第3号報告書 |
第3号報告書(赴任12か月目)として、以下の項目について報告します。 |
1. 業務内容の概要 2. 支援体制 3. 活動報告 4. 今後の活動計画 5. その他 |
※ 文中には「付録参照」とありますが、付録は掲載していません。ご了承ください。 |
1. 業務内容の概要 | |
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1.1. 受入希望調査表との差異
実際の隊員活動内容と受入希望調査表の内容との間での差異はほとんどありません。配属先で期待している業務内容と受入希望調査表の記載事項は一致しており、隊員活動上問題になるようなことはありません。
しかしながら、受入希望調査表記載事項において現状とは異なった点がいくつかありました。この点について報告します。なお、これらは現在の隊員活動において影響はまったくありません。 (1) 受入希望調査表記載事項と赴任時の状況との差異
配属先がボランティアを要請したのは2000年12月、隊員が赴任したのは2003年7月であり、2年半以上の歳月が流れています。そのため、受入希望調査表記載事項と赴任時の状況とで異なる点がいくつかありました。
(2) 疑問に思った事項
1*) 受入希望調査表には「カガヤン州立大学」と記載されていますが、誤訳とのことなので、ここでは「カガヤン大学」と書きます。 1.2. 配属先同僚の技術レベル (1) コンピュータ利用水準
配属先同僚のコンピュータ利用水準は第2号報告書で述べましたので、ここでは省略させていただきます。(「第2号報告書 2.2.コンピュータ利用水準」を参照) (2) カウンターパートの技術レベル
2人のカウンターパートのうち1人はハードウェアに精通しています。トラブルシューティングを得意とし、ハードウェアの修理や基本ソフトのインストールの業務を行っています。
もう1人のカウンターパートはコンピュータ学科の学科長であり、ソフトウェアの分野を得意とします。向上心があり疑問に思ったことは何でも質問してきます。
どちらのカウンターパートも、隊員の指導により、スクリプト言語PHP、データベースMySQLを扱えるようになり、自分たちの手でWebとデータベースを組み合わせたWebシステムを開発できるようになりました。 1.3. 隊員の配属先での位置付け
ITコーディネーター、アドバイザーとして、コンピュータシステムやネットワークに関わる業務の調整役を行っています。 1.4. 業務上の障害と対策
活動上深刻な障害はありません。障害や問題に直面しても何とか解決してうまくやっています。 (1) 人事異動について
第2号報告書で人事異動について報告しましたが、その後、再度人事異動がありました。 (2) 技術書の不足
全般的に技術書が不足しています。教職員や学生が新しい技術を勉強したくても、なかなか技術書が手に入れることができません。技術書は高価であるだけでなく、数が少ないからです。 (3) ハードウェア資源が満足でないこと
コンピュータシステムの開発、運用を行うための、また、コンピュータ教室を維持するための設備が足りません。
学生情報管理システム開発中の出来事です。停電でテストサーバのハードディスク装置が故障し、プログラムが失われてしまいました。予算の都合上、そのテストサーバにはUPS*2)が接続されていませんでした。それが原因となってこの障害が発生しました。
先日、UPSのバッテリーが無くなりました。UPSがないと停電の際にコンピュータが致命的なダメージを受ける恐れがあるため、UPSの新規購入を提案しました。UPS購入のための予算を作ることは可能との判断が下りましたが、手続きの都合上、購入までには時間がかかるとのことでした。
*2) UPS=無停電電源装置、非常用の電源として使用する装置。 |
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2. 支援体制 |
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2.1. 支援経費の使用計画等について
隊員支援経費やその他支援経費の申請は今のところまったく考えていません。 2.2. 活動期間延長について
5か月程度の活動期間延長を考えています。 *3) セメスタの期間はおおまかにいうと次のとおりです。第1セメスタ=6月〜10月、第2セメスタ=10月〜3月、サマー(夏休みおよび夏季特別授業)=4月〜5月。 2.3. 後任の必要性
後任の要請が必要だと考えています。
2.4. その他
この地域の他の国立大学(State University)にも、コンピュータ技術のボランティアの要請を呼びかけていきます。 |
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3. 活動報告 | |
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3.1. 学部内LANの再構築(継続)
第2号報告書で報告した活動から継続して、学部内LANの再構築を行っています。 (1) 活動内容
(2) 活動成果
*4) 配属先では予算不足のため、CD-ROMはごく一部のコンピュータしか搭載されていません。(「第1号報告書」参照) (3) 今後の課題
3.2. Linuxサーバの構築指導 (1) 活動目標
(2) 活動内容
(3) 活動成果
(4) 今後の課題
3.3. Web技術の紹介と指導 (1) 活動目標
(2) 活動内容
(3) 活動成果
