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フィリピン活動記:

第4号報告書

第4号報告書(赴任18ヶ月目)として、以下の項目について報告します。


1. 任国外旅行
2. 任国内旅行
3. 業務上の調査/考察事項
4. 活動報告
5. 今後の活動計画

※ 文中には「付録参照」とありますが、付録は掲載していません。ご了承ください。

※ プライバシーを考慮して、掲載している画像には軽くぼかしをいれています。ご了承ください。


1. 任国外旅行

任国外旅行には行きませんでした。
当初は任国外旅行を計画していましたが、スマトラ地震の被害を考慮し、これを取りやめました。

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2. 任国内旅行

セブにて開催された「Bayanihan Linux セミナー」にカウンターパートとともに参加しました。(図2-A、図2-B参照)
これはDOST主催のセミナーで、小高隊員の配属先がこれに協力しています。私たちの他にも小柳隊員、斉藤隊員が同僚を連れて参加していました。
私の配属先からは、工学部で一緒に仕事をしている教員、大学のネットワークを担当している職員、私の3人で参加しました。
参加の理由は、1) 配属先のプロジェクトであり私の要請内容でもあるネットワーク構築、インターネット接続に役立つから、2)プロジェクトのネットワークサーバ構築にあたってはLinuxを使用することを検討しているからです。
配属先がカウンターパートと私の3人分の交通費+宿泊費約P36,000を支給してくれました。配属先としていかに力をいれているプロジェクトかが伺えます。

図2-A セミナーの様子1 図2-A:セミナーの様子1
図2-B セミナーの様子1 図2-B:セミナーの様子2

セミナーの内容は、Linuxを用いてハードディスクなしの端末を構築するというものでした。受講したことにより、カウンターパートはLinuxの基礎知識を習得することができました。
また、この機会を利用して、私のカウンターパートと、小柳隊員、斉藤隊員のカウンターパート同士で情報交換する機会を持ちました。(図2-C参照)
フィリピンの組織主催のセミナーに参加し、フィリピン人同士で勉強し、フィリピン人同士で情報交換できたことは成果が大きいです。自分たちでもできるという自信がもてますし、横のつながりができました。
JICA主催の研修などより、国内で開催されている研修に参加させることのほうが効果が大きいのではないかと考えます。

今回、北ルソン出身のカウンターパートをセブに連れて行ったことで、フィリピンおよびフィリピン人に関して興味深いことを感じました。
カウンターパートはセブの人たちとうまくコミュニケーションが取れませんでした。セブではホテルなどではタガログ語が通じますが、ジープニーの運転手などはタガログ語を話してくれません。現地語がセブアノ語であるからです。
たとえば、ジープニーに乗ったとき、降りたい場所でカウンターパートが「Para!」といいましたが、ジープニーは止まってくれず、運転手に尋ねてもセブアノ語で返事が来るので、カウンターパートはまったく理解できないようでした。同じフィリピン人同士なのに言語が違うためまったく会話ができません。カウンターパートは自分の国の言葉であるタガログ語が通じないことに非常にショックを受けていました。
料理に関しても、北ルソンでは野菜中心であるのに対し、セブには野菜料理があまりでてきません。料理の味付けも異なります。このことに関してもカウンターパートは驚いていました。
同じフィリピンでもかなり文化が異なることに対して、カウンターパートが衝撃を受けていたことが非常に興味深かったです。

図2-C カウンターパート同士の情報交換会 図2-C:カウンターパート同士の情報交換会
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3. 業務上の調査/考察事項

3.1. コンピュータ学科カリキュラムとJITSEカリキュラムの比較

第2号報告書で報告した活動から継続して、学部内LANの再構築を行っています。

コンピュータ学科カリキュラムの見直しを行うため、コンピュータ学科のカリキュラムとJITSE試験のカリキュラムとの比較を行いました。
JITSEは日本の情報処理技術者試験のフィリピン版であり、フィリピンにおいてはITスキルを確認するための唯一の試験となっています。コンピュータ学科のカリキュラム向上のためだけではなく、フィリピンの学生と日本の技術者とのスキルの違いをみるためにも有効な調査と考えます。


3.2. 目的

  • コンピュータ学科のカリキュラム向上。
  • カリキュラムを現実社会の要求に合わせる。
  • 卒業生の国際競争力を高める。

3.3. 方法

  • 2002年度JITSEの試験をコンピュータ学科の5年生に実施し、結果を解析する。
  • JITSEのカリキュラムとコンピュータ学科のカリキュラムを比較する。
  • コンピュータ学科のカリキュラムを変更し、不足しているものはそれを補い、不必要なものは切り捨てる。

3.4. 結果

コンピュータ学科5年生16名に対して行ったJITSE2002年度午前の問題の結果を表3-iに示します。

表3-i:JITSE結果
カリキュラム 正解率
A. Computer Science 23%
B. Data Structures and Algorithms 23%
C. Hardware 39%
D. Basic Software 30%
E. System Configuration 33%
F. System Development 27%
G. System Operation and Maintenance 43%
H. Computer Networks 20%
I. Database 33%
J. Security 23%
K. Standardization 30%
L. Computerization and Management 33%

