椿三重奏団
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2020年9月5日(土) 14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
椿三重奏団 (Vn:礒絵里子、Vc:新倉瞳、Pf:高橋多佳子)
 

エルガー:愛のあいさつ (トリオ版)

ディニク:ひばり (ヴァイオリン&ピアノ)
クライスラー:愛の悲しみ (ヴァイオリン& ピアノ)

サン=サーンス:白鳥 (チェロ&ピアノ)
カタロニア民謡:鳥の歌 (チェロ&ピアノ)

ショパン:幻想即興曲 (ピアノ)

ダンクラ:モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の主題による二重奏曲
      (ヴァイオリン&チェロ)

ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番 (トリオ版)

(休憩 20分)

ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8

(アンコール)
ブラームス:ワルツ Op.39-15
モンティ:チャルダッシュ
 


 

 今日は、ヴァイオリンの礒絵里子さん、チェロの新倉瞳さん、ピアノの高橋多佳子さんの3人により結成された椿三重奏団のコンサートです。音楽性と美貌を兼ね備えた3人に魅かれ、聴かせていただくことにしました。

 3人は2008年に出会い、以後共演を重ね、昨年から椿三重奏団という名前で活発に演奏活動をされ、CDも発売されています。
 椿三重奏団というネーミングは、もちろん日本原産の椿に由来します。愛知県幸田町のつばきホールでのコンサートの打ち上げで、今後3人で活動を継続していくことを決めたことが椿三重奏団ののネーミングの由来だそうです。
 日本人としてのアイデンティティーと、西洋のクラシック音楽に携わる3人を重ね合わせ、カタカナや横文字は使わず、漢字の名前にしたとのことで、深い意味があるようですが、私は黒沢明監督のの「椿三十郎」を思い起こし、時代劇的な印象を受けてしまいます。ちょっと古すぎますかね。

 それはさておき、3人はそれぞれ活発な活躍をされており、新潟でもお馴染みです。3人ともりゅーとぴあ主催の「1コインコンサート」に出演されています。

 その他にも3人は新潟に度々来演されており、礒さんは、2015年12月の新垣隆さんとのコンサートや、2014年12月の「オルガン・クリスマスコンサート」、2011年11月のデュオ・プリマのコンサート、2007年11月の高橋さんとのコンサートなど何度も聴かせていただいていますし、もぎオケのメンバーとしての来演もあります。

 高橋さんは、お母さんが加茂市出身ということで新潟とは縁があり、前記の2007年11月の磯さんとのコンサートのほか、2010年2月の「生で聴くのだめカンタービレの音楽会」、2007年9月の「アフタヌーン・コンサート」、2006年9月の「BEST CLASSICS 100 コンサート」などを聴かせていただいています。

 新倉さんは、2013年2月のリサイタルを聴いたほか、2016年6月の「茂木大輔のオーケストラコンサート」でのドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴く機会がありました。

 3人とも音楽性の素晴らしさのほか、ヴィジュアル面での素晴らしさもあり、煩悩だらけのジジイは魅了され続けています。今回は魅力あふれるミューズ3人が集うということで、聴きに行けねばということで楽しみにしていました。

 とはいえ、当初は椿三重奏団とは何のことかわからず、椿三十郎を連想したくらいですから、前時代的な、何とも言えない胡散臭さを感じてしまいました。その後チラシの美しい写真を目にし、メンバーが美しき3人ということを知り、急遽チケットを買ったというのが事実です。なんか、もっといい名前なかったのかなあ・・。などと思い巡らしているのは私くらいでしょうね。

 今日のコンサートは、前半で3人がいろんな組み合わせで有名な名曲を演奏するほか、後半では本格的なピアノ三重奏ということで、CDも発売したブラームスのピアノ三重奏曲第1番が演奏されます。
 この曲は、つい最近、8月15日の「SanDoコンサート」で聴いて感動したばかりですので、今回どのような演奏を聴かせてくれるのか期待が高まりました。
 

 今日は土曜日。カメの水替え、ネコのトイレ掃除、家の掃除機かけ、ゴミ出しなど、定例業務をこなし、この原稿の前半を書き、家を出ました。
 いつものように、上古町の楼欄で絶品の冷やし中華をいただき、幸せ気分でりゅーとぴあ入りしました。久しぶりにインフォで某コンサートのチケットを買い、体温チェックを受けて入場しました。

