東京交響楽団新潟定期演奏会も回を重ねて122回となりました。7月11日に開催された第121回以来、2か月ぶりの新潟定期です。残念ながら前回は仕事のため行くことができず、娘が代わりに行ってくれて、感激していました。そんなわけで、私としましては6月13日の第120回以来3か月振りになります。
さて、今日の演目は、当初のプログラムでは、ベートーヴェンの「第九」がメインに予定されていましたが、新型コロナウイルス感染の感染拡大により、にいがた東響コーラスの活動が休止され、合唱団の出演ができなくなったため、プログラム変更されました。
1曲目のベートーヴェンの「エグモント序曲」は変更ありませんが、「第九」の代わりに、ピアノ協奏曲第3番と交響曲第7番に変更になりました。「第九」を聴けないのは残念ですが、代わりの曲も大好きですので、これはこれで良かったと思います。経費削減のためか、プログラム変更後の新しいチラシは作成されませんでした。
なお、前日(18日)の川崎での名曲全集第169回(指揮:原田慶太楼)は、ヴォーン・ウィリアムズ特集であり、全く別のプログラムです。緊急事態宣言下ではありますが、合唱団(東響コーラス)も参加しての開催でした。
今回は新潟独自のプログラムかと思ったのですが、明日(20日)の八王子でのフレッシュ名曲コンサートが1曲目以外同じプログラムです。
これまでの新潟定期は、同じプログラムを東京で演奏した後に新潟で演奏するというパターンが多く、これが売りでもあったのですが、今回は逆になります。なお、八王子での1曲目はエルガーの「弦楽セレナード」です。新潟はオール・ベートーヴェンにこだわって、「エグモント序曲」のままにしたんでしょうね。
さて、指揮の原田慶太楼さんは、若手指揮者の中では現在最も活躍している指揮者の一人です。今シーズンから東京交響楽団の正指揮者に就任し、今後のさらなる活躍が期待されます。ちなみに、本日(9月19日)は、原田さんの結婚記念日だそうです。
原田さんの指揮は、4月の「東京交響楽団第689回定期演奏会」の配信を聴いて以来ですが、生での演奏は、2020年8月の「オーケストラはキミのともだち」以来、2回目となります。
また、ピアノ協奏曲第3番で共演する三浦謙司さんは初めてであり、どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。
なお、これまでの東響新潟定期演奏会の長い歴史の中で、「エグモント序曲」と「ピアノ協奏曲第3番」は今回が初めてです。超人気曲の「交響曲第7番」も、2003年7月の第21回(指揮:スダーン)以来、18年振り2回目というのは驚きです。それだけ多彩なプログラムで楽しませてきたということなのでしょうが、この意外さには、「へー」と思ってしまいます。
今日は、夜明けの頃はまだ曇り空でしたが、その後青空が広がり、爽やかな秋晴れとなり、過ごしやすい日曜日になりました。
本来であれば、昼に「東響ロビーコンサート」があり、今回はホルン五重奏のはずだったのですが、残念ながら中止になってしまいました。
たまった雑務を片付け、早めにりゅーとぴあへと向かいました。チラシ集めをし、インフォで某コンサートのチケットを買った後、晴天に誘われ、やすらぎ堤を散策しました。清々しい青空と爽やかに吹き抜ける川風が心地よく感じられました。
開場時間になりましたので、りゅーとぴあに戻り、早めに入場してこの原稿を書き始めました。開演時間が近付くにつれ、次第に客席は埋まりましたが、当初は「第九」の予定でしたので、ステージ周りのブロックは合唱団用に発売されず、そのまま空席になったため、ちょっと寂しく感じました。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟方式です。指揮台はなく、オケの配置はヴァイオリンが左右に別れ、コントラバスとチェロが左、ヴィオラが右の対向配置です。弦5部は私の目視で
12-10-8-7-6の12型です。