※ 詳しい結果は「付録1・Comparison with the curriculum between CpE and JITSE」を参照。


3.5. 考察

A. Computer Science コンピュータ科学

大学のカリキュラムには含まれているにもかかわらず、学生の弱点は数学である。教員は数学をどのようにコンピュータに応用するのかに重点をおいて教えるべきである。

B. Data Structures and Algorithms データ構造とアルゴリズム

大学のカリキュラムに含まれているにもかかわらず、学生の弱点はアルゴリズム解析である。学生は授業で習った内容を現実世界に応用することができないようである。
アルゴリズムはシステム開発の基礎となる科目である。教員はアルゴリズムの概要だけではなく応用も教えるべきである。

C. Hardware ハードウェア

大学のカリキュラムに問題は無い。学生は理論的な問題には確実に解答を出しているが、応用問題の正解率は低い。

D. Basic Software ソフトウェアの基礎

大学のカリキュラムに問題は無く、また正解率もまあまあである。

E. System Configuration システム設定

この科目は大学のカリキュラムに含まれていないが、正解率は悪くは無い。教員は他の科目でこれをカバーしているようである。

F. System Development システム開発

大学のカリキュラムに問題は無いが、データベース理論を含めるべきである。
なお、システム開発の授業は5年生第2セメスタで行われる(試験実施時は第1セメスタ)。したがってこの科目の正解率は若干低めになっているがそれはしょうがないことである。

G. System Operation and Maintenance システム運用と保守

この科目は大学のカリキュラムに含まれていないが、正解率は悪くは無い。授業を通してこの科目がカバーされているためだと考えられる。

H. Computer Network コンピュータ・ネットワーク

学生の弱点はネットワークである。インターネットの基礎、TCP/IP、インターネットサービスなどをカバーするように、大学のカリキュラムを変更しなくてはならない。

I. Database データベース

大学のカリキュラムにはこの科目が含まれていない。コンピュータシステムのほとんどはデータベースに関係するため、データベース、正規化、SQLなどをカバーするように、大学のカリキュラムを変更しなくてはならない。

J. Security セキュリティ

セキュリティ、リスク管理、関係する法律やガイドラインは重要な科目であるにもかかわらず、大学のカリキュラムでは扱っていない。これらの科目をコンピュータネットワークの授業でカバーするべきである。

K. Standardization 標準化

大学のカリキュラムでは扱っていない分野なので、コンピュータ科学等の授業で扱うべきである。

L. Computerization and Management コンピュータ化と管理

大学のカリキュラムに問題は無い。学生は経験が無いにもかかわらず、結果は悪くは無い。


3.6. その他

この結果を元に、来年度からカリキュラムを変更することになりました。
今回の調査は、実際に学生に試験を実施させて、その結果を元にカリキュラムの向上を図るものでした。今までは話し合いだけで決められていましたが、今回は結果に基づいて考察するようにしたため、現実社会で求められているカリキュラムに変更されたものと考えています。

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4. 活動報告

4.1. 学部内学生管理情報システム

第3号報告書で報告した活動から継続して行っていたシステム開発が完了したので報告します。

(1) 活動内容

  • 開発、テストのすべての工程が終了しました。
  • システムの運用を開始し、データの入力を行いました。
  • システムのドキュメントは表4-iのとおりです。
表4-i:学部内学生情報管理システムドキュメント一覧
Process Title
Analysis System Components
System Structure
Preliminary Design Users Manual
Administrator's Handbook
User Categories
Screen Designs
Screen Transition Diagram
Conceptual Database Model
Detailed Design Relational Database Structure
Master Tables
Master Arrays
HTML Form Descriptions
Cookie and Session Specification
Program File Names
Program Relation Diagram
Individual Program Description
Test Individual Program Test Result
Test Specifications
Meta Data

※ 数百ページに及ぶため紙では添付できないので、ドキュメントCD-ROMを「付録2・学部内学生情報管理システムドキュメント」として添付します。

(2) 活動成果

  • 授業データをベースとしたドキュメントがシステム化されました。
  • いままで適当に処理していたデータが、しっかり管理できるようになりました。今までは紙の上で作業を行っていたためミスが多かったのが、まったくミスがでないようになりました。今まで柔軟性があったが*1)システム導入により融通が利かなくなったため、多少の混乱がありました。しかしながら、結果的には効率的な作業ができるようになりました。

(3) 問題点と今後の課題

  • システムの中で学生データを管理する部分は運用できませんでした。システム的には問題もなく、データの入力作業も終了していました。しかし、事務側で突然学生番号の振りなおしを行ったため、このシステムがそれに対応できなくなりました。もちろんこのシステム開発は、学部で開発して今後全体に広げていこうということで、学長とも話をしていました。しかし、事務員のひとりがMS-Accessを利用して学生データを管理するようになり、そのデータとの整合性が取れなくなりました。学長もこのことは把握していなかったようです。とりあえず今回はこのシステムから学生データを取り除いて運用し、今後どうやっていくかを話し合わなくてはなりません。

