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フィリピン活動記:

第5号報告書

第5号報告書(赴任24ヶ月目)として、以下の項目について報告します。


1. 活動期間延長について
2. 活動報告
3. 中止した活動
4. その他

※ 文中には「付録参照」とありますが、付録は掲載していません。ご了承ください。


1. 活動期間延長について

※1) ここで述べる活動期間延長期間の活動計画は、活動期間延長申請当時(2005年1月)のものです。実際の活動にあたっては、途中でその計画を変更しました。理由は、病気療養による日本への一時帰国のためです。詳しくは後述「1.4. 延長期間での活動計画の変更について」、「3. 中止した活動」を参照。また、そのため、ここで述べる活動期間延長の活動計画等と後述する活動報告にて矛盾が生じる箇所があります。ご了承ください。

1.1. 活動期間延長の理由

1.1.1. 現在の問題点

現在の活動上の問題点を次のとおり報告いたします。

(1) 学生情報管理システム構築プロジェクト

配属先では、私の赴任から現在まで、何度か組織変更が行われました。そのたびに業務モデルが変化しました。これは当初は予測できなかった問題です。
情報システムは分析、設計、開発、テストの各工程を経て稼動に至ります。しかしながら、分析、設計を行った時点と、システムが稼動した時点では組織体制、業務モデル、システムに対する考え方が異なりました。
そのため、設計時に考えていたいくつかの機能が稼動しないばかりか、それが障害となって現れてきました。
以前の組織は、システムに対して厳格なデータ管理を求めており、この要求を受けてシステムが設計されました。しかし、現在の組織ではシステムに対して柔軟なデータ管理を求めています。このことがシステム運用の障害となっています。

発覚している大きな問題点を具体的に示します。

  • 以前の組織はデータの漏洩を防ぐためデータの2次加工を認めないとしたが、現在の組織はエンドユーザコンピューティングを推進するようになり、データの2次加工が必要となった。
  • 限られた担当者しか扱わないようにシステムが設計されたが、業務プロセスの変更により、すべての教職員がシステムを扱えるようにしなくてはならなくなった。
  • 卒業時まで固定であった学生IDが、年度ごとに採番するように変更された。
  • 学部ごとに管理していた教職員IDが、全学部でユニークなIDに変更された。

(2) ネットワーク化プロジェクト

LAN構築の次の段階であるインターネットへの接続が遅れています。
インターネット接続方法の調査を行い(2004年2月まで)、ADSLを用いたインターネット接続を導入することにしました。しかし、その後、電話会社側において接続調査に時間がかかった上、その結果、配属先の建物は地理的制約よりADSL導入が不可能であることが判明しました(2004年7月)。
他の方法を検討し、ダイヤルアップIP接続にてインターネット接続を行うこととし、電話会社側に配線を依頼しました(2004年11月)。しかし、2004年12月、ルソン島中部、北部を襲った台風の影響により、電話会社側の技術者が不足するといった事態が発生し、ダイヤルアップIP接続導入までにはしばらく時間がかかる見込みです。


1.1.2. 延長に至る理由

学生情報管理システム構築プロジェクトにおいては、現在の業務モデルにあわせてシステムを見直し、設計をやり直し、システムの修正を行う必要があります。
私の活動方針として、第一に自助努力を考えています。そのため、システムの分析、設計から開発に至るまで、なるべく、現地スタッフを主体にするようにしてきました。現在仮稼動しているシステムは、現地スタッフが自ら分析、設計、開発を行うようにしました。私はそれを取りまとめ、管理し、技術指導をしただけに過ぎません。
その結果、1.1.1. (1)で述べたとおりの問題に直面することになりました。
しかしながら、私の活動方針は間違っていないと考えています。私だけが作業をするのではなく、できるだけ現地スタッフが主体となって進めることで、彼らが技術と自身を身につけ、継続的にシステム開発を行う環境と能力が出来上がると考えています。
そのため、今回のシステムはただ開発しただけではなく、再度システム設計をやり直し、システムの修正を行うことにしました。
システム設計、開発は任期内に終了できる見込みですが、その後、システムが本格的に運用されるまでの保守には、システムの稼動サイクルである1セメスタが必要です。これは、大学業務がセメスタ単位で行われているからです。保守作業には、操作指導および、実際も業務との調整を行います。またセメスタ終了後に、システムの再修正およびテストに2ヶ月を要します(前回のシステムでは再修正とテストにも2ヶ月かかったことから、今回も2ヶ月を要すると考えています)。
次のセメスタは6月から10月までであり、システムの再修正およびテスト期間の2ヶ月を加えると12月までプロジェクトにかかわるため、5ヶ月間の延長申請に至りました。
これによりモデルとなる学生情報管理システムを完成させることができます。

