続いています。今日は、魅力ある公演がいくつかあったのですが、りゅーと新潟フィルの第6回定期演奏会に参加することにしました。
りゅーと新潟フィルは、新潟フルート界の重鎮である榎本正一さんの指揮の下、2017年12月10日に東区プラザホールで第1回定期演奏会(創立記念特別演奏会)を開催し、以後定期演奏会のほか、「合唱団にいがた」との共演など、新しいオケながらも魅力ある演奏会を重ねてきています。
私がこのオケを聴くのは、昨年5月の「合唱団にいがた」の結成30周年記念のモーツァルト「戴冠ミサ」特別演奏会(りゅーとぴあコンサートホール、指揮:坂井悠紀)以来です。
定期演奏会としては、2022年9月の第5回定期演奏会 (江南区文化会館、指揮:若林康之) は聴きに行けませんでしたので、2022年3月の第4回定期演奏会 (新潟市音楽文化会館、指揮:榎本正一)
以来、2年ぶりになります。
今回のプログラムは、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏シリーズの4回目ということで、前半に交響曲第4番が演奏されます。
ちなみに、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏シリーズは、2019年2月24日の第2回定期演奏会(新潟市音楽文化会館、指揮:榎本正一)で交響曲第1番が演奏され、2020年2月24日の第3回定期演奏会(新潟市音楽文化会館、指揮:榎本正一)で交響曲第2番、2022年3月6日の第4回定期演奏会(新潟市音楽文化会館、指揮:榎本正一)で交響曲第3番「英雄」が演奏されました。
この流れで、第5回定期演奏会(江南区文化会館、指揮:若林康之)で交響曲第4番が演奏されるものと思いましたが、このときはハイドンの交響曲第104番「ロンドン」でした。
そして、1回とばして、今回の第6回定期演奏会で交響曲第4番が演奏されることになりました。指揮は榎本正一さんではなくて、第5回定期演奏会を指揮した若林康之さんです。
また、後半にはピアノ協奏曲第5番「皇帝」が演奏され、ピアノ独奏は、2020年2月の第3回定期演奏会で、ピアノ協奏曲第3番を見事に演奏して感動を誘った高木明子さんの再登場となりました。
今回はなかなか生で聴く機会がない交響曲第4番が楽しみであり、高木さんのピアノにも期待が高まり、早々にチケットを買って楽しみにしていました。その後仕事でお世話になっている某氏が出演されるとのお話をお聞きし、ますますコンサートへの期待が高まりました。
ゆっくりと日曜日の朝を過ごし、簡単な昼食を摂って白山公園駐車場へと車を進めました。今日は、りゅーとぴあ・コンサートホールでは「2023年度りゅーとぴあオルガン講座終了演奏会」、新潟県民会館小ホールでは「新潟中央高校音楽科20期生によるコンサート」が開催され、そちらにも興味があったのですが、同時刻の開催ですので、参加は困難です。でも、いろいろと選択肢があるというのは良いことであり、どの会場も賑わっていただきたいですね。
県民会館とりゅーとぴあでチラシ集めをして、音楽文化会館に行きました。13時を回っていましたが、ロビーにはまだ数人の客のみでした。既に開場待ちの列が延びているかと思っていたのてすが、拍子抜けでした
会館の受付で某コンサートのチケットを買い、ロビーで開場を待っていますと、予定の13時半よりかなり早く開場され、すぐに入場して、中段左寄りに席を取りました。
開演までかなりの時間がありましたので、ロビーで信濃川を眺めていました。ゆったりとした川の流れを見ていますと、心が落ち着くように感じます。
開演時間が近付きましたのでホールに戻りますと、いつの間にか客席はほとんど埋まり、空席を見つけるのが難しいほどで、開演を待つ熱気に包まれていました。大盛況で何よりです。
開演時間となり団員が入場。最後にゲストコンマスの奈良秀樹さんが入場し、全員揃ったところでステージの照明が明るくなり、客席の照明が落とされました。
オケは小型の編成で、通常の並びで、弦5部は、7-6-4-5-2 です。コンマスの奈良さんが立ち上がってチューニングとなりました。
指揮の若林さんが颯爽と登場して、ベートーヴェンの交響曲第4番で開演しました。最初の管楽器の和音から美しく、その後の弦楽アンサンブルもきれいで、幸先の良い上々の出だしでした。