3.4. 学部内学生情報管理システムの開発支援 (1) 活動目標
(2) 活動内容
(3) 活動成果
(4) 今後の課題
3.5. コンピュータ学科の授業の見学と支援
今までの活動は、大学の業務を支援するという形で行い、大学教育に接する機会を持っていませんでした。 (1) 活動内容
(2) 今後の課題
この活動を通して、学生と接する機会が増えました。 3.6. WBT(Web Based Training)モニター参加
JICA本部から募集されたWBT(Web Based Training)の試行的実施のためのモニターに、配属先の教職員2人が参加しました。
参加したのはカウンターパートとコンピュータ学科の先生の2人です。Database Fundamentals、E-Commerce、Linuxの3コースを受講しました。
配属先にはインターネット接続環境がないため、受講に当たっては研修者が自宅で全てのコンテンツをダウンロードしてから研修を行うという方法で進めました。
研修修了後の成果は次のとおりです。
研修者は、今後もこのようなインターネットを利用した研修を受講することを希望しています。 3.7. カウンターパートの地方自治体研修への推薦
カウンターパートを地方自治体研修へ推薦しました。
地方自治体研修の参加により期待できる効果は、次のとおりです。
3.8. 継続が困難である活動内容について
活動を続けていく中で、これ以上の活動は困難と考えられる内容がありますので報告いたします。 (1) コンピュータ教室の環境再整備
当初はコンピュータ教室の環境を再整備することを予定していました。 (2) プリントサーバの構築
プリントサーバの構築を計画していました。 (3) DSLを利用したインターネット常時接続
DSL5*)を利用したインターネット常時接続を計画していましが、地理的制約によりこれを断念することにしました。 5*) DSL(Digital Subscriber Line)=高速ディジタル伝送方式のこと。フィリピンでは日本と同様に既存の電話線を使うADSLが普及しています。 |
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4. 今後の活動計画 |
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4.1. 学部内学生情報管理システムの導入と他学部への適用調査と移植
学部内学生情報管理システムは完成に近づいており、カスタマイズ、最終テスト、データ移行を経て導入する予定です。 4.2. LinuxによるWindowsドメインコントローラの構築
現在、各コンピュータは別々に管理されているため、運用と保守が困難になっています。また、LANの敷設に伴い、情報資源の簡単な管理が求められています。 4.3. 他学部、他校舎のLAN構築
工学部内のLANはほぼ完成しています。 4.4. 大学ホームページの構築支援と公開
大学ホームページ構築の支援を考えています。 4.5. コンピュータ特別授業の開催
コンピュータの特別授業を開催し、実践的な内容を指導することを計画しています。 4.6. JICA-Netの利用
コンピュータ学科の修学旅行時に、JICA-Netを見学することを考えています。 4.7. コンピュータ学科のカリキュラムレビュー
コンピュータ学科の先生たちとともに、カリキュラムのレビューを考えています。
6*) JITSE(Japanese IT Standards Examination)は、いわば日本の基礎情報処理技術者試験のフィリピン版です。合格すれば日本の同試験に合格したことと同じとみなされます。 |
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5. その他 |
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赴任して1年が経過しました。
配属先の人事異動が2度も行われ、その度に活動が危機的な状況に陥りました。しかし、自分の活動を信じることで何とかそれを乗り越え、現在に至っています。
配属先では、(日本の民間企業で働いていたときと比べて)特に忙しいわけでもなく、だからといって暇なわけでもありません。走り回ったりすることもあれば、停電などで何も出来なく一日中ぼーっとして過ごしていることもあります。
当初は、フィリピン人と一緒に何か「面白いこと」が出来ればいいかなと考えていました。しかし、「面白いこと」だけにとどまらず、自分の期待以上に効果が現れて活動が進んでいくので、正直驚いています。(もっとも、その自分の期待というものがかなり低かったのかもしれません。)
最近の悩みと言えば、このような活動をしているからか、任地を離れるのが不安に感じられることです。
赴任当初は、フィリピンと日本を比べて、フィリピンの悪いところが目に付き、日本はなんてすばらしい国なのだろうと感じていました。しかし、半年くらいたったあたりでちょっとした疑問を感じ、その後はフィリピンの良いところを見て、日本のおかしな点が目に付くようになりました。ひょっとしたら現在の日本の社会は間違っているのではないだろうか、今まで自分が当たり前と思っていたことは不自然で非人間的なのではないだろうかと考えるようにもなりました。
現在は隊員活動も私生活も何の問題もありません。しかし、今後は活動方針が変わるかもしれませんし自分の考え方も変わるかもしれません。 |
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