ネットワーク化プロジェクトにおいては、モデルとなる工学部内LANにて、LAN敷設、Webサイトのコンテンツが完成し、インターネット接続を残すのみとなっています。
1.1.1. (2)で述べたとおり、災害により遅れている電話回線の敷設ですが、順調に進めば、サマーシーズン中に回線が敷設され、インターネット接続作業を行い、次期セメスタ中のインターネット接続導入が見込まれます。この後、Webサイトの公開作業、インターネット接続作業後の保守管理指導にそれぞれ1ヶ月を要します。これらの作業を完了させて引き継ぎが終了するのが次期セメスタ期間中となるため、延長申請することにしました。

なお、後任を要請していますが、各学部、各校舎への学生情報管理システムの移植、LANの構築指導は後任に引き継ぎたいと考えています。


1.2. 延長期間での活動計画

任期延長にかかわる活動の計画を次のとおり報告いたします。


1.2.1. 学生情報管理システム構築プロジェクト

(1) プロジェクト要員

ここでは省略します。

(2) 工程

  • システム調査、分析
    現在のシステムを見直し、問題点を洗い出す。現在の業務を調査する。
  • システム設計
    システム分析の結果に基づき、システムの外部設計を行う。この時点で業務マニュアルを作成する。
    内部設計を行い、コンピュータ上でどのように動作させるか定義する。
  • システム開発
    設計に基づき、開発を行う。
  • テスト
    開発したシステムのテストを行う。
    実際の業務に耐えられるかどうかのテストもここで行う。
  • データ移植、入力
    仮稼動しているシステムに格納されているデータを、新システムに移植する。
    新たに必要なデータについては、新システム稼動後にデータ入力を行う。
  • システム保守
    操作指導および、実際も業務との調整を行う。
  • システム再修正とテスト
    実際の業務との異なる点について修正し、テストを行う。
  • 引継ぎ資料作成とまとめ
    引継ぎのための設計書類などをまとめる。

1.2.2. ネットワーク化プロジェクト

(1) プロジェクト要員

ここでは省略します。

(2) 工程

  • インターネット接続作業
    LANをインターネットに接続させるための作業を行う。
  • Webサイト公開作業※2)
    Webサイトをインターネット上で公開するための作業を行う。
    なお、Webサイトのコンテンツ作成は完了している。
  • ネットワーク保守管理指導
    完成したネットワークを継続的に保守、維持していくための指導を行う。

※2) Webサイト公開作業はすでに完了済みです。「第4号活動報告書」参照。


1.3. 活動カレンダー

1.3.1. 学生情報管理システム構築プロジェクト工程表

ここでは省略します。


1.3.2. ネットワーク化プロジェクト工程表

ここでは省略します。


1.4. 延長期間での活動計画の変更について

上記1.2.〜1.3.にて延長期間中の活動計画について述べましたが、実際の活動には変更が生じました。学生情報管理システムの構築支援が不可能となりました。理由は、私の病気療養のための日本一時帰国です。詳しくは後述「3. 中止した活動」にて述べます。

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2. 活動報告

2.1. 大学管理棟LANの再構築

(1) 活動目標

現在、大学管理棟には一部LANが構築されています。
大学管理棟には2000年度にLAN機材を購入したが、その後まったく使われていませんでした。配線すらされていませんでした。2004年度に、現在のカウンターパートでもあるネットワーク担当者がこの問題を解決すべく、LANの再構築を行いました。現在、LANの一部が敷設されています(図2-A参照)。これを拡張してすべてのオフィスにLANを敷設するのがこの活動の目標です。(「付録1・ネットワーク図」参照)
すべてのオフィスにLANを敷設することで、すべてのオフィスからインターネットに接続することが可能になります。また、学生情報管理システムを導入することも可能になります。

