東京交響楽団第689回定期演奏会 Live from Suntory Hall !
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2021年4月17日(土)18:00 サントリーホール
指揮:原田慶太楼
ヴァイオリン:服部百音
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 

ティケリ:ブルーシェイズ

バーンスタイン:セレナード (プラトンの「饗宴」による)

(ソリストアンコール)
 エルンスト:「魔王」

(休憩20分)

ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調 op.93


 

 今週はコンサートに行く予定はなく、代わりに東京交響楽団のサントリー定期の無料ライブ配信を聴かせていただくことにしました。3月27日の第688回定期演奏会以来3週間ぶりです。

 今日の定期公演は、今シーズンから正指揮者に就任した原田慶太楼さんの正指揮者就任記念コンサートとして開催されました。東響としても特別な位置付けをしており、東響の公式サイトに「原田慶太楼 正指揮者就任記念特設ページ」を開設して盛り上げています。
 原田さんは、昨年8月1日の「オーケストラはキミのともだち」で、東響とともに新潟に来演しており、躍動感あふれる気分爽快な演奏で楽しませてくれて、飯森さんが去った東響に新しい風を吹かせてくれました。

 また、今回共演する服部さんは、TV番組で演奏を聴かせていただいたことがあり、その素晴らしさを垣間見ています。あの服部一族の血を引かれていますが、そんな家柄を抜きにしても、その実力と美貌は素晴らしく、今回の演奏も楽しみにしてこのコンサートに臨みました。

 通常のコンサートと同様に、気合を持ってPC前に着席しました。17時半過ぎにサイトに接続しますと、既にステージが映し出されており、この原稿を書きながら開演を待ちました。
 席は制限されずに通常通りに発売されており、次第に席は埋まり、コロナ禍で大丈夫かと思うほどの賑わいです。ステージ上は無人ですが、舞台裏からの音出しの音が漏れ聞こえていて、コンサート気分が盛り上がりました。

 開演のチャイムが鳴り、開演のアナウンスが流れ、いよいよ開演です。東京での公演としては珍しく拍手の中に団員が入場し、全員が揃うまで起立して待つ新潟方式です。サントリー定期としては異例であり、東響としても特別な意気込みで臨んでいるようです。
 ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、コントラバスとチェロが左で、ヴィオラが右です。今日の次席は田尻さんで、廣岡さんが2列目です。最後にニキティンさんが登場してチューニングとなりました。

 濃紺のスーツの原田さんが登場。最初はティケリの「ブルーシェイズ」です。もともと吹奏楽の曲のようですが、その管弦楽版です。いかにもアメリカ!というようなかっこいい曲で、アメリカで研鑽を積んだ原田さんのお披露目の曲としては最適でしょう
 管楽器のソロもお見事。クラリネットのヌヴーさんのソロは起立しての演奏。ノリノリの演奏に、聴く方もウキウキしました。やったね! 原田さん。いきなりの楽しい演奏に、PCの前でブラボーを叫びました。

 ステージが大きく転換され、編成が縮小されて弦楽と打楽器のみとなり、2曲目はバーンスタインの「セレナード」です。黒と白のドレスが麗しく腰まで届くロングヘアーの服部さんと原田さんが登場して演奏開始です。
 「セレナード」とはいうものの、5楽章からなり、ヴァイオリン協奏曲というべきものです。この曲もいかにもバーンスタインというようなかっこい曲であり、服部さんの見事な演奏に引き込まれました。
 しっとりした第2楽章の後、激しい第3楽章、ゆったりと美しい第4楽章。そして鐘の一撃で暗く重苦しい第5楽章へ。ヴァイオリンとチェロのかけ合いから激しくリズムを刻み、勢いよく坂道を駆け上がり興奮のフィナーレを迎えました。初めて聴きましたが、なかなかいい曲なんですね。もちろん演奏の良さがあってのことでしょうけれど。

 原田さんは退場せず服部さんに拍手を贈っていました。盛大な拍手に応えて、ソリストアンコールはエルンストの「魔王」。いかにも難曲というオーラが漂う曲を力強く、激しく弾き、圧倒されました。こんな曲をアンコールで弾くなんて、只者ではないですね。今後も注目したいと思います。

 休憩の後、開演のアナウンスがありましたが、すでにコントラバスだけステージ上にいました。その後拍手の中に団員が入場しました。最後にニキティンさんが登場してチューニング。

 原田さんが登場し、低弦の重々しい響きで演奏開始です。美しくも悲しげな弦楽アンサンブルに管楽器が加わり、大きなうねりを帯びて、一気に演奏に引き込まれました。幾度となく繰り返されるメロディが大きな山となり、音の洪水に身を委ねました。ヌヴーさんを始め、各管楽器のソロもお見事でした。静けさの中に響くピッコロの二重奏で長大な第1楽章が終わりました。
 一転して第2楽章は激しくリズムを刻み、猛スピードで突進して大爆発しました。急加速を続けて否が応でも胸が高鳴ります。ここでチューニングがあってクールダウン。オーバーヒート寸前でしたので小休止は必要でしょう。
 何やら怪しげに耳に良く馴染むメロディで第3楽章が始まりました。ここでも各楽器のソロが光っていました。楽しげなワルツを踊って楽しんだのも束の間、再び暗い世界が戻りましたが、ホルンの調べが救いの光のようでした。
 指揮棒を下ろさぬままに第4楽章へ。暗く切ないメロディが不安感を誘いましたが、突然ギアチェンジして明るさを取り戻し、その後はアクセルを踏み続けてエンジン全開。一呼吸置いて態勢を立て直し、怒涛のフナーレへと突入しました。

 これは文句なく快演と言ってよいでしょう。東響が日本初演をし、2016年のヨーロッパ公演でも演奏し、東響としても思い入れのあるこの曲を、原田さんの手で調理され、美味しく味あわせていただきました。
 この原稿は名盤の誉れ高いカラヤン/BPOのCDを聴きながら書いていますが、今回の演奏の方が上かもしれません。東響の皆さん、特に管楽器の素晴らしいパフォーマンスに支えられて、一期一会の名演に仕上がっていました。

 アメリカとロシアで学ばれた原田さんが、これまでの遍歴を振り返り、練りに練ったプログラムで、前半・後半とも楽しませていただきました。ネット中継でもこれほど興奮させられるわけですから、会場で聴いた皆さんの感動は計り知れません。
 正指揮者就任記念演奏会にふさわい内容であり、東響の新時代の幕開けを告げるように思いました。東響の素晴らしさを再認識させられる演奏に、大きな満足感をいただき、サイトを離れました。

 新潟では5月9日に、ノット指揮による新潟定期演奏会が予定されています。ノット氏が予定通り来日できるのかが心配ですが、生の東響を楽しめる日を楽しみに待ちたいと思います。
 

(客席:自宅PC前、無料)