第4回大谷康子とアンサンブルNORTH新潟
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2020年12月12日(土) 14:00  新潟市北区文化会館
ソロ・ヴァイオリン:大谷康子
Vn1:西本幸弘、泉 里沙、新井貴盛、Vn2:佐々木絵理子、武田桃子、蔭井清夏
Va:中村翔太郎、村田恵子、Vc:ドミトリー・フェイギン、飯島哲蔵、Cb:樋口誠、太鼓(ゲスト):田村佑介
 
大島ミチル/横山真男編:天地人〜オープニングテーマ
今井光也:東京オリンピック・ファンファーレ
古関裕而/大沼弘基編:オリンピック・マーチ
山田耕筰:弦楽四重奏曲 第2番
       大谷康子、佐々木絵理子、中村翔太郎、飯島哲蔵
モーツァルト:ディヴェルティメント K136 より 第1楽章
モーツァルト:トルコ行進曲 弦楽合奏版
ベートーヴェン:トルコ行進曲 弦楽合奏版
ハイドン:ヴァイオリン協奏曲 第1番 より 第1楽章
       ソロ:大谷康子

(休憩15分)

パガニーニ:2つのヴァイオリンとチェロのためのソナタ
        新井貴盛、蔭井清夏、ドミトリーフェイギン
アレッサンドロ・ロッラ:2つのヴィオラのためのデュオ第3番 より第1楽章
        中村翔太郎、村田恵子
シャルル・ダンクラ:ヴェニスの謝肉祭 Op.119 より 抜粋
        西本幸弘、武田桃子、泉 里沙、佐々木絵理子
ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ より 第1楽章
ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
J.シュトラウスU:美しく青きドナウ

(アンコール)
J,シュトラウスT:ラデツキー行進曲

 北区文化会館主催の「アンサンブルNORTH新潟」の演奏会も今回で4回目となりました。大谷康子さんが新進気鋭のプロの音楽家を集めて結成した弦楽アンサンブルの演奏会です。

 大谷さんファンである私は、2017年の第1回、2018年の第2回、2019年の第3回と、毎年聴かせていただいていますので、今年も聴きに行かねばという義務感に駆られ、早々にチケットを買っていました。後日、加茂での東京交響楽団の演奏会の発表があり、そちらも気になりましたが、大谷さんの魅力が上です。

 アンサンブルのメンバーは入れ替わりがありますが、コンマスの西本幸弘さん、ヴァイオリンの新井貴盛さん、武田桃子さん、チェロのフェイギンさんは、第1回から皆勤されています。
 西本さんは仙台フィル、九州交響楽団のコンマスを勤めておられ、他のメンバーも、在京オケで活躍されたりしておられます。プロの世界では若手なのでしょうが、“新進気鋭の若手”といういう表現は当たらないような実力者揃いです。

 12月も半ばとなり、天候が落ち着かない新潟の冬がやってきました。月曜日からは寒波が襲来し、大雪の予想もされています。新型コロナは蔓延を続け、気分もふさぎがちですが、いい音楽を聴いて心穏やかになりたいと思います。

 冷たい雨が降り続く中、北区文化会館に到着。ちょうど開場時間でした。受付前に館長さんがおられましたので挨拶して入場しました。
 コロナ対策で客席は1席おきに発売されましたが、私の席はいつもの左前方です。毎回アンコールで大谷さんが客席に下りて来られますので、お近付きになれる席を選んでいるのですが、今年はコロナ対策で客席には来られないでしょうね。

 開演時間となり入場。女性陣はカラフルなドレスです。左から第1ヴァイオリン3人、第2ヴァイオリン3人、チェロ2人、ヴィオラ2人、右後方にコントラバスが並び、左後方に和太鼓が配置されていました。大谷さんはステージ中央です。
 大谷さんに促されて、ゲストの和太鼓奏者・田村佑介さんが入場し、このコンサートでは毎回オープニングで演奏されている「天地人」のテーマで開演しました。
 振動を体に感じる迫力ある太鼓がズシリと響き渡り、弦楽アンサンブルに合わせて太鼓の音量調整し、演奏効果が素晴らしかったです。昨年までと太鼓奏者が代わったのですが、田村さんの実力が如実に示されました。

