北区フィルハーモニー管弦楽団 第10回ファミリーコンサート
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2021年12月12日(日)14:00 新潟市北区文化会館
指揮:長谷川正規
ゲストコンサートマスター:阿部智子
司会:高坂元己
 
第1部
モーツアルト:歌劇「魔笛」より 序曲
エルガー:エニグマ変奏曲 より ニムロッド
チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」より
           行進曲、冬の松林、グランドフィナーレ

(休憩15分)

大島ミチル:大河ドラマ「天地人」オープニングテーマ
星野勝彦編:聖夜の行進 〜みんなが主役!クリスマスメドレー〈楽器紹介〉
J.シュトラウスT世:ラデツキー行進曲
M.ジャール:映画音楽「アラビアのロレンス」
フォスター/星野勝彦編:草競馬 〜白熱の新潟競馬
A.L.ウェバー:オペラ座の怪人

(アンコール)
マスカーニ:「カヴァレリアルスティカーナ」間奏曲
J.シュトラウスT世:ラデツキー行進曲

 

 北区フィルハーモニー管弦楽団は、新潟市北区文化会館の開館を契機として、 2010年11月に設立された市民オーケストラです。
 驚異的なスピードでレベルアップし、演奏経験者だけでなく、楽器の初心者から育成するという独自のシステムもあって、市民オケのモデルケースとして注目されます。
 定期演奏会のほか、ファミリーコンサートを開催しており、訪問演奏もするなど、活発な活動は歴史の浅いオケとは思えないほどに充実しています。

 私は2011年5月のLFJ新潟プレ公演でのデビューコンサート、2011年10月の第1回ファミリーコンサート、2012年6月の第1回定期演奏会と聴かせていただいており、創立以来の大ファンであり、その変遷を陰ながら見守ってきました。
 できるだけ演奏会に行くようにはしてきましたが、仕事や他の公演と重なって、行けなかった演奏会もあったことが残念です。

 今年6月の第9回定期演奏会は、是非とも行きたかったのですが、この日は先にチケットが発売されて買っていた新潟交響楽団第106回定期演奏会に行ったため、聴けませんでした。
 そこで、今回の第10回ファミリーコンサートは何としても聴きに行こうと考え、他のコンサートのお誘いも断って、こちらを選択しました。
 私の知人が出演されており、このコンサートに行くことをお話ししたら、チケットをいただいでしまいました。ありがとうございました。

 今日は日曜日。天候が優れず、気分も暗い朝を迎えました。ネコと戯れ、昨日のコンサートの記事を仕上げてアップし、ゆっくりと昼食を摂り、雨のバイパスを豊栄へと向かいました。
 海老ヶ瀬ICから下道に降り、泰平橋を渡って右折し、新井郷川沿いを進んで豊栄入り。家から27km、快適なドライブで1時前には北区文化会館に到着しました。
 中に入りますと、開場時間まで時間がありましたが、既に開場待ちの列が長く伸びており、折り返した列に私も並びました。1時半の開場と思ってのんびりと向かったのですが、1時15分の開場だったんですね。客の出足は早いようで、ちょっと誤算でした。

 開場時間となり、検温を受けて入場。受付横には高坂館長さんがおられましたので、挨拶をさせていただきました。館長さんは、開演前のアナウンス、司会、ナレーションと大忙しで、大変ご苦労様です。

 開演が近付くに連れ、客席は埋まり、ほぼ満席の大盛況です。地元の方々に愛されていて何よりですね。配布されたプログラムを見ますと、今回の演奏曲は、10回記念ということで、過去の演奏会で演奏された曲が選ばれています。

 時間となり、拍手の中に団員が入場。1曲目は、第1回ファミリーコンサートの第1曲目に演奏された記念すべき曲のモーツアルトの「魔笛」序曲です。弦楽アンサンブルも美しくまとまり、聴かせ所の輪唱の様な弦の掛け合いもバッチリで、管も美しく、オケの水準の高さを見せつけてくれました。

 ここで、司会の高坂館長さんの挨拶とオケの紹介、曲目紹介があり、以後、高坂さんによる軽妙な司会進行で、楽しく演奏が進みました。

 2曲目は、第2回定期演奏会で演奏されたエルガーの「ニムロッド」です。美しい弦楽アンサンブルがゆったりと美しいメロディを奏で、やがてフルオーケストラの壮大な音楽へと昇華し、感動の音楽を創り上げました。ふくよかなオーケストラサウンドはアマオケとは思えないほどの仕上がりでした。

