新潟出身の若手ヴァイオリニストで、男といえば、この人を挙げないわけにはいきません。今年8月のアンサンブルクラインの演奏会にも出演し、羽柴塁さんとの共演による見事な演奏が記憶に新しいところです。
また、私が単独のコンサートを聴くのは2008年7月に、新潟市音楽文化会館で開催されたリサイタル以来です。そのときは、残念ながら万全ではなかったような記憶がありますが、あれから6年の年月が過ぎ、どのように音楽的な成長を見せてくれるかが楽しみでした。
ピアノで共演の湊元(つもと)さんも楽しみです。湊元さんは本年5月の枝並清香さんとのデュオリサイタルでの熱演が記憶に新しいですが、この時も今日の演目のフランクのソナタとヴォカリーズが演奏されています。この演奏経験があって、湊元さんが鍵冨さんの共演者に選ばれたのかも知れないと、勝手に想像しています。
さて、チラシは「バイオリンコンサート」となっていますが、配られたプログラムの紙は「ヴァイオリンコンサート」となっていました、NHK式にバイオリンで良いのですが、老婆心ながら統一したほうが良いように思います。
また、2500円(当日3000円)というそれなりのチケット代を取る割りに、配布されたプログラムは曲目が書かれたB5の紙が1枚というのはいただけませんね。このプログラムもどきの紙に、共演者の湊元さんの名前が書かれていないのも問題です。
本日は台風前の快晴の空。まさに行楽日和となりました。新潟シティマラソンが開催されたほか、古町では恒例の「古町どんどん」が開催されて、賑わいを見せていました。ちょっと覗いてからだいしホールへと向かいました。
開場時間になっても開場待ちの列というほどのものはなく、どうなるか心配しましたが、最終的にはまずまずの客の入りでしょうか。
いきなり鍵冨さんの挨拶と曲目紹介があり、1曲目はヴァイオリン独奏で、ビーバーのパッサカリアが演奏されました。この曲は、2013年9月のコンチェルト・インストアライブでの野口万佑花さんの神懸り的名演が記憶に残っていますが、鍵冨さんの演奏は、研ぎ澄まされた緊張感のあった野口さんの演奏とは違って、甘くてソフトな演奏でした。
2曲目以降は湊元さんのピアノとの共演です。ピアノの蓋はわずかに開けられただけで、音量は抑えられ、ちょっとこもった音になりました。以後も鍵冨さんの曲目紹介を交えながら演奏が進められました。
2曲目はフランクのソナタで、今日のコンサートの中では大曲になります。最初はどうかなあという印象を感じましたが、次第にのってきて、第4楽章は湊元さんの熱演もあり、どうにか盛り上がった良い演奏になりました。
後半は小品ばかりで、内容的には乏しいように思います。演奏そのものは良かったですけれど。情感に溢れ、心に染みる良い演奏でした。湊元さんのピアノも良かったです。鍵冨さんファンは楽しまれたことでしょう。
リサイタルとしては、内容的に乏しいといわざるをえません。もっとも、リサイタルではなくて、コンサートとしているわけですけれど。曲目も、フランクのソナタのほか、シンコペーション、ウィーン奇想曲、ヴォカリーズは2008年のリサイタルで演奏されていて、新味がありません。曲目の工夫もあった方が良かったように思います。6年間の進歩を期待したのですけれど・・。
あと、残念だったのは、湊元さんの紹介がなおざりだったこと。ちゃんとフルネームで紹介すべきと思いますし、共演者への敬意が感じられなかったのは残念に思いました。自分だけ花束2つもらって、湊元さんにはなし。ひとつ渡すのが男でしょうに・・。コンサートが何とか形あるものになったのは湊元さんのお蔭なのに、単なる添え物程度の扱いはないでしょう。
と、気になったことを書かせていただきましたが、演奏はそれなりに良かったです。今後のさらなる研鑽と活躍を期待したいと思います。
(良く考えてみましたら、これは鍵冨弦太郎後援会主催のコンサートであり、ファンクラブの方々や関係者のためのコンサートいうことなら、これで良かったのかもしれませんね。部外者が勝手に文句を言ってすみませんでした。)
(客席:E−6、\2500) |