ラフマニノフと魅惑のスクリーンミュージック
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2023年7月17日(月) 14:00 見附市文化ホール アルカディア 大ホール
指揮:船橋洋介
管弦楽:東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:及川浩治
 
ロッシーニ:ウィリアム・テル序曲 より スイス軍隊の行進

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

(休憩20分)

ジョン・ウィリアムズ:スター・ウォーズ から メインタイトル
サミー・フェイン:慕情
エンニオ・モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス
ヘンリー・マンシーニ:ムーン・リバー
レナード・バーンスタイン:ウェスト・サイド・ストーリー より
 アイ・フィール・プリティ〜マリア〜サムシングズ・カミング〜
 ワン・ハンド、ワン・ハート〜クール〜アメリカ

(アンコール)
ハロルド・アーレン:オーバー・ザ・レインボウ
ヘンリー・マンシーニ:ひまわり

 

 今日は「ラフマニノフと魅惑のスクリーンミュージック」と題された肩の凝らないコンサートを楽しみたいと思います。
 この公演は、文化庁の助成によるコロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業(アートキャラバン2)の一環であるオーケストラ・キャラバンに位置付けられており、低料金で聴けるのが魅力です。

 見附市の音楽アドバイザーを務め、新潟ではお馴染みの船橋洋介さんの指揮で、ピアノの及川浩治さんが共演します。オーケストラは東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽楽団ですが、初めて聴くオケであり、このオケにも興味がありましたので聴きに行くことにしました。
 
 さて、指揮の船橋さんは、2007年〜2008年まで新潟交響楽団を指揮しておられ、何度か聴かせていただきました。その後は新潟市への来演はありませんが、長岡市や見附市とは音楽アドバイザーとして密接な関係を維持しておられ、長岡市での2008年4月のペーテル・ブノワの「HOOGMIS(盛儀のミサ)」日本初演、2012年5月の K.ジェンキンスの「平和への道程」の全曲演奏の日本初演を聴かせていただき、2010年11月の東京フィル長岡特別演奏会なども聴く機会がありました。
 一方、及川さんの演奏は、2009年12月のりゅーとぴあでのリサイタルと2019年2月のサントリーホールでのリサイタルを聴いたことがありますが、ダイナミックな演奏に圧倒された記憶があります。協奏曲の演奏は、随分前になりますが、2002年6月にベートーヴェンの「皇帝」を聴いたことがありました。
 この両者と東京ユニバーサル・フィルがどのような演奏を聴かせてくれるのか楽しみであり、チケットを購入しましたが、行けないことも予想されましたので、S席でなくA席を購入しました。

 今日は「海の日」の休日です。先週の雨続きがうそのように、今日は青空になり、その分気温はぐんぐんと上がり、猛暑になりました。
 11時過ぎに家を出て、見附へと向かいました。高速は使わず、国道の裏道を使って進みましたが、思いのほか早く着き、時間の余裕がありましたので、近くの某温泉でひと休みし、コンビニで昼食を調達してアルカディア入りしました。
 駐車場が混み合う前に車をとめて、車中でお昼をいただき、頃合いをみて館内に入りますと、早めに開場されており、席に着いてこの原稿を書きながら開演を待ちました。
 ステージにはこのホール自慢のベーゼンドルファー・インペリアルが設置されており、団員が音出しをしていました。安いA席にしましたが、前のブロックの最後列の左端で、眺めも良く、なかなか良い席でした。客席は満席となり、熱気に包まれていました。

 開演時間となり、団員が入場。弦は10型と小型で、男性は白ジャケットです。コンミスが立ち上がってチューニング。白ジャケットの船橋さんが登場して開演です。

 挨拶代わりの1曲目は、ウィリアム・テル序曲です。ホールばデッドで直接音しか聴こえませんが、オケは音量豊かで少々粗っぽく、賑やかに感じました。ホールに音が飽和して聴こえ、潤いに欠けましたが、躍動感のある演奏で盛り上げてくれました。

