今日は毎年楽しみにしている新潟メモリアルオーケストラの演奏会です。新潟大学管弦楽団のOBにより、1991年に結成されたこのオーケストラは、毎年この時期に無料の定期演奏会を開催しています。「できる曲」ではなく「やりたい曲」を演奏するというコンセプトにプログラムが組まれ、新潟ではなかなか聴けない大曲も演奏してくれるのが楽しみです。
今年の演目は、何とマーラーの交響曲第7番です。当初は2020年9月の定期演奏会で演奏する予定になっていたのですが、コロナ禍で定期演奏会は中止になり、幻のプログラムになりました。2021年から定期演奏会が再開されましたが、この曲がプログラムに載ることはなく、残念に思いながら年月が過ぎました。
マーラーの交響曲の中でも、ちょっと難解で、テナーホルン、マンドリン、ギターなど様々な楽器を必要とするこの曲は、全国的にも演奏頻度が少なく、新潟で演奏するのはこのオケ以外は考えられないと思っていましたので、いつ演奏してくれるのかと待ち続けていました。
そして5年経った今日、ついに演奏されるときが来たのです。待ちに待ったプログラムであり、期待に胸を膨らませていたのは私だけではないものと思います。
このように、この曲の新潟県内初演はこのオケ以外はないと確信していたのですが、先を越されてしまい、今年1月に長岡市で開催された東京フィルハーモニー交響楽団長岡特別演奏会で、広上淳一氏の指揮で演奏されました。
この演奏会はいわく付きで、本来はバッティストーニが指揮するはずでしたが、個人的事情により昨年11月から今年の1月に延期され、さらにこの延期公演もバッティストーニが来日できなくなって、急遽指揮者が広上淳一氏に交代しました。広上氏による演奏は素晴らしかったのですが、地方公演を軽視したとも思わせかねないバッティストーニの姿勢に疑問を抱かせることになりました。
ともあれ、新潟県初演は逃しましたが、新潟市での初演を果たすことになりました。この曲を地方に居ながら1年で2回も聴けるなんて奇跡的なことに違いはありません。
2017年から指揮を執っている工藤俊幸氏とともにどのような演奏を聴かせてくれるのか楽しみにしたいと思います。
今週は雨の週末になりました。気温も一気に下がって、漸く秋らしさを感じるようになりました。今日も雨が降り、あいにくの日曜日です。
今日は13時の開場ですので、早めに家を出て、雨の中にりゅーとぴあへと向かいました。白山公園駐車場に着きますと、幸いにも雨は止んでいました。
車をとめて、チラシ集めをしようと県民会館を覗いて見ましたら、関東合唱コンクールが行われていて、ロビーは混雑していました。県外から多数の団体が来られていましたが、各団体のご健闘をお祈りします。
チラシコーナーの前は受付になっていて、チラシ集めは断念しました。ロビーでは新潟土産の販売コーナーも設けられていて、なかなかの賑わいでした。
県民会館を後にして、りゅーとぴあに入りますと、既に開場待ちの列ができており、私もその列に並んで開場を待ちました。ほどなくして開場となり、2階前方に席を取り、ロビーコンサートに臨むため、3階バルコニーへ移動しました。
13時15分になり、ロビーコンサートが開演しました。司会者による演奏者の紹介と曲目紹介があり、その後に演奏が進められました。
まず最初は、木管アンサンブルで、ヘンデルの「王宮の花火の音楽」からの2曲が演奏されました。オーボエ5人、ファゴット5人、コントラファゴット1人で、ファゴットの1人が前方で指揮をしながら演奏しました。木管の柔らかな調べがホールにこだまして、優雅な気分にさせてくれました。
続いては、意表をついて、チェロとギターの二重奏です。曲はニャタリの「チェロとギターのためのソナタ」の第3楽章です。
オーケストラのロビーコンサートにギターの演奏があるというのは特異的にも思えましたが、今日の演目のマーラーの交響曲第7番にギターが賛助出演するため、ロビーコンサートにも出演してもらったものと思います。
ギターとチェロの若干の音量差を感じましたが、響きの良いロビーですので、美しく響いていました。曲も演奏も素晴らしく、うっとりと聴き入りました。ギターも良かったですが、チェロの安部さんはさすがですね。
最後はチェロ四重奏です。安部さんは連続しての出演です。フィツェンハーゲンの「アヴェ・マリア」が演奏されましたが、しっとりと美しく響くチェロの四重奏に、疲れた心が癒され、汚れた私の心が浄化されるようでした。
ロビーコンサートが終わり、ホールに入って席に着きますと、ステージ上では、団員がそれぞれに音出しをしていて、賑やかでした。開演時間までこの状態が続きますが、これが毎回の新潟メモリアルオケ方式になっています。
ステージを眺めますと、左にハープが2台、後方にはティンパニを中央にして、様々な打楽器が並んでいました。ステージいっぱいのオケは視覚的にも壮観です。
開演時間が近付くに連れて団員が増えていき、開演のアナウンスが流れる頃にはコンミスを含めて全員が揃いました。オケの配置は通常型の14型です。
開演時間となり、コンミスが立ち上がってチューニングとなり、指揮者が登場して、ワーグナーの歌劇「さまよえるオランダ人」序曲で開演しました。
ホルンが勇壮に鳴り響き、激しく曲が始まりました。静けさが訪れて、木管がゆったりと、柔らかく響き、ホルンとトロンボーンが加わり、ティンパニとともに再び激しく、力強く音楽を奏でました。
金管が鳴り響き、エネルギーを高め、緩急を何度も繰り返して、全休止からヴァイオリンが激しく演奏し、大きなうねりを作りながらエネルギーを高めていきました。
