今年もついにこの日がやってきました。毎年欠かさず聴かせていただいている新潟市ジュニアオケの演奏会です。私はこの日を楽しみに、1年間歯をくいしばって頑張って生きています。
毎年同じことを書いていますが、ウィーンフィルが来ようが、ベルリンフィルが来ようが、私はジュニアオケを選びます。という気概でコンサートに臨んでおり、万難を排して毎年駆けつけています。
しかし、新型コロナウイルス感染の蔓延により3月末のスプリングコンサートは中止となり、この夏の新潟市ジュニア邦楽合奏団、新潟市ジュニア合唱団の定期演奏会も中止となり、関係者のみのクローズドでの発表会が開催されました。
ジュニアオケの演奏会も関係者のみの発表会になるのではないかと危惧し、関係者にお願いして、ホールの片隅で良いので何とか聴けないものかと思案していたのですが、一般公開で開催されることになり、ひと安心しました。
今年は新型コロナの関係で、集団での十分な練習量を確保することは大変だったことは想像に難くないですが、プログラムは削られることもなくフル編成です。どのような演奏を聴かせてくれるか期待は高まりました。
猛暑続きの日曜日。ゆっくりと昼食を摂り、りゅーとぴあへ向かいました。ホールに着きますと、既に開場されていて、私も体温チェックを受けて入場しました。
私の席は2階の正面前方です。席は前後左右1席おきに販売されましたが、なかなかの入りではないでしょうか。P席を含めて、満遍なく席が埋まっていました。
例年ですとロビーコンサートが行われ、これも楽しみにしているのですが、残念ながら新型コロナ禍の今年は開催されず、客席で開演を待ちました。
開演時間となり、まず最初は、小中学生の初級者によるA合奏です。毎年編成が不規則なのですが、今年の編成は、弦5部が、8-6-4-1-2
で、フルート1、オーボエ1、ホルン4、トランペット2、打4 で、なんとチェロが1人しかいません。合奏を指導するのも大変でしょうね。
ほのぼのとしたチューニングが終わり、指揮の藤井さんが颯爽と登場し、演奏開始です。1曲目は、ウッドハウスの「スコットランドの3つのメロディ」です。初心者用のとっても短い3曲からなる組曲でしたが、ちゃんとオーケストラの音になっていました。この編成で、こんなにも良い音が出るなんて、すごいですね。
次のスラブ舞曲もいい演奏でした。この曲は3月に予定されていたものの中止になったスプリングコンサートで演奏予定でしたから、十分に練習が積まれていたものと思います。パーカッションが良い味付けをしてくれて、迫力を生んでいました。非常にアンバランスな編成ながらも十分に楽しめる聴き映えする演奏に仕上がっており、大変良かったと思います。
ステージが 整えられ、いよいよB合奏です。オケの編成は、弦5部が私の目視で 11-10-6-9-5でしたので、例年より若干小振りでしょうか。コンマスはコンミスの阿部さんではなくて男性です。指導者として関わっている加藤さんや廣川さんらの顔も末席にありました。フルート/ピッコロが総勢8人いたりして、ちょっとアンバランスに感じましたが、全員出演ということなのでしょうか。最後にコンマスが入場してチューニングとなりました。
永峰さんが登場して、1曲目はボロディンの「だったん人の娘達の踊り」と「だったん人の踊り」です。さすがB合奏という演奏でした。速めにリズムを刻み、乱れないアンサンブル。聴かせどころの管楽器のソロもお見事でした。各パートとも見事に自分の役割を果たし、フルオーケストラの迫力ある演奏に胸が高鳴りました。
この曲は3月のスプリングコンサートで演奏するはずでしたから、練習が十分になされて、より良い仕上がりにつながったものと思います。
休憩後はメインの「シェエラザード」です。コンマスは交代し、阿部さんになりました。物語の始まりを告げる序奏に引き続いて、物悲しいヴァイオリンソロが物語を語り、幻想的なアラビアンナイトの世界へと誘われました。
迫力満点のゴージャスなオーケストラサウンドに酔いしれました。コンミスのヴァイオリンソロはお見事でした。弦楽のアンサンブルも美しく、管楽器の長大なソロも良かったです。特にクラリネットはすごかったです。打楽器もバシッと決めて、オケの演奏を聴き応えあるものにまとめました。
3月から5月まで活動できなかったとのことであり、練習時間は少なかったはずですので、どうなるのかと心配しましたが、全くの杞憂であり、期待以上の演奏でした。
新潟の音楽シーンを振り返りますと、「シェエラザード」といえば、りゅーとぴあ開館記念公演で全国放送されたゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団の演奏が今でも思い起こされます。
アマチュアでは、2006年12月の、コンマスとして五來貴洋さんを擁する新潟大学管弦楽団による「伝説のシェエラザード」を忘れることができません。今回の演奏は、それに匹敵するどころか凌駕する名演だったのではないでしょうか。
ジュニアという枠組みを外しても、見事な演奏だったと思います。コンミスだけでなく、各パートとも頑張ってくれました。感動の涙が込み上げてきました。静かなエンディングの余韻を味わいたかったですが、指揮棒を降ろす前に、空気を読まないフライング拍手があって台無しにしたのが唯一残念なことでした。
そしてアンコールはもちろん「威風堂々」です。オルガン席に照明がつきますと演奏前から胸が高鳴ってしまいます。これで高校3年生は卒団になります。その最後の演奏がこの曲なのです。そんな思いが込められた演奏は、プロでもかないません。
演奏が進むにつれて感動が込み上げ、終盤にオルガンが加わりますと、目に涙があふれ、感動の嗚咽を抑え切れなくなりました。
この感動を味わうために、私は1年生きているといっても過言ではありません。今年も感動をいただきありがとうございました。また来年聴くことができるよう頑張って生きていきたいと思います。
(客席:2階C2-13、¥700) |