図2-A 大学管理棟のHUB 図2-A:大学管理棟のHUB

(2) 活動内容

  • すべてのオフィスへのLANの敷設
    すべてのオフィスへのLANの敷設を行いました。
    なお、機材購入時と比べて、コンピュータの台数が増えたため、すべてのコンピュータを接続するにはいたりません。そこで、各オフィス1台のコンピュータをネットワークに接続することにしました。
  • ネットワークアドレスの変更
    今後のネットワーク拡張を踏まえて、ネットワークアドレスの変更を行いました。
    当初の管理棟のネットワークアドレスは、クラスC、192.168.0.0/24でした。このアドレスはネットワーク機器の初期値として使われることが多く、問題を引き起こす可能性があります。また、後述する無線を利用した他校舎への接続も行うため、将来を見通してネットワークアドレスを設定しなくてはなりません。
    そこで、ネットワークアドレスアドレスを、クラスB、172.16.0.0/16とし、管理棟(カリグ校舎)の端末のIPアドレスを172.16.2.0〜172.16.2.254、カリタン校舎の端末のIPアドレスを172.16.1.0〜172.16.1.254としました。
    インターネットへの接続が完了した時点で、再度ネットワークアドレスを変更しました。管理棟(カリグ校舎)のネットワークアドレスをクラスC、172.16.2.0/24、カリタン校舎のネットワークアドレスをクラスC、172.16.1.0/24としました。
    これにより、ネットワークアドレスの変更が完了しました。

(3) 活動成果

  • すべてのオフィスにおいてインターネット接続が可能になった
    すべてのオフィスにLANを敷設したことで、すべてのオフィスにおいてインターネットが利用できるようになりました。
  • ネットワークアドレスが体系化された
    ネットワークアドレスを将来を見通したものに変更したため、拡張が容易になりました。

(4) 今後の課題

すべてのオフィスにLANを敷設しましたが、すべてのコンピュータが接続されたわけではありません。
すべてのコンピュータをLANに接続するため、必要な機材の見積もり、購入申請を行いました。なお、機材が到着するより前に私が帰国してしまいますが、この活動はカウンターパートが継続して行っていきます。


2.2. 無線を利用したインターネット接続環境構築

(1) 活動目標

カリグ校舎(メインキャンパス)とカリタン校舎間(直線距離約5km)を無線ネットワークで結ぶと共に、カリタン校舎をDSLでインターネットに接続することで、メインキャンパスであるカリグ校舎もインターネットに接続する計画です。
今までの活動報告書で述べてきたとおり、メインキャンパスは電話局から遠いため、インターネット常時接続ができませんでした。この無線ネットワーク接続を利用することで、インターネット常時接続が実現できます。
この長距離間無線ネットワーク接続を提案したのは、カウンターパートでした。彼女が無線について調べて、実現可能であることを突き止めました。私としては、無線を利用することは思いつきませんでした。その理由は、日本では屋外で勝手に電波を飛ばすことに問題があるし、建物も多いため無線での接続が困難なためです。
カウンターパートがプロポーサルを書き、無線ブリッジの設置は業者に委託しました。私はインターネット接続作業に関して技術指導を行いました。(「付録2・インターネット接続計画書」参照)


(2) 活動内容

両校舎に無線ブリッジを設置し、無線ネットワークで結びます(図2-B、図2-C、図2-D参照)。カリタン校舎にはDSLを導入しました。ネットワークサーバには、Linuxを利用し、IPマスカレード、プロキシサーバ、ファイアウォールを導入しました(「2.3. Linuxネットワークサーバの構築」参照)。

図2-B カリグ校舎の無線ブリッジ 図2-B:カリグ校舎の無線ブリッジ
図2-C カリタン校舎の無線ブリッジ 図2-C:カリタン校舎の無線ブリッジ
図2-D 無線ブリッジ用スイッチ 図2-D:無線ブリッジ用スイッチ

(3) 活動成果

両校舎間がネットワークでつながり、授業登録等の作業に利用できるようになりました。また、メインキャンパスであるカリグ校舎において、インターネットが利用できるようになりました。


(4) 今後の課題

  • 停電
    カリタン校舎において停電が発生すると、カリグ校舎でインターネットの利用ができなくなります。この問題に対処するために、カーバッテリを利用した無停電電源装置を導入することにしました。詳細は次の活動報告書で報告します。

