第14回巻地区町づくり音楽文化講座 秋の音楽会 トリオ・ベルガルモ
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2021年10月30日(土)14:00 新潟市巻文化会館
トリオ・ベルガルモ
ヴァイオリン:庄司 愛、チェロ:渋谷 陽子、ピアノ:石井 朋子
 

第1部
ラフ:カヴァティナ
ブラームス:ハンガリー舞曲第6番
ベートーヴェン:ソナタ「悲愴」より 第2楽章
ハーゲン:ピアノ三重奏曲 第3番 「Wayfaring Stranger」
       1.Mazurka
       2.Wayfairing Stranger
       3.Fandango
       4.Aubade and Variations

(休憩15分)

第2部
ドビュッシー:ピアノ三重奏曲 ト長調
       1.Andantino con allegro
       2.Acherzo-Intermezzo
       3.Andante espressivo
       4.Finale(Apassionato)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:ボレロ

(アンコール)
サン=サーンス:白鳥



 

 今週は天候が優れず、気温も下がって、晩秋から初冬を思わせる天気が続いていました。このまま冬に向かうのか心配しましたが、今日は天候が回復し、青空が広がって、気持ち良い秋晴れになりました。

 今日は、本当は新潟市音楽文化会館で行われる「新潟県音楽コンクール受賞者コンサート」に行く予定で、チケットも買ってありました。しかし、その後にこのコンサートがあることを市の広報で知り、どっちに行くか、最後まで悩みました。
 家を出るまで決めかねていましたが、ベルガルモの3人の顔が思い浮かび、中央区ではなく、西蒲区へとハンドルを切りました。

 さて、このコンサートは、西蒲区の巻地区まちづくり協議会主催の音楽文化講座で、今回は第14回になります。これまで何回か聴かせていただいており、昨年の第13回も参加させていただき、そのときもトリオ・ベルガルモの出演でした。
 一般市民向けの文化講座のはずなのですが、ベルガルモの皆さんは、単なる名曲コンサートにすることはなく、本格的なプログラムで挑んでこられますので、侮れないコンサートです。500円(当日券600円)で、素晴らしい演奏を聴けますので、大変お得なコンサートと言えましょう。
 トリオ・ベルガルモは、12月にマルタケホールでコンサートを開催されますが、メインとなるプログラムはほぼ同様です。そのコンサートを先取りできる絶好の機会でもあります。

 ということで、某所で昼食を摂り、ちょっと古ぼけて昭和の香りがする巻文化会館へと向かい、当日券を買って入場しました。予定開場時間より早く入場させていただき、8列目正面の良席を確保しました。ステージには、このホールが誇るスタインウェイ。次第に客席は埋まり、まずまずの入りでしょうか。

 開演時間となり、いつものように主催者の挨拶の後、司会者に紹介されて美しきベルガルモの3人が登場。庄司さんは鮮やかな紫のドレス、渋谷さんは黒、石井さんは黒に金色の模様のドレスです。

 ラフの「カヴァティナ」で開演しました。ちょっと繊細なヴァイオリンとふくよかに響くチェロ、控えめに優しく奏でるピアノ。三位一体となって、ゆったりと、美しくメロディを歌わせ、ベルガルモの世界へと誘われました。

