群馬交響楽団80周年記念特別演奏会
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2025年11月30日(日)16:00 高崎芸術劇場 大劇場
指揮:飯森範親
ソプラノ:小林沙羅、森谷真理、森野美咲、メゾソプラノ:富岡明子、十合翔子
テノール:宮里直樹、バリトン:青山 貴、バスバリトン:久保和範
合唱:群馬交響楽団合唱団(合唱指揮:阿部純)、児童合唱:藤岡市立小野小学校合唱部
共演:オーケストラ・アンサンブル金沢
 

菅野祐悟:祝祭(2025) 群響委嘱・世界初演

(休憩20分)

マーラー:交響曲 第8番 変ホ長調「千人の交響曲」
  第1部 賛歌「来たれ、創造主である聖霊よ」
  第2部 「ファウスト」の終幕の場
 

 マーラーが大好きな私ですが、先週は土曜日にサントリーホールで交響曲第9番(ノット指揮東京交響楽団)、日曜日はりゅーとぴあで交響曲第5番(平川範幸指揮新潟交響楽団)と2日連続でマーラーを楽しみました。
 あれから1週間しか経っていませんが、今度はマーラーの中でも最大規模の交響曲第8番を聴きに高崎遠征することにしました。

 この曲はマーラーの交響曲の中でも演奏される機会が少なく、私が実演で聴いたのは2001年11月の東京交響楽団第14回新潟定期演奏会(指揮:ノセダ)の1回だけです。残念ながら新潟の音楽事情を鑑みますと、今後新潟で演奏されることは期待できません。
 今回新潟からも比較的近い高崎で、群馬交響楽団の創立80周年を記念して演奏されることを知り、是非とも聴きに行きたいと思い立ちました。
 私の残された人生を考えますと、この機会を逃しますと聴く機会はないかもしれず、24年ぶりに訪れたこのチャンスは神の恵みとさえ思えて、実際に行けるかどうかは別にして、勢いでチケットを買ってしまいました。

 大編成で長大な曲が多いマーラーの交響曲の中にあって、この曲は最大規模であり、大編成のオーケストラに加えて、オルガン、8人の独唱者、混声合唱2組と児童合唱を必要とし、その編成の巨大さから「千人の交響曲」と呼ばれています。初演時には実際に出演者が1030人を数えたそうですから驚きです。
 今回の演奏会では、オケの人数が群馬交響楽団だけでは足りませんので、オーケストラアンサンブル金沢との共演で演奏され、これも注目点のひとつです。どんな演奏会になるのか期待は高まりました。

 今年は1月に東京フィルで交響曲第7番(指揮:広上淳一)、3月に群馬交響楽団で交響曲第9番(指揮:飯森範親)、9月に新潟メモリアルオーケストラで交響曲第7番(指揮:工藤俊幸)を聴いていますので、先週に引き続いて、今日は今年で6回目のマーラーとなります。

 先週上京したばかりですし、心身の疲れがたまっていてどうしようかと悩みましたが、勢いに任せてチケットを買っていましたので、思い切って出かけることにしました。
 昨日も同じプログラムの第613回定期演奏会があって、そちらに行って、今日は休養にあてたかったのですが、昨日はりゅーとぴあで東京六人組の演奏会がありましたので、今日の公演を選ぶことになりました。高崎芸術劇場は3月に来て以来ですので、8か月ぶりになります。


 明日から天候は崩れて冬型となり、平野部での降雪も予想されていますが、今週末は天候に恵まれて、穏やかな天気が続いています。
 今日も朝から晴れ渡り、昨日同様に絶好の行楽日和となりました。昨日の記事を仕上げてサイトにアップし、雑務を済ませて家を出ました。
 快晴の空の下に車を進め、いつもの駅南のコインパーキングに車をとめて、駅ナカで昼食をとり、新幹線に乗り込みました。乗った新幹線は各駅停車でしたが、この原稿を書いているうちに高崎駅に到着しました。