  • 無線ブリッジは高い位置にあるため、雷に当たると、ネットワークにつながっているすべての危機が被害を受けます。そのため、避雷針を設置することにしました。
  • 両校舎間の直線距離上に建物が立つと、無線接続ができなくなる
    両校舎間の無線は屋外をとおるため、その上に高い建物が建つと無線がさえぎられることになります。しかしながら、田舎であるため、しばらくの間は高い建物は建たないものと考えています。

2.3. Linuxネットワークサーバの構築

(1) 活動目標

表2-iのとおり、各サーバを構築します。


(2) 活動内容

それぞれのサーバを構築しました。サーバコンピュータの台数は2台です(図2-E、図2-F、図2-G参照)。構築にあたっては、私が構築方法をカウンターパートに指導し、カウンターパートが実際に作業をするといった形で行いました。これにより、私がいなくてもカウンターパートが継続して運用できると考えます。
なお、プロキシサーバ(子)を利用すると、クライアントからインターネットへのアクセスが遅くなるため、今回は構築しただけで使用しないことにしました。
サーバ構築指導の過程で、ネットワークコマンド一覧表、Linuxコマンドリファレンス等の資料を作成し、カウンターパートおよび配属先の各キャンパスに配付しました。

図2-E カリタン校舎に設置したサーバ 図2-E:カリタン校舎に設置したサーバ
図2-F カリタン校舎に設置したサーバの背面 図2-F:カリタン校舎に設置したサーバの背面
図2-G カリグ校舎の大学管理棟に設置したサーバ 図2-G:カリグ校舎の大学管理棟に設置したサーバ

(3) 活動成果

  • インターネットへの常時接続が可能になった
    プロキシサーバを利用することで、各クライアントからインターネットにアクセスすることができるようになりました。また、セキュリティを保つためにファイアウォールを導入し、外部からのアクセスは完全に遮断するようにしています。
  • 管理棟の各クライアントを管理できるようになった
    ドメインコントローラの導入により、各クライアントを管理できるようになりました。
  • ファイルサーバの導入
    ファイルサーバを導入し、業務において共有ファイルの利用が容易になりました。

2台のサーバコンピュータとも、Fedora Core 3 Linuxを利用しました。Linuxはフリーであるため、ライセンスを購入する必要がありません。Windowsを利用すると約20万ペソの接続ライセンスを購入する必要がありますが、Linuxの場合はただです。ほとんど予算をかけずに高性能なサーバが構築できました。
サーバにはUPSを設置し、停電時には自動的にシャットダウンするように設定しました。サーバコンピュータにおいては停電時に問題は発生しません。


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3. 中止した活動

2005年3月18日から2005年4月30日にかけて、病気のためマニラの病院に入院、日本に一時帰国したため、やむを得ず断念したプロジェクト、活動がありますので報告します。

3.1. 大学情報管理システムの開発支援中止

活動延長の理由でもある大学情報管理システムの開発支援(「1.2. 延長期間での活動計画」参照)を中止しました。このプロジェクトは大学のセメスタにあわせて開発をする計画でした。したがって、開発自体を半年後または1年後に先延ばしせざるを得ませんでした。
この計画に当てていた時間を、大学管理棟LAN敷設、インターネット接続作業にあてました。


3.2. Linuxセミナーの開催中止

Linuxのセミナーをサマーセメスタ中に開催することを企画していましたが、これを中止しました。予定では、Linuxなどのオープンソースを利用したシステム開発のセミナーを、講師をカウンターパートはじめとした大学の講師陣、対象を政府機関、他大学として開催する予定でした。

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4. その他

日本の九州大学宙空環境研究センターの方々が、配属先カガヤン国立大学を訪れました。彼らは自分たちの研究のために、配属先のネットワークを利用したいとのことでした。
配属先のネットワークは24時間稼動していませんが、彼らは24時間ネットワーク接続をしたいとのことでした。ネットワークを24時間稼動させるためには、無停電電源装置などの設備が必要となります。これらの機材の購入を九州大学のほうで協力していただけることになりました。
ただ資金や物を提供するのではなく、双方にとって利益のあるこのような協力形態は非常によい形だと思われます。

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