 ここで庄司さんによる挨拶があり、以後庄司さんによる曲目紹介により演奏が進められました。結局最後まで渋谷さんと石井さんは一言もお話になりませんでした。

 2曲目は、配布されたプログラムにはなかったブラームスのハンガリー舞曲第6番です。互いにアイコンタクトしながら、軽快に演奏されました。

 3曲目は、ベートーヴェンの「悲愴」の第2楽章です。お馴染みのメロディをチェロからヴァイオリンへと引き継ぎ、音量を抑えたピアノとともに、美しい音楽を奏でました。

 前半最後は、フメクリストが登場して、ハーゲンのピアノ三重奏曲第3番です。こういうコンサートでも、こういう曲を持ってくるのがベルガルモの真骨頂と言えましょう。
 アメリカの作曲家ハーゲンにより2006年に作られた現代曲ですが、アメリカの民謡をモチーフに作られているそうで、第1楽章から耳に優しく、心に染みる美しいメロディにうっとりしました。
 曲名にもなっている第2楽章は、どこかで聴いたかのように耳に馴染んできます。どういうアメリカの民謡を基にしているのか知りませんが、どこかで聴いているのかも知れません。「あ、これは久石譲だ!」と心の中で思いながら聴いていました。
 第3楽章は、ヴァイオリンのピチカートと、怪しげなチェロとピアノで始まり、さすがに現代曲らしい空気感に変わりましたが、馴染みにくいこともなく、いい味付けになっていました。
 第4楽章は、癒しを感じさせる美しいメロディを歌わせた後は変奏曲となり、いろいろと形を変えて奏でられ、胸を打つ音楽となりました。
 現代曲らしからぬ美しい曲で、この曲を知ることができただけでも今日来た甲斐があったと言えましょう。こういう曲を探し出し、演奏してくれるベルガルモはさすがです。

 休憩後の後半は、再び直球勝負で、ドビュッシーのピアノ三重奏曲です。第1楽章は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロと順にメロディが引き継がれて始まり、明るく美しいメロディが絡み合い、うっとりと聴き入りました。
 第2楽章は、弦のピチカートで始まり、ちょっとおどけたユーモア感も感じさせ、弾むような心地良さを感じさせました。
 第3楽章は、ゆったりと朗々と歌うチェロが美しく、大きな波のうねりのように歌わせ、ヴァイオリンとピアノと共に心に優しく響いてきました。
 第4楽章は、切なく胸に迫るメロディが、心の琴線を揺らします。小さな水の流れが川となり、大河となるかのように、雄大に歌いあげてフィナーレを迎えました。
 ドビュッシーがこういう曲を作っていたとは知りませんでした。ちょっと甘くて感傷的なメロディは、複雑さや深遠さはなく、単純でわかりやすく、馴染みやすく思いました。調べてみますと、ドビュッシーが18歳のときの作品で、未完のまま自筆譜が失われていて、残されていたチェロパートの写譜を元に1986年に出版されたそうです。聴きやすくて、いい曲でした。

 大曲の後は、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。ピアノ三重奏曲全曲を聴いた後には良質のデザートと言えましょう。美しいハーモニーにうっとりと聴き入りました。

 そして最後は、ベルガルモ名物といえるラヴェルの「ボレロ」です。弦をスティックで叩いてリズムを刻み、ピアノがメロディを奏で、その後ヴァイオリン、チェロが絡み合い、ひたすらクレッシェンドし続けて、たった3人の音楽とは思えない盛り上がりの中で演奏を終えました。もう何度も聴かせていただいていますが、編曲の妙もあって毎回楽しませてくれます。

 賑やかな司会者が登場して3人に拍手が贈られ、アンコールにサン=サーンスの「白鳥」がしっとりと演奏され、静かな感動の中で終演となりました。

 毎回恒例ですが、観客代表3人の手によって、3人に小さな花束とお土産が渡され、3人が退場し、元気で明るい司会者の挨拶があって、今年の第14回音楽文化講座はお開きとなりました。また来年もやるそうですので、期待したいと思います。

 明るい気分で外に出ますと、まだ青空が広がっていました。ハーゲンとドビュッシーのピアノ三重奏曲を聴けたのが今日の収穫でした。
 これらは12月のコンサートのプログラムにも入っていますので、皆さんも是非お聴きください。正直申し上げれば、今日の演奏ではアレッ?と思わせる場面も無きにしも非ずで、12月にはさらにブラッシュアップし、完成度を高めた演奏が期待できるものと思います。

 せっかく巻まで来ましたので、岩室温泉に足を伸ばし、一風呂浴びて家路に着きました。

 
(客席:8-15 当日券:\600)