4.2. 大学公式Webサイト

(1) 活動内容

大学の情報を世界に流すため、公式Webサイト開発プロジェクトを立ち上げました。
このWeb開発のポリシーについて、工学部部長と話し合い、次のとおり定めました。

  • 情報を多く載せる。
  • 画像やアニメーションを多用しない。
  • 軽いWebサイトを目指し、ダイヤルアップIP接続でも快適にアクセスできるようにする。

このようなポリシーを決めた理由は、次のとおりです。

  • フィリピンにあるほとんどのWebページは、画像やアニメーションを多用した見た目が華やかなものが多いが、中身はまったく無い。アクセスするユーザは情報の取得を期待しているのであるから、画像やアニメーションはあまり意味が無い。情報量の多いページが求められる。
  • フィリピンでは通信状況が悪いため、やたらと重い画像やファイルを載せても、意味が無い。

Webサイトに必要な情報や文書データは、各キャンパス、各学部を訪問して取り寄せました。中には移動に半日を要する漁村や山間部もありますが、すべて自ら訪問して取り寄せました。

Webサイトの開発にあたっては、教員に作成させようと試みましたが、失敗に終わりました。教員はポリシーに反して、情報がほとんど無い、画像やアニメーションを多用した、重いWebページを構築しました。中身よりも見栄えをよくしようというのはフィリピン人の特性であり、しょうがない部分もあります。
例として私自身がサンプルWebページを作って見せたところそれが好評で、結局、私の作成したWebページを公式Webサイトとしようということで話がまとまりました。
このやり方は自分の活動方針に反するものでした。私の活動方針は、「フィリピン人に対して技術移転を行い、彼ら自身の手でシステムを作り上げる」ことでした。彼ら自身が開発したものであれば今後もメンテナンスをうまくやっていくでしょう。しかし、今回は「私が作ったものを、フィリピン人にあげる」ことになってしまいます。
しかしながら、今回私の開発したWebサイトは非常にシンプルなものであり、これを公開しておけば、あとで誰か更新しようとする人が出てくるはずです。私がやることはあくまできっかけであって、あとは現地スタッフの手にゆだねることにします。

Webサーバにはホスティングサービスを利用して、外注化することにしました。その理由は次のとおりです。

  • 学内にサーバを設置するには、導入にも運用にも多大なコストがかかる(導入費約P100,000+通信費+人件費)。比べて外注のホスティングサービスは、導入も運用も低コストですむ(1ヶ月約P500)。
  • 停電が多いため、学内にWebサーバを設置しても24時間運用できない。

(2) 活動成果

  • 公式Webサイトが開設されました。(図4-A参照)
  • 予想通り、3人の教員たちが興味を持ってやってきました。彼らは自分たちの手でWebサイトを発展させたいと言っています。今後はプロジェクトチームを作って運用していくように提案したいと考えています。
図4-A 配属先公式Webサイト 図4-A:配属先公式Webサイト

4.3. 学部内LAN

第3号報告書で報告した内容から引き続き、学部内LANの構築を行いました。
配属先の予算で物品を購入し、工事が終了しました。これにより、学部内LANの構築はすべての作業を終了しました。


4.4. 修学旅行でのJICA-Net見学

2004年10月27日、コンピュータ学科の学生にJICA-Netを見学させました。(図4-B、図4-C参照)
目的は、「JICA-Netの設備を見学させ、実際に利用してみることで、学生たちに最新のコンピュータシステムに触れる機会を持たせる。」です。任地にはコンピュータシステムがあまりありません。そこでJICA-Netを見学させることが彼にとってよい機会であるだろうと考えました。
ひととおりJICA-Netの設備を見せていただいたあと、実際にマレーシアに接続して会話を試みました。学生たちにとってはよい機会だったと思います。
任地に帰ってから、学生にレポートを書いてもらいました。ほとんどの学生がJICA-Netのような会議システムに接するのは初めてで、大変よい機会だったと感じたようです。

修学旅行の日程がなかなか決まらず、結局正式な日程を連絡したのは当日朝でした。それにもかかわらず見学を快く受け入れてくれたJICA-NetのReubenさんに感謝しています。

図4-B JICA-Net見学の様子1 図4-B:JICA-Net見学の様子1
図4-C JICA-Net見学の様子2 図4-C:JICA-Net見学の様子2

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5. 今後の活動計画

5.1. 学部内学生情報管理システムの大学全体への導入

開発が終了して導入した学部内学生情報管理システムをカスタマイズし、大学全体へ導入することを計画しています。


5.2. 大学管理塔のLAN構築および無線ネットワーク構築

大学管理塔(Administration Building)のLAN導入を行い、業務の効率化を支援します。
また、管理塔のコンピュータ担当者が無線を利用したキャンパス間ネットワーク接続を考えているため、それを支援します。


5.3. 外部組織向けのLinuxセミナーの開催

今までカウンターパートに対して教えた知識を生かして、外部組織(他大学や政府機関等)向けに、Linuxを利用したインターネットサーバ構築、Webシステム開発のセミナーを行うことを計画しています。

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