今日のコンマスは、9月1日付けでコンサートマスターに就任したばかりの小林壱成さんで、新潟でのお披露目公演となります。次席は田尻さんです。
原田さんが登場して、1曲目は「エグモント序曲」です。ゆったりと重厚な出だし。低弦の響きが美しく、新コンマスが率いる東響弦楽陣のアンサンブルの美しさに感嘆し、一気に演奏に引き込まれました。最初のフレーズを聴いただけで今日のコンサートの成功が確信されました。
切れの良い、生き生きと躍動感のある音楽が、原田さんの指揮により生み出され、どんどんと加速してフィナーレを迎えました。これまで実演で聴いたこの曲の最良の演奏であり、これを聴けただけでも今日は満足とすら思えました。
ステージにピアノがセットされ、2曲目はピアノ協奏曲第3番です。ピアノの三浦さんと原田さんが登場。長いオーケストラの序奏の後にピアノが登場しました。
この曲の曲調もありましょうが、軽やかに明るく奏でられるピアノ。オケと競り合うことはなく、お互いに自己主張は抑え気味で、激しさは排除し、互いに協調しあって優しく心に染みる音楽を届けてくれました。第1楽章終盤の長大なカデンツァは聴き応え十分。
ピアノ独奏で始まる第2楽章はゆったりと、しっとりと、思いっきり歌わせましたが、ねっとりしたロマン性はなく、ちょっとクールで醒めた感じもありました。これはこれでいいアプローチかもしれません。
第3楽章はギアチェンジして、軽快に駆け足しましたが、全力疾走することはなく、ほどほどに汗をかいたかなというところでしょうか。原田さんと三浦さんの激しいぶつかり合いを期待しましたが、交通法規を守った安全運転で、中庸を行く演奏に感じました。それなりの感動はいただきましたが、興奮して胸が高鳴るには至りませんでした。
大きな拍手に応えて、アンコールは「トロイメライ」。原田さんもピアノの横で聴いておられました。ゆったりと優しく包み込み、傷ついた心を癒してくれるような音楽に心が洗われました。極上のデザートをプレゼントしてくれた三浦さんに感謝です。
もっと自己主張できる選曲をして、客席を盛り上げるという手もあったかと思うのですが、興奮よりも癒しを選択したところに三浦さんの人柄が出ているのかもしれませんね。
休憩後の後半は「ベト7」です。原田さんが登場して一礼し、振り向くとともに演奏開始です。これは快演、爆演と言っていいでしょう。コンパクトなオケを完全に手中に収め、全身を使ってコントロール。軽快にリズムを刻んで、聴く者の心をどんどんと高揚させました。
アタッカで第2楽章へ。ここはゆったりとリズムを刻み、しみじみとした味わいを与えてくれました。暗い影を感じながらも、その先には希望の光が見えているかのように、しっかりとした歩みでした。後半に向けて、バッテリーの充電もバッチリ。
咳払い休憩を置いて第3楽章へ。ギアチェンジしてスピードアップ。途中の緩徐部では思いっきりゆったりと歌わせ、急速部でのスピード感が強調され、高揚感を高めました。
アタッカで怒涛の第4楽章へ突入。グイグイとエンジン全開で急加速。オーバーヒートしそうなオケは崩壊寸前で指揮者に食らい付き、負けてなるものかと全力疾走しました。
ここまでやられたら降参するしかありません。完全にノックアウトです。これはやりすぎだとの意見も出そうですが、原田さんと東響との新時代到来を確信させました。
この文章は、カルロス・クライバー/バイエルン国立管のライブCDを聴きながら書いていますが、今日の演奏は十分対抗しうるものと思います。ブラボーを贈りましょう。
「第九」からプログラム変更されましたが、大きな感動をいただいて満足でした。昨日は川崎で全く別の曲を演奏した後、遠路新潟に来てこのような演奏を聴かせてくれる素晴らしさ。やっぱりプロは違いますね。明日の八王子公演も頑張ってください。
大きな感動と満足感を胸に、日が短くなって真っ暗になった外に出て、秋を実感しました。久しぶりのオーケストラ。やっぱり音楽っていいですね。
(客席:2階*-*、S席:定期会員:¥6300) |