ゆったりと、重厚に曲が始まり、その後のスピードアップもほどほどに、アンサンブル重視の演奏でしょうか。ファゴットを始め、管楽器は抜群のパフォーマンスを発揮し、切れのあるティンパニとともに、躍動感のある音楽が生み出されました。
第2楽章は、緩徐楽章ですので、アンサンブルの質が問われますが、弦楽合奏の音色にアマチュアらしさが垣間見え、頑張っていた管も踏ん張りきれなかった印象がありましたが、それなりにまとめてくれました。
第3楽章は、再び力を取り戻し、安定感と躍動感を感じさせました。そして第4楽章も、軽快に走りぬけ、次第にスピードアップして溜め込んでいたエネルギーを爆発させ、フィナーレの高揚感を創り上げてくれました。
不安定だった場面もありましたが、躍動感を感じさせる演奏は心地良く、終わってみれば、爽快な気分で感動を誘いました。会場からはブラボーの声も上がって、演奏を讃えました。
休憩時間にピアノが設置され、後半は、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。前半同様に、ステージが暗い中に団員が入場し、全員揃ったところで照明が明るくなりました。奈良さんがピアノを鳴らしてチューニングとなりました。
赤いドレスが麗しい高木明子さんと若林さんが登場。椅子に座った木さんが、時間をかけて入念に座る位置などを調整し、指揮者とコンタクトを取って演奏が始まりました。
堂々とした出だしがバッチリと決まり、好演が確約されました。その後の長大なオケだけの演奏もしっかりとしていて、上々の始まりでした。
再びピアノが加わり、輝きのある音と、エレガントさと力強さを兼ね備えた演奏に魅了されました。安定感のあるピアノは、スピード感とパワーに溢れ、バックを支えるオケもエネルギーに満ち、ピアノとともに、躍動感のある熱い音楽を創り上げました。
第2楽章は、私が大好きな緩徐楽章です。まさに神々しい美しさに溢れる楽章ですが、弦楽アンサンブルの精緻さが要求されます。何とか頑張ってくれて、クリスタルのように美しいピアノとともに、癒しを感じさせる天上の音楽を聴かせてくれました。
ギアチェンジして第3楽章へ。パワー溢れるピアノと全力で対峙するオケ。燃え上がるような情熱をみなぎらせ、エンジン全開のピアノとともに、感動と興奮のフナーレへと駆け上がりました。
こんなにも熱い音楽を前にしますと、アンサンブルの乱れなど些細なことでしかありません。胸が高鳴るような感動をいただいて、何の不満がありましょうか。
新潟の市民オケ、新潟のピアニスト、そして新潟(旧下田村)出身で、新潟で活動する指揮者というオールニイガタの力で、これだけの演奏を聴けるというのは喜ばしいことだと思います。
大きな拍手に応えて、アンコールとして、高木さんによりショパンのワルツが情感豊かに演奏され、美しいピアノにうっとりと聴き入りました。
拍手は鳴りやまず、ピアノとオケの合奏により、ラモーの「レ・ボレアド」からの1曲が演奏されました。最後を締めくくるにふさわしい美しい演奏に大きな感動をいただきました。
初めて聴く曲でしたが、なかなか良い曲ですね。こんな曲をアンコールで聴けるなんて、大きな喜びであり、若林さんとオケの皆さんに感謝したいと思います。
この2曲のアンコールも含めて、内容の濃い演奏会であり、大きな満足感と感動をいただいて終演となりました。
それにしましても、木さんのピアノは素晴らしかったです。こんな演奏家が新潟にいるなんて喜ぶべきことであり、もっと演奏を聴く機会があると良いですね。
そして、りゅーと新潟フィルの皆さんの熱演も賞賛したいと思います。「皇帝」もさることながら、交響曲第4番の魅力を再確認できて良かったです。
来年3月の第7回定期演奏会は、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏シリーズの順番からすれば、交響曲第5番になるはずですが、5番、6番、7番という定番曲を飛ばして交響曲第8番を演奏するとのことです。他にはハイドンの交響曲第101番「時計」と吉松隆の弦楽合奏曲「鳥は静かに」が演奏されます。これも楽しみですね。更なる飛躍を祈り、蔭ながら応援したいと思います。
大きな感動を胸に外に出ますと、雪交じりの強風が吹き荒れていて、コートのフードを被って、足早に駐車場へと向かいました。風は冷たくても、良い音楽を聴いた心は熱いままでした。
(客席:12-8、¥1000) |