 ここで、初心者の育成コース出身の団員へのインタビューがあり、他のアマオケとは一線を画す北フィル独自の育成システムの素晴らしさを垣間見せました。

 前半最後は、第5回ファミリーコンサートで演奏されたチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から、「行進曲」、「冬の松林」、「グランドフィナーレ」の3曲が演奏されました。バックには映像が投影され、軽快な行進曲でおとぎの世界へと誘われ、情感豊かなオーケストラサウンドで音楽劇を楽しみました。

 休憩の後の後半は、照明が落とされた中に団員と指揮者が入場し、チューニングもないままに、大河ドラマの「天地人」のテーマで開演しました。直江兼続のトレードマークともいえる兜の前立ての「愛」がバックに映し出されて、打ち鳴らされる太鼓と共に、壮大な迫力ある音楽が演奏されました。
 この曲は、昨年までこのホールで毎年12月に開催されていた大谷康子さんのコンサートで毎回演奏されており、今年も聴けて良かったです。

 ここで、楽器紹介コーナーとして、北フィル指揮者の星野勝彦さんの作編曲による「聖夜の行進」が演奏されました。高坂さんのナレーションと共に、管楽器、打楽器、弦楽器と、おなじみのクリスマスソングに載せて演奏され、楽器の紹介と共に、ひと足早いクリスマス気分に浸らせてくれました。
 今日のために作られた曲で、本日初演ということになります。星野さんも客席で聴いておられ、大きな拍手が贈られました。このまま埋もれさせておくにはもったいない曲であり、どこかで再演されると良いですね。

 続いては第3回ファミリーコンサートで演奏された「アラビアのロレンス」です。ティンパニの強打で始まるモーリス・ジャールの壮大な音楽を見事に再現し、迫力あるオーケストラサウンドで魅了されました。バックには砂漠やアラブの風景が投影され、ムードを盛り上げていました。

 次は、第6回ファミリーコンサートで演奏された曲で、フォスターの「草競馬」を星野勝彦さんが「白熱の新潟競馬」として編曲した楽しい曲です。ファンファーレの素晴らしさに息を呑み、馬のいななきをトラペットで表現したり、ユーモアも交えた曲に仕上げて楽しませてくれました。

 プログラム最後は、第7回ファミリーコンサートで演奏された「オペラ座の怪人」です。これは最後を飾るに相応しい素晴らしい演奏でした。何を隠そう私は「オペラ座の怪人」ファンであり、CDやDVDを各種持っており、映画や劇団四季の公演も観に行っております。
 ロイド=ウェバーの名曲が次々とメドレーで現れ、バックに投影された映像と共に、物語の世界へと誘われ、感情移入させられました。文句なくいい演奏でした。

 指揮者とゲストコンマスに花束が渡され、アンコールとして「カヴァレリアルスティカーナ」間奏曲が、美しい弦楽アンサンブルで演奏され、心が洗われるようなしっとりとした感動に酔いました。
 このまま余韻を残して終わるかと思いましたが、打楽器が打ち鳴らされ、「ラデツキー行進曲」がもう一度演奏され、観客の手拍子ともに盛り上がって終演となりました。

 10回を祝うに相応しい素晴らしいプログラムであり、見事な演奏に酔いしれました。アマオケでこれだけの感動をもたらすなんて、やはり北フィルは奇跡のオケといえましょう。音楽の感動は演奏技術だけではない何かがあることを北フィルは教えてくれます。
 団員の入れ替わりもあり、様々な困難もあったに違いありませんが、高水準を維持し、さらに高みに向かっていることは賞賛すべきでしょう。
 新潟県内にはアマオケがいくつもありますが、ファミリーコンサートを定期的に開催して楽しませてくれているのは、長岡交響楽団と北フィルだけであり、新潟市内では貴重な存在です。数ある市内の各オケと比較することなど意味はなく、唯一無二の存在です。北区のみならず、新潟市の宝といえましょう。

 高坂さんの司会と共に繰り広げられた肩の凝らない音楽は素晴らしく、楽しいひと時を過ごしました。音楽は芸術であり娯楽です。深刻ぶって聴く音楽も良いですが、やっぱり音楽は楽しくなくてはいけませんよね。

 音楽を演奏する楽しみがダイレクトに伝わってきて、それが聴く楽しみへとつながります。このような市民オケを持つ新潟の素晴らしさを感じながら、いい音楽を聴いた感動と満足感を胸に、小雨降る道を車を進め、家路に着きました。

 次回の演奏会は、来年6月26日(日)に開催される第10回定期演奏会です。伊奈るり子さんをソリストに迎えてのモーツァルトのクラリネット協奏曲ほかが演奏され、ゲストコンマスは加藤礼子さんです。第10回記念ということで、魅力ある演奏会になりそうですので、楽しみにしましょう。

 
 
(客席:13-8、\1000)