 新幹線の改札を出て、すぐ左の東口から道路上を長く伸びるペデストリアンデッキを歩きますと、数分で高崎芸術劇場に到着です。新潟で言いますと、新潟駅から万代シテイの手前位でしょうか。この通路は2階の大劇場ロビーに直結していて、大変便利です。

 館内に入りますと、開場待ちの人で賑わっていました。特別なコンサートというためもあるのかもしれませんが、学生さんや若い人たちがたくさんおられ、平均年齢はかなり低いように思われます。高齢者ばかりの新潟とは、ちょっと違いますね。

 ほどなくして開場となり、ロビーでひと休みしました。ここのロビーは、ガラス張りで明るく解放感があり、広くていいですね。椅子に座って外を眺めていましたら、東の空に浮かぶ半月がきれいでした。

 開演前に飯森さんのプレトークがありますので、早めに客席に着きました。私の席は、1階中央の右端で、S席のすぐ後ろのA席です。ステージ全体が一望され、見晴らしは良好です。
 ステージには、所狭しとたくさんの椅子が並べられ、左にハープが2台、チェレスタ、ピアノなど、後方には多彩な打楽器群、その後方に何段もの合唱団席が組まれていました。打楽器群の中央には、やたらに目立つ見慣れないカーテン状の楽器らしき物もありました。

 飯森さんが登場して、プレトークが始まりました。まず前半に演奏される菅野さんの80周年記念の委嘱作品の紹介があり、客席におられた菅野さんも紹介されました。
 そしてマーラーの交響曲第8番の紹介がありました。「これまでの曲は、この曲の序曲に過ぎない」とマーラーが語っていたということ、アルマ・マーラーに捧げられた曲であることなど、事細かな解説がありました。
 また、このホールにはパイプオルガンがないので、電子オルガンやハモンドオルガンを使用し、マンドリンなどたくさんの楽器が使用されること、バンダは客席でなくステー上に配置することなどの紹介が長々とあり、再び客席におられた菅野さんの紹介がありました。
 そして最後に能登半島地震のチャリティーとしてオーケストラアンサンブル金沢が作製したTシャツの購入協力依頼があってプレトークは終わりました。

 開演時間が近付くに連れて客席はどんどんと埋まり、チケット完売の満席のホールは熱気に包まれました。先ほども書きましたが、若い人たちが多く、私の隣も女学生のグループで、華やいでいました。私の周辺は学生さんたちが多く、高齢の私は浮いていました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場し、全員揃うまで起立して待ち、最後にコンミスの伊藤さんが登場して大きな拍手が贈られてチューニングとなりました。弦は通常の配置の16型です。

 飯森さんが登場して、菅野祐悟さんの「祝祭(2025)」の演奏開始です。群響創立80周年の委嘱作品で今回が初演となりますが、昨日も演奏されていますので、今日は2回目ということになります。
 静かな弦にのせて、ピアノや多彩な打楽器群が鳴りました。異様さを感じさせたカーテン状の楽器も神秘的な音を出していました。
 ハープが鳴って深淵な響きを生み、マリンパが鳴り、ピアノが加わって、打楽器とともにコントラバスがピチカートでリズムを刻み、軽快に盛り上がりました。
 静けさの中に鳥が鳴き、美しい音楽でひと息ついて、ファンファーレが鳴って激しくリズムを刻み、静けさの中に曲が終わりました。
 大きな拍手が贈られて、客席にいた菅野さんがステージに呼ばれて拍手が贈られました。菅野さんが客席に戻って、再び拍手が贈られて休憩になりました。
 テレビドラマや映画の音楽を多数手がけている菅野さんだけあって、非常に美しく、親しみやすい音楽が心に染みてきました。交響曲や協奏曲も多数作曲しておられるとのことであり、他の作品も是非聴いてみたいですね。