 客席は前後1席おき、左右は2席おきに発売され、十分するほどの間隔が保たれていました。私はいつもの2階正面に席を取りました。

 開演時間となり、ペパーミント色のドレスの礒さん、ピンクのドレスの新倉さん、白いドレスの高橋さんが登場。年齢はそれなりにのはずですが、パステルカラーのドレスが美しく、遠目でよくは見えませんが、容姿端麗なスリムな体に良く似合っておられました。

 前半は名曲パレード的内容のプログラムです。最初は挨拶代わりに三重奏で「愛の挨拶」です。草原に吹く春風のような爽やかな演奏が心地良かったです。

 3人による挨拶があり、新倉さんが下がり、続いてはヴァイオリンとピアノで2曲演奏されました。1曲目の「ひばり」は、礒さんの超絶技巧が炸裂し、江戸家猫八(古いかなあ・・)ばりの見事な「ひばり」の鳴き声に感嘆しました。続いての「愛の悲しみ」は、しっとりとゆったりと演奏し、心に染みました。

 続いて礒さんが下がり、高橋さんと新倉さんとの楽しいトークの後、チェロとピアノで2曲演奏されました。礒さんが演奏した「ひばり」にちなみ、鳥関連の曲を選んだとのこと。
 最初はチェロの名曲「白鳥」を演奏しましたが、優雅に湖に浮かぶ白鳥ではなく、ちょっと年老いた瀕死の白鳥のようで、息も絶え絶えに感じましたが、私だけでしょうか。
 2曲目のカザルスの名曲「鳥の歌」は、切々と歌うメロディが心に突き刺さり、しんみりと聴き入りました。最後の消え入る余韻に涙しました。美しい演奏でした。

 続いてステージが片付けられ、高橋さんの楽しいお話の後、ピアノ独奏で、ショパンの「幻想即興曲」です。ちょっと滑らかさに欠ける安全運転でしたが、熟練の技でまとめ、感情のうねりが迫り、精神的高揚を誘いました。

 続いては礒さんと新倉さんが登場し、トークの後、「ドン・ジョバンニの主題による二重奏曲」が演奏されました。お馴染みのメロディも出てきて、楽しく聴かせていただきました。

 前半最後はトリオでブラームスの「ハンガリー舞曲」です。後半のブラームスの三重奏曲の前座的プログラムですが、ピアノトリオの楽しさを知らしめてくれるような躍動感ある演奏でした。

 前半は3人の軽妙なトークによるお楽しみコーナー的内容でしたが、休憩後の後半は、ピアノ三重奏曲の名曲であるブラームスの「ピアノ三重奏曲第1番」をじっくりと演奏し、直球勝負しました。
 高橋さんにはマスクを着けた譜メクリストが付きましたが、何とヴァイオリニストの加藤さんでした。礒さん、新倉さんはタブレット型の電子楽譜を使用していました。時代は変わりましたね。

 いかにもブラームスというような渋い骨太のメロディが歌う長大な第1楽章は聴き応えがありました。熟練の高橋さんのピアノに支えられて、チェロが朗々と歌い、ヴァオリンと絡み合って極上の音楽を紡ぎ出し、緊迫の演奏を繰り広げ、客席から拍手が沸き起こりました。
 軽妙さの中にも緊張感を感じさせる第2楽章。朝霧が立ち込めるかのような深遠な第3楽章。再び重厚なメロディが朗々と奏でられ、若き日のブラームスの熱き血潮が燃え上がるような、情熱がほとばしる第4楽章。3人の鬼気迫る熱い演奏が感動をもたらし、大きな拍手が贈られました。

 アンコールはブラームスの「ワルツ」を柔らかに演奏して先ほどの興奮を鎮め、「チャルダッシュ」で再び観客を熱狂させて終演となりました。

 三重奏だけでなく、いろんな組み合わせでの多彩なプログラムで、3人それぞれの見せ場を作り、3人の魅力が遺憾なく発揮されていたと思います。

 前半はトークを交えての肩の凝らない内容でしたが、後半はピアノ三重奏曲の定番をじっくりと演奏してくれ、単なる名曲コンサートで終わらない気迫を感じさせました。
 終演は4時を大きく過ぎていて、ボリューム感たっぷりなプログラムで、お腹いっぱいになってホールを後にしました。

 あらためて振り返り、もちろん今日の演奏も良かったのですが、先日の「SanDoコンサート」での佐々木、片野、金子さんによるピアノ三重奏曲も良かったなあと再確認しました。
 
  

(客席:2階C3-9、¥2000)