ワンコインご縁コンサート ヴァイオリンとピアノ
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2017年6月10日(土)11:15 新潟市北区文化会館
 
ヴァイオリン:鈴木理恵子
ピアノ:若林 顕
 
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第33番 ヘ長調 K.377

ビーバー:パッサカリア

クライスラー:愛の悲しみ、中国の太鼓

ドヴォルザーク:わが母の教え給いし歌
バルトーク:ルーマニア民族舞曲

加古 隆:アダイアダイ〜ブルネイの古謡
モンティ:チャールダッシュ

(アンコール)
シューベルト:アヴェ・マリア
 

 今年から始まった北区文化会館主催の“ワンコインご縁コンサート”の2回目です。ご縁があるようにということで、500円と引き換えに、5円玉の入った大入り袋が入場券代わりに渡されます。これを提示することで、提携店で各種サービスが受けられます。
 先月開催された第1回は夕方開催の“ディナー前コンサート”でしたが、今回以降はランチタイムコンサートとなります。

 今回の出演は、ヴァイオリンの鈴木理恵子さんとピアノの若林顕さんです。このシリーズは地元の音楽家主体で企画されていますが、今回は全国区の一流どころの出演です。
 この二人のコンサートは、2010年10月に、このホールで開催されており、私も聴かせていただきました。素晴らしい演奏に感動したことを覚えており、今回の公演も期待が高まりました。

 今日は休みが取れましたので、雑務を済ませ、北区文化会館に向かいました。開場待ちの列に並び、前方に席を取りましたが、客席は混み合うほどでもありませんでした。区外にはあまり広報されていませんので、この企画を知らない人も多いものと思います。ちょっともったいなく感じました。

 赤いドレスの鈴木さん、胸ポケットの赤いハンカチが洒落ている若林さんが登場して開演です。以後鈴木さんの曲目解説を交えながら演奏が進められました。

 最初はモーツァルトのヴァイオリンソナタです。響きが豊かなホールに、豊潤なヴァイオリンが、優しくサポートするピアノに載せて響き渡り、一気に演奏に引き込まれました。しっとりと美しい第2楽章を切なく歌わせ、優しく愛らしい第3楽章をしなやかに演奏し、チャーミングなソナタを聴かせてくれました。

 若林さんが退席し、次は無伴奏でビーバーのパッサカリアです。この曲は2013年9月の野口万佑花さんによる伝説のコンチェルト・インストアライブで聴いて以来好きになった曲です。しかし、生演奏を聴く機会はその後なく、2014年10月に、鍵冨弦太郎さんの演奏を聴いたくらいです。
 鈴木さんのヴァイオリンは、残響豊かなホールに朗々と響き渡り、ホールはあたかも聖堂のようでした。力強くも柔らかく、胸を打つヴァイオリンの響きに、魂が揺り動かされるようでした。これほどの演奏はなかなか聴けるものではなく、この演奏を聴けただけでも今日ここに来た甲斐があったと思いました。野口さんや鍵富さんの演奏も、この鈴木さんの演奏を前にしますと影が薄く感じられます。

 若林さんが加わって、続いてはクライスラーが2曲演奏されました。“愛の悲しみ”はねっとりと濃厚に、艶やかに歌わせ、ポタージュスープでも味わうような印象でした。“中国の太鼓”は、パワフルにリズムを刻みました。

 続いて“わが母の教え給いし歌”は感情豊かに歌わせ、“ルーマニア民族舞曲”は音量豊かに、独特な節回しでアクセントを付けながら演奏しました。各曲の対比も鮮やかに弾きわけ、パワーいっぱいに締めくくりました。

 加古隆作曲の“アダイアダイ”は、鈴木さんのアルバムのために作曲された曲だそうですが、透き通った甘く切ない音楽に始まり、やがて感情の大きなうねりが大河となって流れ、そして再び静かな流れになって、切なく心に響きました。

 そして最後はお馴染みの“チャールダッシュ”。パワフルに、朗々と、これでもかというくらいに、思いっきり歌わせ、ピアノも全開に、興奮の中にプログラムを締めくくりました。

 拍手に応えて、アンコールに“アヴェ・マリア”を、しっとりと情感豊かに演奏し、感動と興奮を鎮める上質なデザートとなりました。

 鈴木さんの演奏は音に芯があり、心を揺さぶるパワーがあります。艶のある音色は、ヴィンテージ物の豊潤なワインのようであり、若い演奏家にはない円熟した味わいに満ちていました。
 もちろんこの演奏は、ヴァイオリンを支えた若林さんのピアノがあってこそです。鈴木さんに寄り添いながらも、しっかりと存在感を感じさせました。さすがに夫婦だけあって息もぴったりです。

 こんな素晴らしい演奏を500円(5円のキャッシュバックがありますので、495円)で聴くことができて良かったです。次回は9月23日(土)11時15分からで、「チェロとピアノ」ということで、チェロの片野大輔さん、ピアノの清水美香さんの出演です。皆さんも是非お聴きください。
  

(客席:5-9、¥500)