 休憩時間が終わって後半の開演時間となり、拍手の中に合唱団が入場しましたが、総勢約300人の合唱団ですので、入場に5分以上かかりました。
 その後に左に児童合唱団(42人)が入場し、続いてオケが入場しました。前半にあったカーテン状の楽器は片付けられていました。
 弦は通常の配置の16型で、弦5部は16-14-12-10-8 です。ハープ2台にオルガン、マンドリン、ティパニ2組や多彩な打楽器群など、オケと合唱団とで、総勢460人ほどがステージを埋めて、視覚的にも壮観です。さらに演奏中にバンダ7人が加わります。
 チューニングが行われて、7人の独唱者(ソプラノ2人、メゾソプラノ2人、テノール、バリトン、バスバリトン)と指揮者が入場し、独唱者は指揮者前に並んで着席しました。

 オルガンとともに合唱団が声高らかに歌って第1部が始まりました。独唱が加わって、演奏が進みました。ホールいっぱいに響き渡る大合唱の迫力は圧倒的ですが、静かな緩徐部での美しさも格別でした。児童合唱も頑張っていました。
 ティンパニ2台に、シンバル3人の同時打ちなど、大音量のオケは迫力満点です。喉を潤しながら歌う独唱者も素晴らしく、緩急の波を繰り返して、音楽の洪水に溺れそうでした。
 最後は、トランペットとトロンボーンのパンダがステージ右手に出てきて、大音量の盛大な盛り上がりの中に第1部が終わり、パラパラと拍手が起こりました。

 第2部は、コントラバスのピチカートとともに、静かに始まりました。木管が悲しげに歌い、嘆くようにホルンが咆哮し、感情が高まりました。
 切ない悲しみの音楽が、うねりを作りながら続いて、合唱団が立ち上がり、悲しみの静けさの中に静かに歌い、静寂の中から合唱が少しずつ力を増していきました。
 合唱が着席してテノールが高らかに歌い、オケも力を取り戻しました。女声合唱と児童合唱が加わって、清らかな歌声が明るく響きました。
 コンマスのソロと混声合唱が絡み合い、メゾソプラノが歌い、合唱が明るく歌い、児童合唱も頑張り、テノールが高らかに歌いました。
 ハープとともに静けさが訪れ、美しい音楽が流れ出て癒されました。静けさの中から、沸き立つように合唱が歌い、大きなうねりとなりました。
 ソプラノが歌い、そしてコンマスのソロとともにメゾソプラノが歌い、次第にエネルギーを高めていきました。マンドリンが鳴って、児童合唱が歌い、ソプラノが高らかに歌いました。
 左からソプラノがもう1人登場して、児童合唱の左で天上の女神のように美しく歌いました。テノールと合唱が美しく歌い、チェレスタとハープが鳴って、静けさの中から、合唱が静かに歌い、ソプラノが加わって、その美しさにうっとりしました。
 オケも合唱もエネルギーを増して高らかに歌い、ステージ右に再びバンダが出てきて、盛大に盛り上げて、大音量の中で、興奮と感動のフィナーレを迎えました。

 大編成のオーケストラと大合唱団、そして8人の独唱者たちが作り出した音楽は、この上ない一期一会の感動をもたらし、胸が熱くなり、思わず目には涙が込み上げてきました。
 OEKのメンバーを加えての大編成のオーケストラの迫力は有無を言わせず、大合唱団の歌声は、大編成のオーケストラにも負けません。プロではない市民合唱団ですが、素晴らしい歌声でした。楽譜なしで歌った藤岡市の小学生による児童合唱も良かったです。

 カーテンコールが繰り返されましたが、帰りの新幹線の時間もありましたので、ほどほどの所で退席し、高崎駅へと急ぎました。帰りの車内でこの原稿を書いているうちに、新潟駅に到着しました。

 素晴らしい演奏には違いありませんでしたが、このホールにはパイプオルガンがありませんので、オルガンの迫力に欠けたのは唯一残念でした。
 この曲をいつの日か、りゅーとぴあで聴けたら最高なんですが、私が生きている間には無理でしょうね。今日の演奏を聴けたことを冥土の土産にしたいと思います。
 

(客席:1階22-52、A席¥8000)