ゆったりと壮大にオケが鳴り、穏やかさが訪れ、ハープが優しく鳴り、大きく音量を高めてフィナーレとなりました。フルオーケストラの醍醐味を知らしめてくれるパワフルで美しい演奏でした。
この曲だけでしたが、演奏時間80分の大曲に備えて、すぐに20分間の休憩が設けられました。休憩時間中もステージ上で音出しが適宜行われていました。休憩時間が終わる頃には全員が席に着き、賑やかに音を出していました。
後半の開演時間となり、コンミスが立ち上がってチューニングとなりました。弦は14型には変わりありませんが、前半よりも低弦が増強されているようで、チェロは13人、コントラバスが11人と、ステージにびっしりと並びました。
工藤さんが登場して、いよいよマーラーの交響曲第7番の演奏開始です。低弦に導かれてテナーホルンがホールに響いて、長大な音楽が始まりました。
ホルンが激しくメロディを奏でましたが、以後このメロディが何度も繰り返されました。緩急を繰り返しましたが、緩徐部での弦のやわらかな響きが美しかったです。
幾度も繰り返される緩急・強弱の波。穏やかさが訪れて、コンミスのソロが優しく響き、管が穏やかに呼応しました。
束の間の安楽な時間が訪れ、2台のハープが奏でられてうっとりとするも、次第に大きなうねりがやってきて、全休止の後にテナーホルンとトロンボーンが響き渡り、暗雲が訪れました。それを振り払うかのようにホルンが叫び、オケが力強く鳴り響き、うねりを作りました。
ハープが鳴る安楽の穏やかさからエネルギーを高め、様々な打楽器が鳴り響き、ベルアップしたホルンが高らかに歌い、力強くフィナーレを迎えました。この第1楽章を聴いただけで大きな満足感に浸ることができました。
第2楽章は、「夜曲」と名付けられた楽章で、ホルンのソロで始まりました。聴かせどころでしたが、頑張ってくれました。木管がせわしなく歌い、ゆったりとした演奏が始まりました。
行進曲風にリズムを刻み、明るく力強く歩みを進めました。カウベルが鳴り、少しのどかな空気感の中に、ゆったりと行進が進みました。
その歩みが止まるかに見せるも、トランペットの合図とともに再び力強さを取り戻して歩みを進めました。一貫して刻み続けるリズムが頭から離れなくなりました。ゆったりと美しく歌わせるのも束の間に、立ち止まることなく、明るく行進が続きました。
カウベルが再び鳴り、その後もひたすら歩き続けました。ホルンのソロから静けさが訪れ、ハープが短くなって、楽章を閉じました。
第3楽章は、ティンパニとともに始まりました。第2楽章ののどかな行進から一転して、せわしなく音楽が始まりました。中間部では、コンミスのソロやヴィオラのソロも交えて、ゆったりと大きなうねりを作りましたが、狂気を感じさせるようなワルツを踊り、おどろおどろしい空気感を感じました。
マンドリンとギターが静かに入場し、左側のハープの隣に着席しました。チューニングが行われ、第4楽章の演奏が始まりました。この楽章も第2楽章と同様に「夜曲」と名付けられています。
甘いヴァイオリンに始まり、ホルンが歌い、オーボエが呼応して、コンミスのソロとともに、しっとりと音楽が流れ出ました。マンドリンとギターが加わって、穏やかな時間が流れました。のどかすぎるほどに思われる音楽が、心地良く感じられました。
ゆったりとホルンが歌い、そしてマンドリンが歌い、弦もゆったりと歌いました。コンミスのソロとともに、オケが優しく歌い、うっとりと聴き入りました。繰り返されるマンドリンの音色が優しく響き、その快さに癒しを感じました。
第5楽章は、激しいティンパニで始まり、壮大にホルンが叫び、力強くオケが響き渡りました。緩急を繰り返して、弦は流麗に歌い、ベルアップした管楽器が高らかに鳴り響きました。コンマスのソロがアクセントになっていましたが、ちょっととりとめもなく感じる音楽が繰り返されました。
激しく打楽器群が鳴り響き、オケはスピードを上げて激しさを増しました。緩急の波を繰り返して、どんどんとスピードアップしました。
第1楽章のメロディが回帰され、その後も緩急を反復し、荒々しいティンパニとともに激しさを増して、ベルアップしたホルンとともにカウベルが何か所からも鳴り響き、壮大なフィナーレへとエネルギーを高めて、華々しく、力強く全曲を締めくくりました。
ホールに圧倒的な興奮をもたらして、ブラボーの声とともに、割れんばかりの拍手が贈られました。カーテンコールが繰り返され、各パートのパフォーマンスを讃え、工藤さんとコンミスに花束が贈られ、興奮と感動の演奏会は終演となりました。
複雑怪奇なこの曲を、緊張感を失うことなく鮮やかに演奏し、曲の楽しみを知らしめてくれました。新潟のアマオケにより、これほどの演奏を聴けるなんて驚異的であり、賞賛すべき演奏だったと思います。もちろん今年のベスト10候補に挙げたいと思います。
この見事な演奏は奇跡ではなく、団員の皆さんの日々の練習の賜物だったと思います。この演奏を引き出してくれた工藤さんにもブラボーを贈りたいと思います。
大きな感動と喜びとともにホールを出ますと、雨雲は去っていて、青空が見えていました。いい音楽を聴いて、私の心も晴ればれです。
次の第35回定期演奏会は、2026年9月20日(日)に開催するそうです。工藤俊幸さんの指揮で、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲、ヒンデミットのウェーバーの主題による交響的変容、ブルックナーの交響曲第9番が演奏されます。来年も楽しみですね。
(客席:2階C2-9、無料) |