今日は久々の東京出張。17時からの会合に出なければならなかったのですが、早めに上京して、仕事前にコンサートをひとつ聴くことにしました。とはいえ選択肢は少なく、開演時間、移動時間等を考慮して、必然的に選んだのがこのコンサートです。
「名曲の花束」と題された、文字通りの名曲コンサートで、プログラム的には新味がなく、どうしようかと悩みましたが、気軽に楽しく聴けそうでしたので、チケットをネット購入しました。
私が及川さんのコンサート聴くのは、コンチェルトでは2002年6月にワイマール州立歌劇場管弦楽団との共演を聴いたことがありましたが、単独の演奏会は2009年12月以来2回目になります。前回も名曲コンサート的内容でしたが、「激しく情熱がほとばしる演奏」という感想であり、今日もどんな演奏を聴かせてくれるか期待は高まりました。
某所で昼食を取り、溜池山王駅からの長い通路を通ってサントリーホールに到着。しばし時間調整し、開場のオルゴール演奏とともに入場しました。
隣の小ホールではハープの吉野直子さんのリサイタルが同時開催され、ホールはたくさんの人で賑わっていました。
早めに着席しこの原稿を書き始めました。今回の席は2階のLCブロック。なかなかいい席が取れて良かったです。たまたま隣が空席でゆったりできました。客の入りはかなり良く、老若男女でいっぱい。年齢幅はかなり広いようです。
開演時間となり、茶髪の及川さんが登場し、解説を交えながら演奏が進められました。曲目はプログラムを見ればわかるように、種々雑多。曲目解説をするのですが、脱線ばかりで、演奏付のトークショーという表現がふさわしいかもしれません。
各作曲家ともプログラムにない曲も演奏しながら解説し、モーツァルトでは短調の話になって、短調のソナタ(8番?)やドンジョバンニなどを演奏し、ベートーヴェンでは、皇帝を長々と演奏したり運命のさわりを演奏したりと、サービス精神には頭が下がります。
その分時間はどんどん過ぎ、前半が終わったのが15時15分。プログラム最後のペトルーシュカが終わる頃には16時半となり、ここでタイムアップ。次の予定に間に合わなくなるため、アンコールを聴く間もなく、ホールを後にしました。
演奏は緩急の幅やダイナミックレンジを大きく取り、歌わせどころは思いっきり歌わせる及川流とでも言うべき演奏で、これはこれで大いに楽しめました。
月光の終楽章は猛スピードで乱れまくり、オリジナルより音符の数が多くて聴き映えをアップしたようなブゾーニ編のラ・カンパネラでは曲芸でも見るかのようでした。中でも一番聴き応えがあったのは、ペトルーシュカでしょうか。
ピアノといえば、ちょうど1週間前に、柏崎でツィメルマンの神がかり的な、正に芸術と言うにふさわしい研ぎ澄まされた演奏を聴いたばかりなのですが、それとは対極的な、“楽しくなければ音楽じゃない”的な、精神を集中することなく気兼ねなく聴ける心地よい演奏でした。娯楽として、音楽ショーとして一級品だと思います。こういうコンサートをきっかけにクラシック音楽に親しんでくれる人が増えると良いですね。
また、ホールの音響は響きすぎで、温泉旅館の大浴場的響きに感じました。決して悪い音ではなく、日本でも最高レベルの音響なのでしょうが、柏崎のアルフォーレのクリアな音を聴いた後では、さすがのサントリーホールも聴き劣りしてしまいます。やはり、ツィメルマンが世界の3指に入ると絶賛するだけはあるんだなあと再認識しました。
内容も時間もボリューム満点の超お得な演奏会であり、値段分は十分に楽しめました。ボリュームがありすぎて、最後まで聴けなかったことだけが心残りでした。
及川さんは11月3日に再びこのホールでリサイタルを開催するそうで、先行予約を受け付けていました。次回の演目は、ベートーヴェンの5大ピアノソナタと「エリーゼのために」だそうです。きっと熱い演奏を聴かせてくれることでしょう。
終演がこんなに遅くなるとは予想せず、アンコールを聴けなかったのは心残りでしたが、大急ぎでアーク・カラヤン広場を駆け抜けてタクシー乗り場へ急ぎ、品川での仕事へと向かいました。
と、帰りの新幹線の中でビールを飲みながらこの原稿を書き上げたところで長岡に到着しました。新潟駅に着き、空を見上げますと月が出ていました。明日はいい天気かなあ・・。
(客席:2階LC-4、S席:¥5000) |