新潟メモリアルオーケストラ第32回定期演奏会
  ←前  次→
2023年10月1日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:工藤俊幸
オルガン:室住素子
 
ロビーコンサート
 草野華余子:紅蓮華
 高嶋圭子・編:ふるさとのうた
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番 第1楽章

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」

サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」

(休憩20分)

エルガー:エニグマ変奏曲

 新潟メモリアルオーケストラは、1991年に新潟大学管弦楽団OBにより新潟大学メモリアルオーケストラとして結成され、その後OB以外も参加するようになり、新潟メモリアルオーケストラと改称して現在に至ります。
 毎年秋に無料の定期演奏会を開催しており、私も2002年の第12回定期演奏会以来、度々聴かせていただいています。
 弾ける曲ではなく弾きたい曲を演奏するというのが素晴らしく、アマオケらしからぬ大曲を取り上げてくれれるのが魅力であり、2008年のマーラーの交響曲第3番など、新潟のような地方都市ではなかなか聴けない曲を演奏してくれるのは敬意を持って賞賛したいと思います。

 2012年までは山岡重信先生との個性的な演奏で楽しませてくれましたが、山岡先生が退任され、2013年から竹内公一先生に代わり、2016年は桐山 彰先生、2017年からは現在の工藤俊幸先生になりました。
 そして、2020年にはマーラーの交響曲第7番が演奏されることになり、大いに期待していたのですが、残念ながら新型コロナ禍で消えてしまいました。2021年から定期演奏会が再開されましたが、マーラーの演奏は無理のようで、実現していません。
 2022年6月に、個性的な指揮でこのオケの一時代を築いてくれた山岡先生が亡くなられ、2022年9月の定期演奏会では、山岡先生を偲ぶ追悼演奏が行われました。
 
 前置きが長くなってしまいましたが、これまで毎回聴かせていただいていますので、今回も聴かせていただくことにしました。
 今日は、いつも以上にたくさんの催しがあり、特に古町地区では新潟音楽祭や Furumach Classic Festa が開催されており、街は大賑わいとなっています。行きたい公演がたくさんあって、日にちがずれてくれたら良いのにと嘆き、身体がひとつしかないことが悔やまれました。

 ということで、だいしほくえつホールで新潟音楽祭の2公演を聴き、ルフル広場で新潟市消防音楽隊のステージを楽しんで、古町通りを歩いてりゅーとぴあへと向かいました。

 りゅーとぴあに入りますと、開場待ちの列ができており、私も最後尾について入場し、2階正面に席を取りました。
 13時15分からロビーコンサートがありましたので、3階バルコニーに上がって、開演を待ちました。ここからロビーコンサートを聴くのも久しぶりです。ようやく日常を取り戻したんですね。
 時間となり、ロビーコンサートの開演です。まずは、弦楽四重奏による演奏で「紅蓮華」です。ヴィオラで始まって四重奏となり、軽快に演奏が始まりました。この曲も弦楽四重奏版で聴きますと味わいが違いますね。
 次は、トロンボーン四重奏で「ふるさとのうた」です。童謡の「ふるさと」や「むらまつり」など、思わす口ずさみたくなるような唱歌がメドレーで演奏されました。柔らかなトロンボーンが、残響豊かなホワイエにこだまし、ほんわりとした温かな空気に包まれました。
 そして、最後は弦楽四重奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4番の第1楽章です。演奏技術の高さに裏打ちされた安定感のある演奏で、美しいアンサンブルにうっとりと聴き入りました。緊張感を保ちながらも、流麗な音楽が溢れ出て、ロビーコンサートにはもったいなく思えるほどで、全曲を聴きたくなりました。

 ホールに戻りますと、ステージ上では団員が練習をされており、オルガン席にはすでに明かりが付けられていました。客の入りはほどほどで、混雑しすぎることもなく、ゆったりと楽しむことができました。今日はイベントが重なっていますので、分散したものと思います。
 開演時間が近づくに連れて団員が次々と現れて音出しを始めました。コンミスもも含めて全員が音出しして賑やかになりました。拍手の中に団員が入場するのが通例ですが、ばらばらに入場するのが新潟メモリアル方式です。

 開演時間となり、場内が暗転してコンミスが立ち上がり、チューニングとなりました。弦は12型ですが、コントラバスは9人と、ちょっと変則的な編成です。
 工藤さんが登場して、サン=サーンスの「死の舞踏」で開演です。午前0時を告げるハープに始まり、コントラバスのピチカートからコンミスのソロへと続いて、演奏にグイグイと引き込まれました。骸骨が踊り狂うおどろおどろしい情景が、美しいアンサンブルと迫力ある演奏で眼前に広がり、オーケストラを聴く喜びを感じさせてくれて、大きな満足感をいただきました。

