「地域性」+「IT」ということについてしばらく考えてきた。東京のまねごとをしても勝負にならないのは明らかなので、これら二つの概念を結びつけることで地域活性化への道筋が見いだせるのではないかと仮定してみた。もちろん最初から確固とした展望があったわけではない。
ただ頭の中で考えていても致し方ないので、機会を見ては芸予の島々を巡ることにした。尾道の市街地についてもできるかぎり回るようにした。いまにして思えば当たり前のことなのであるが、この地域には誇るべき歴史があり、風土も特異である。文化遺産にあふれ、さまざまな資質をもった人々も数多くいる。私の分野に引き寄せて言えば、コンテンツやプロダクトになり得る情報資源が豊富にある。こういったことがおぼろげながらも見えてきた。
これが確信に変わったのは島内にある向東小学校での情報アシスタントという仕事を通じてのことである。十月からの任用であり、まず児童のスキルを知る必要があった。確認のために「自分や地域で自慢できること」というテーマでパソコンの入力をしてもらった。内容をみると、自身や尾道・向東について非常な誇りを持っていることがよく伝わってくる。大人の我々がもっと自信をもたなければどうすると叱咤激励されているようである。
刺激を受けると同時にヒントも得て、自分なりに考えをまとめておいた。幸いにも竹村真一さんと出会い、地域性とITの結合という課題を一応は「尾道ナビ計画(案)」として結実させた。プロジェクトとして正式にスタートすることになっていると聞く。
地域性とITの結合といってもかなり漠然としているが、一例としては地域教育とITの結合をあげることができる。「地域連携教育とITの結合」と言い換えるともっとはっきりするだろうか。
教育についての関心はそれほど高くはなかったのだが、関連する新聞記事や報道へ自然に目が向くようになった。尾道における小学校教育のレベルがかなり高いこと、特に長江小学校は県内でもトップクラスにあることなどが次第にわかってきた。今年度から土堂小学校では「尾道を知る科」、「コミュニケーション科」というユニークな試みが始まっている。
こうした各校の取り組みにITを効果的に利用すれば全国的にも注目される存在になるのではないかと思っている。これはただ私が単にそう感じているのではなく、尾道の教育事情を説明すると、ぜひワークショップをやってみたいとの声が寄せられる。うまくコーディネートすれば、情報教育に限っても、時代に即した新しいカリキュラムがこの地域から生まれる可能性がある。
ある分野に接頭語として「地域」を付け加え、それを「IT」で括れば何かしら発想される。そのためには先ず準備として身近の地域をよく知っておかなければならない。島内を経巡ってみると、思いがけない発見や出会いがあり、そこから活性化につながるであろうアイデアが出てくる。そういうことがだんだんと分かってきた。
(金森國臣 2002年5月31日)
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