 メンバーが一旦下がり、その後一人ずつ入場してメンバー紹介が行われ、以後大谷さんの楽しいトークを交えながら演奏が進みましたが、大谷さんのトークの間にステージが整えられていました。今年は人と人との繋がりをテーマとしてプログラムを選曲したそうです。

 続いては、ヴァイオリンが起立して、東京オリンピック(前回)のファンファーレがヴァイオリンだけで演奏されましたが、面白い試みでしたが、なかなか聴き応えありました。

 次は朝ドラにもなった古関祐而の「オリンピック・マーチ」。弦楽だけでのマーチもなかなかいいものですね。これも原曲の良さがあってのことでしょう。会場からの手拍子に載せて軽快に演奏されました。

 次は古関祐而とのつながりということで、古関をコロンビアレコードに紹介し、音楽畑に引き込んだ山田耕筰の弦楽四重奏曲です。演奏は、大谷さん、佐々木さん、中村さん、飯島さんの4人です。
 この演奏会のために初めて取り上げた曲だそうですが、非常に美しい曲で感銘を受けました。ドイツに留学する前の20代早々の作品ですが、こんな曲があることを知っただけでも今日来た甲斐がありました。
 なお、山田耕筰のドイツ留学時代の師は、ブルッフだったそうで、ブルッフの紹介ということで、ヴァイオリン協奏曲の冒頭を大谷さんが弾いてくれたのも良かったです。

 次は、トルコの軍楽隊のリズムを取り入れた、モーツァルトとベートーヴェンの「トルコ行進曲」の聴き比べです。弦楽合奏で聴く機会はないですが、チェロとコントラバスがリズムを刻み、楽しく聴けました。 

 そして、前半最後はハイドンのヴァイオリン協奏曲です。おそらく初めて聴いたはずなのですが、大谷さんのソロとバックのアンサンサンブルが調和し、美しい調べにうっとりと聴き入りました。なかなか聴く機会のない曲を紹介していただいて良かったです。

 休憩後の後半は、名手揃いのアンサンブルメンバーの名人芸を楽しむコーナーで、大谷さんの紹介で演奏が進められました。

 最初は、新井さん、蔭井さん、フェイギンさんによるパガニーニの「2つのヴァイオリンとチェロのためのソナタ」。ゆったりと流れる美しく優しいメロディに酔いしれました。

 続いては中村さんと村田さんのヴィオラ二重奏のロッラの「2つのヴィオラのためのデュオ」。超絶技巧を難なくこなし、人間の声に近いというヴィオラの優しく柔らかな響きが心地良かったです。

 そして、西本さん、武田さん、泉さん、佐々木さんによるヴァイオリン四重奏で、ダンクラの「ヴェニスの謝肉祭」です。名手4人による名人芸を存分に堪能しました。

 名人芸を楽しんだ後は、再び全員登場しての演奏です。チェロ以外は立っての演奏です。まずはドヴォルザークの「弦楽セレナーデ」。極上のビロードのような弦楽アンサンブルにうっとりしました。

 続いてはドヴォルザークとつながりのあるブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。これまでと違った、切れのあるダイナミックな演奏に心躍らせられました。

 最後はドヴォルザークがあこがれたというJ.シュトラウスIIの「美しく青きドナウ」。うっとりと聴き入るうちに終演となりました。

 通常でしたら、サービス精神旺盛な大谷さんですので、アンコールは客席内を回っての演奏になるはずですが、コロナ禍ではソーシャルディスタンスの問題もあって、今回はステージ上の演奏となりました。
 和太鼓も交えて、「ラデツキー行進曲」で大いに盛り上がりました。和太鼓のリズムが新鮮で、いい味を出していました。

 気分良くホールを後にしますと外は冷たい雨。高揚した心が冷やされるようで、駆け足で車へと急ぎました。来年も開催されることを願いつつ、家路に着きました。

 大谷さんの人柄が溢れ出て、肩の凝らないアットホームな雰囲気のコンサートはお勧めです。来年は市松模様でない通常の客席で、満場の人とともに楽しみたいですね。

 そんな気分で家に着きますと、今日の全国の感染者数は3000人を超えたとのニュース速報が流れました。今日のコンサートでいただいた爽やかな気分が一瞬に消えてしまいました。

 社会情勢も天候も、暗い日々が続きますが、束の間ではありますが、いい音楽を聴いて、元気を出しましょう。
 

(客席:5-8、¥3900)