 団員の入れ替わりがあり、ステージが整えられ、第1ヴァイオリンば13人になりました。続いてはサン=サーンスの交響曲第3番です。通常のコンサートではメインになるべき曲が、いきなり前半で演奏されました。
 新潟でこの曲を演奏するときは、専属オルガニストが演奏するのが通例ですが、今回は違います。昨日石丸さんが来ていましたので、頼めば良かったのにと、部外者は勝手に思うのですが、石丸さんは忙しい人ですので、無理だったのでしょう。わざわざ室住さんが招聘されましたが、素晴らしいオルガニストですので、これはこれで、ありがたいことです。
 工藤さんが登場し、室住さんがオンガン席に着き、演奏開始です。静かな序奏から低弦がピチカートを刻み、弦がせわしなく、早足でリズムを刻み、緊張感が漂う第1楽章の第1部を速めのスピードで駆け抜けました。
 静けさが訪れて第2部となり、オルガンの重低音がホールに響き渡りました。このゆったりとした音楽は、疲れた心に癒しを与え、その美しい音楽に天上へと誘われるかのようでした。
 そして激しく切れの良い第2楽章第1部。アンサンブルの乱れもなく、スピード感に溢れ、勢い良く疾走します。ピアノが加わって中間部を抜けて、再びエンジン全開。
 つかの間の静けさが訪れて小休止。そしてオルガンの全奏で第2部へ。ピアノ連弾とともに主題が演奏され、オルガンが加わって、壮大に音楽が奏でられました。
 静けさを取り戻して、再びアクセル全開の機関車が走り抜けるが如く、スピードとエネルギーを増して、シンバルとティンパニが激しく打ち鳴らされました。
 緩急を繰り返して、壮大に力強く金管が鳴り響き、オルガンとともにエネルギーを増していきます。ドシラソファミレドと下降音階を奏で、強烈なティンパニの打撃とオルガンの強奏とともにフィナーレを迎えました。

 多少の荒っぽさも感じましたが、パワー溢れる演奏は晴れ晴れとした爽快感を感じさせ、この上なく気持ちよい音楽でした。
 ホールを飽和させるような大音響は、理屈ぬきに精神的高揚をもたらしました。音量豊かにパワフルに鳴り響くオルガンと、それを超越するエネルギーで燃え上がるオーケストラ。
 アマオケですので、パートによっては多少のミスは垣間見えましたが、それを打ち消すだけの躍動感とスピード感で圧倒され、ホールは感動と興奮で満たされました。
 もうこれで終わっても良いかと思いましたが、まだ前半が終わっただけなのでした。カーテンコールで室住さんに花束が贈られて休憩に入りました。

 休憩後の後半は、エルガーのエニグマ変奏曲です。前半と同様に、団員がばらばらにステージに現れて音出しを始め、全員揃って賑やかになったところで場内が暗転し、チューニングとなりました。オルガン席には室住さんが着席しました。
 工藤さんが登場して演奏開始です。弦楽アンサンブルで演奏が始まり、木管が加わってエニグマの主題が申しわけ程度に短く演奏された後、第14変奏まで、次々と変奏が続きました。
 各変奏は多彩で、硬軟様々。短いですが、いずれも美しく聴き応えがあります。数ある変奏の中でも、やはり一番有名で、単独で演奏される機会が多い第9変奏の「ニムロッド」は美しいですね。迫力ある第11変奏に引き続くチェロ独奏に始まる第12変奏も美しく、うっとりと聴き入りました。
 そして最後の第14変奏はオルガンも加わって、オケのパワーも全開となり、壮大に盛り上がってフィナーレを迎えました。
 前半のサン=サーンスに負けないくらいの興奮をもたらし、力の限りに拍手して、その素晴らしいパフォーマンスを讃えました。
 工藤さんとオケとが創り上げた一期一会の感動の音楽に出会えた喜びを噛み締め、このような演奏を無料で聴かせてくれたオケの皆さんに感謝したいと思います。

 良い音楽を聴いて気分爽やか。つかの間ながらストレスも忘れ、明るい気分で白山神社を抜けて駐車場へと小走りしました。
 新潟音楽祭は夜までやっていますので、はしごしようかと思っていたのですが、良い演奏を聴いた余韻を味わいたく、大人しく帰ることにしました。

 

(客席:2階C5-11、無料)