 ピアノの蓋が開けられて、及川さんと船橋さんが登場して、2曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番です。この手の名曲コンサートですので、第1楽章だけかなと思っていましたが、全曲演奏してくれました。
 1曲目と同様に、オケの温色には濁りがありました。ピアノも音量豊かでしたが濁って聴こえました。ベーゼンドルファーらしからぬ音色で、キンキンする響きが混ざり、調律がうまくなかったような印象を受けました。私の席が悪いのか、あるいは私の耳のせいかもしれません。
 響かないホールに合わせた及川さんの音作りなのかもしれませんが、強靭な打鍵からパワフルな音が生み出され、それが粗っぽい演奏に感じさせてしまったようにも思います。
 音色的問題を除けば熱のこもった演奏であり、躍動感に溢れていました。予想通りに、第1楽章終了後に大きな拍手が贈られましたが、日頃クラシック音楽に馴染みがない人が多く来られているようで、そういう意味ではコンサートの趣旨としては成功だったと思います。
 ロマンチックなはずの第2楽章も、賑やかに鳴らしすぎて、今ひとつ感傷に涙するには至りませんでした。まあ、私の個人的思い入れでしかありませんが。
 第3楽章もパワフルに演奏が進みました。ダイナミックな及川さんのピアノに負けじと、全身で大きく指揮をする船橋さんに応えて、オケも音量豊かに、ゴージャスなオーケストラサウンドで聴衆を魅了しました。
 ホールを飽和させる大音量で、オーケストラを聴いたという満足感は得られましたが、音色的には私好みではなく、りゅーとぴあで聴く東響の豊潤なサウンドとは別物でした。ソリストアンコールを聴きたいところでしたが、さすがにありませんでした。

 休憩後の後半はスクリーンミュージックです。船橋さんは青いジャケットに着替えて登場。ステージ左手に移動されたピアノの演奏は、何と上着を脱いで白シャツ姿になった及川さんでした。
 船橋さんの挨拶と及川さん、オーケストラの紹介があり、以後船橋さんによる曲目紹介により演奏が進められました。

 1曲目は、「スターウォーズ」のメインタイトルです。ホールいっぱいに音量豊かに響き渡るオーケストラサウンドはゴージャスであり、オーケストラを聴く醍醐味をダイレクトに示してくれました。

 2曲目は、「慕情」(Love Is a Many-Splendored Thing)を情感豊かに、しっとりと胸に迫るように演奏して感動を誘いました。

 3曲目は、及川さんのピアノソロに始まる「ニュー・シネマ・パラダイス」で、編曲も素晴らしく、これもうっとりと聴き入りました。

 ここで船橋さんが及川さんを中央に呼び出して、2人による楽しいトークがありました。2人は同じ仙台の大学(宮城学院女子大学)で教授として音楽の指導をしており、研究室もすぐ近くなんだそうですね。

 4曲目は、「ムーン・リバー」を美しく演奏し、情感に溢れるゴージャスなサウンドに酔いしれました。劇中で歌うオードリー・ヘップバーンの声域に合わせて作曲されたという解説も良かったです。

 そして最後は「ウエスト・サイド・ストーリー」です。劇中の7曲が、トゥナイトをつなぎに使いながらメドレーで演奏されましたが、切れのよいダイナミックなサウンドで、映画の世界が眼前に広がるかのようでした。

 大きな拍手に応えて、アンコールに「オーバー・ザ・レインボウ」が美しく演奏されて、ホールは感動に包まれました。
 これで終わりかと思いましたが、船橋さんがひまわりの花を持って登場し、世界平和を祈って「ひまわり」を演奏し、しっとりとした演奏が胸に迫り、大きな感動とともに終演となりました。

 肩のこらない名曲のコンサート。音響的問題は別にして、大いに楽しませていただきました。これで2000円とは申し訳ないほどです。
 高速を使わずに家から47km。ちょうどよいドライブにもなって良かったです。早めに着いて温泉にも浸かれましたし、良い海の日を過ごしました。

  

(客席:13-1、A席: \2000)