NHK-FMの音楽番組「きらクラ!」でパーソナリティーを務めたタレントのふかわりょうさんとチェリストの遠藤真理さんが、音楽仲間たちとトークを交えて贈るバラエティコンサートです。
内容からして、初心者向けの肩の凝らない名曲コンサートと思われ、私のようなジジイが新潟から駆け付けることもないように思えましたが、出演者としてメゾソプラノの林美智子さん、ヴァイオリンの川久保賜紀さん、ピアノの三船優子さんという実力者が名を連ねており、その美しいお姿も思い浮かんで、煩悩だらけのジジイはこれは聴くしかないと思い立ち、後先考えずにネットでチケットを買ってしまったのでした。
チェロの遠藤真理さんは、放送では演奏を聴かせていただいたことがありますが、これまで生での演奏は聴いたことがなく、どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。
メゾソプラノの林美智子さんは、これまでに、2011年3月の幸田浩子さんとのコンサート、2016年4月の武満徹没後20周年記念のコンサートと2回新潟でのコンサートを聴かせていただいており、5年半ぶりとなります。
ヴァイオリンの川久保賜紀さんは、2002年12月に東京で東京フィルとの協奏曲を聴いたのが最初ですが、その後新潟で東京交響楽団との共演が、2006年5月、2013年9月、2020年9月と3回あり、新潟でもおなじみといえましょう。
ピアノの三船優子さんは、2011年11月の新潟交響楽団創立80周年記念演奏会でラプソディ・イン・ブルーを演奏したのが今も記憶に残っています。その後は、2012年9月の五泉市でのリサイタルを聴いて以来であり、9年ぶりになります。
ということで、チケットを早々に買っていたのですが、雑務があって多忙。昨夜までどうしようかと悩みましたが、調整を図り、予定通り出かけることにしました。
今日は朝起きたら快晴の空。絵に描いたような秋晴れです。与えられた業務をこなし、晴れ渡った青空の下、いつもの分水・与板経由で、気分爽やかに車を走らせ、予定より早くリリックホールに到着しました。
ほどなくして開場となり、私が一番に入場して席に着き、この原稿を書き始めました。ステージにはスタインウェイとチェロ用の椅子と譜面台がスタンバイして開演を待っていました。
開演時間が近付くにつれ、次第に席は埋まり、中央のブロックの席はびっしりと混みあっていましたが、サイドのブロックや後方は空席が目立ちました。このような豪華メンバーなのにもったいなく感じました。
開演時間となり、ピンクのドレスの遠藤さんが登場し、バッハの無伴奏で開演しました。ホールいっぱいに音量豊かに朗々と響くチェロ。演奏の良さもさることながら、ホールの響きの良さに、今更ながら感動しました。
ここで、今日のコンサートのタイトルである「うたた寝」ということで、パジャマ姿のふかわさんが枕片手に登場して挨拶があり、以後演奏者との楽しいトークをはさみながら、プログラムが進められました。
青緑色のドレスの三船さんが登場し、2曲目はドビュッシーの「夢」です。ピアノの豊潤な響きが心地よく、まさに夢の世界で癒されました。
3曲目は、遠藤さんと三船さんで、エルガーの「愛の挨拶」です。ヴァイオリンの定番曲ですが、調が異なるチェロ版も良いですね。そういえば、日曜の午後によく聴いていた「きらクラ!」のエンディングで、遠藤さんのチェロによる演奏が流れていましたね。
紺色のドレスの川久保さんが登場し、フメクリストも加わって、4曲目は、ピアノ三重奏によるラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。名手3人による美しい演奏にうっとりしました。そういえば、この曲は先週、トリオ・ベルガルモでピアノ三重奏版を聴いたばかりでしたが、それぞれの味わいがありすね。
黒いドレスの林さんが登場し、5曲目は、ピアノ三重奏をバックに、モーツァルトの「フィガロの結婚」から「恋とはどんなものかしら」が歌われました。さすがに日本が誇るメゾソプラノ。美しい歌声に魅了されました。
川久保さんと遠藤さんが下がって、6曲目は三船さんと林さんによる「歌の翼に」です。林さんのふくよかでありながらも爽やかな歌声にうっとりと聴き入りました。(林さんがイアリングを落とすというハプニングもありましたが・・)
前半最後は、遠藤さんが加わって、ピアノとチェロをバックに、サティの「ジュ・トゥ・ヴ」が歌われました。途中はチェロの独奏も挟んで、フランスの洒落た雰囲気も感じさせて、林さんの魅力が全開でした。
休憩後の後半最初は、三船さんのピアノ独奏で、ショパンの「ノクターン9-2」が演奏されました。あまりムーディに甘くなりすぎない演奏で良かったです。
川久保さんが登場して、後半2曲目は、クライスラーの「美しきロスマリン」です。三船さんのピアノをバックに、大きくアクセントを付けた演奏で、川久保流に味付けされて新たな曲の魅力を感じさせました。
三船さん、川久保さんが退場し、後半3曲目は、遠藤さんによる「サリー・ガーデン」です。「きらクラ!」の人気コーナーに習って、ふかわさんの詩の朗読の後に、遠藤さんの演奏が行われましたが、この演奏が素晴らしいものでした。スコットランドの空気感が醸しだされ、チェロの音がバグパイプに聴こえるという貴重な体験をすることができました。
三船さんと林さんが加わり、4曲目は、「サウンド・オブ・ミュージック・メドレー」です。林さんが「サウンド・オブ・ミュージック」を日本語で高らかに歌い、遠藤さんが「私の好きなもの」を独奏し、林さんが「エーデルワイス」を歌い、ふかわさんのギャグを交えて「ドレミの歌」を観客の手拍子も交えて楽しく歌い、「山に登ろう」を高らかに歌って感動のミュージカルを閉じました。
そして、川久保さんが加わって、最後の2曲は全員での演奏です。「星に願いを」をしっとりと情感豊かに歌って、林さんは右手に退場。
最後は「花のワルツ」です。ピアノ三重奏での素晴らしい演奏に、途中から林さんが登場してヴォカリーズで加わり、曲を大きく盛り上げて、感動の中に予定のプログラムは終了となりました。
大きな拍手に応えて、アンコールにはふかわさんだけ登場。なんとふかわさんがピアノで「トロイメライ」を演奏してくれました。ゆっくりながらも音を間違うこともなく、しっかりと演奏し、驚きと感動を誘いました。
そして全員がステージに登場し、最後の最後は、ふかわさん作曲(上柴はじめ編)による「Waltz in August」です。ふかわさんはピアノ連弾で参加し、最後を締めくくるに素晴らしい曲と演奏で感動しました。
エンディングでは、演奏が続く中に、まず林さんが去り、遠藤さんが去り、川久保さんが去り、三船さんが去り、最後はふかわさんのピアノだけになり、照明が落とされて終演となりました。ハイドンの交響曲でこういう趣向のものがありましたが、いい演出でした。
豪華な出演者で、このような細切れの名曲コンサートはもったいなく感じてしまいますが、素晴らしい演奏を聴かせてくれました。ふかわさんのMCも洗練されており、気持ちよいものでした。ピアノ演奏を聴かせてくれましたし、最後は自作曲まで聴かせてくれて驚きました。
うたた寝する間もなく、楽しく過ごした2時間でした。外に出ますと、日は落ちようとしていましたが、青空が広がり、気分は爽やかです。沈む夕日と競争しながら、広域農道を快適に走り、家路に着きました。
(客席:12-10、¥4000) |