大谷康子ヴァイオリン・リサイタル 〜大谷康子と巡るワールドミュージック〜
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2021年12月11日(土)14:00 新潟市秋葉区文化会館
ヴァイオリン:大谷康子
ピアノ:山中惇史
 

第1部
エルガー:愛の挨拶
バッハ:G線上のアリア
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 作品100
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

(休憩15分)

第2部 五大陸の音楽
外山雄三:日本民謡のよる組曲より 第1楽章
ジェリー・ボック:「屋根の上のヴァイオリン弾き」より
           オープニングテーマ&カデンツァ
ハンス・ジンマー:「星の王子様と私」より Suis moi(私についてきて)
レナード・バーンスタイン:「ウエスト・サイド物語」より マンボ
アストル・ピアソラ:リベルタンゴ
ロジャース&ハマースタイン:「南太平洋」より 魅惑の宵
パブロ・デ・サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

(アンコール)
モンティ:チャルダッシュ
 

 かつて東京交響楽団のコンサートミストレスを努め、数々の名演を演出してきた大谷康子さんは、新潟市民にはすっかりおなじみであり、絶大な人気を博しています。
 東響退団後もソリストとして活発な活動をされておられ、テレビでも土曜日の朝の「おんがく交差点」(BSテレ東)は人気番組となっており、私も時々観させていただいています。

 新潟市では、2016年9月に、この秋葉区文化会館でリサイタルを開催されており、私も聴かせていただきました。翌年の2017年からは北区文化会館に会場を移して、大谷康子とアンサンブルNORTH新潟の演奏会が、2020年まで4年連続で開催されました。今年は5年ぶりに秋葉区文化会館に戻ってリサイタルの開催となりました。

 リサイタルとは言っても、「大谷康子と巡るワールドミュージック」と題された一般向けの名曲コンサートですが、これまで毎年年末に大谷さんのコンサートを聴いていますので、今年も聴かないわけにはいきません。
 と、変な義務感に襲われたほか、「名器ストラディバリウスと共に登場!」というキャッチコピーにも魅かれ、今年もチケットを購入してしまいました。
 チケットはS席、A席が発売されましたが、A席は中央の最後列の1列のみで、ほぼ全席がS席でした。A席を狙いましたが、早々に完売となり、否応なくS席購入となりました。

 今日は朝は晴れ間も見えましたが、昼前から雨が降りだしました。その後、午後には降り止んで何よりでした。気温もそれほど低くはなく、この時期の新潟としては過ごしやすい土曜日となりました。
 午前中は職場でひと仕事をし、某所で昼食と休憩をとり、秋葉区文化会館へと向かいました。雲は多いものの、雨は上がってひと安心でした。

 駐車場に車をとめて入館し、自販機で喉を潤していましたら開場時間となり、早めに入場してこの原稿を書きながら開演を待ちました。
 客席はかなり埋まりましたが、サイドには空席があり、私の左横の1列は無人で、ゆったりと音楽に集中できて良かったです。

 開演時間となり、赤いドレスが目に鮮やかな大谷さんとピアノの山中さんが登場して、エルガーの「愛の挨拶」で開演しました。オープニングを飾るに相応しい爽やかな演奏でした。

 ここで大谷さんの挨拶とピアノの山中さんの紹介があり、以後大谷さんによる曲目紹介と楽しいトークを交えながら演奏が進められました。

 2曲目は「G線上のアリア」です。バッハの管弦楽組曲第3番第2曲「アリア」をヴァイオリニストのウィルヘルミがG線だけで演奏するように編曲した曲です。大谷さんが使用しているストラディバリウス・ウィルヘルミ(1725年製)は、名前の如くこのウィルヘルミが使用していたものだそうです。
 大谷さんのヴァイオリンといえばグァルネリということで有名ですが、このストラディバリウスは、大谷さんのデビュー45周年を記念して日本音楽財団が貸与したものだそうです。
 この貴重なヴァイオリンで、バッハが作曲した「アリア」をウィルヘルミが「G線上のアリア」として編曲して世に広めた曲を聴くというのは意義深いことと思われます。重厚に、柔らかくも力強く朗々と響き渡るG線の響きを味わいました。

 続いては、今日のメインだと大谷さんが話されていたブラームスの「ヴァイオリンソナタ第2番」です。大谷さんはブラームスが大好きだということですが、曲について演奏を交えながら解説してくれました。
 小品の名曲コンサートの中にあって、3楽章からなるソナタは聴き応えがありました。素晴らしい演奏に楽章間には拍手が入りましたけれど。
 ピアノとヴァイオリンのキャッチボールから優しく始まる第1楽章。ゆったりと歌わせ、途中に入るピチカートがいい味付けになっていた第2楽章。そして、朗々と歌わせて次第に熱を帯びて高まりをみせた第3楽章。本格的なプログラムを楽しませていただきました。

 前半最後はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」です。これでもかというくらいにアクセントを付け、切れのあるスピード感あふれる演奏に、気持ちも高まって休憩に入りました。

 後半は、外山雄三の「日本民謡による組曲」の第1楽章です。おなじみの日本民謡(ちゃっきり節)が心地良く響いて楽しませていただきました。

 ここで大谷さんによる後半のプログラムである五大陸の音楽についての説明があり、以後は前半以上に楽しいトークを交えながら演奏が進みました。

 まずは、アフリカということで、映画の「リトルプリンス 星の王子様と私」からの「Suis moi」です。無理やりアフリカがらみにこじつけたようですが、かわらしいシャンソンのような曲で、大谷さんの「ワン・ツー・スリー」という掛け声もあって楽しめました。

 次は、ウクライナを舞台にした「屋根の上のヴァイオリン弾き」からの「オープニングテーマ&カデンツァ」で、映画ではアイザックスターンが奏でたという曲を、技巧を駆使して聴かせてくれました。

 続いては、北アメリカということで、「ウエスト・サイド・ストーリー」から「マンボ」です。客席も参加という趣旨で、「マンボ!」という掛け声の代わりに拍手することになり、練習した上で演奏されました。拍手もバッチリ決まって、会場を盛り上げてくれました。これはライブならではの楽しみですね。

 次は、南アメリカということで、ピアソラの「リベルタンゴ」です。この曲のヴァイオリンでの演奏は、つい最近奥村愛さんの演奏で聴いたばかりですが、印象は全く異なり、色っぽく、妖艶で官能的なヴァイオリンにノックアウトされました。

 続いては、オセアニアにちなんで、ミュージカルの「南太平洋」から「魅惑の宵」で、美しいメロディに、うっとりと聴き入りました。

 そして、プログラム最後はヨーロッパで、大谷さんの十八番のツィゴイネルワイゼン」です。大谷さんは4000回も演奏されているというのはギネス級ですね。
 演奏は手慣れたもので、曲の良さを存分に表現し、聴き飽きた感のある名曲中の名曲に、新たな魅力を知らしめてくれました。

 アンコールは、予想通りに定番の「チャールダッシュ」です。コロナがなければ客席に下りて演奏するのでしょうが、その代わりにステージを左右に移動して演奏しました。超高音の部分も音量豊かに響かせ、興奮の中にコンサートを締めくくり、終演となりました。

 ホールの外に出ますと、黒い雲が広がってきましたが、気分は晴れやかに家路に着きました。こういう肩の凝らないコンサートも息抜きになって良いですね。
 

 
 
(客席:11-11、S席:\3500)