山陽日日新聞(2014年9月7日)から引用
誰にもある心が休む「居場所」
栗原町、日本児童文学者協会会員、林原玉枝さんが「こどものくにチューリップ版」10月号(すずき出版)として、新作『ちいさいきのいす』を発表した。10月1日の発行。
幼稚園の暗い物置に長い間忘れられ、「外に出たい」と願っていた小さい木の椅子が、ある日思い切って飛び出し、冒険をする物語。途中、植木屋の踏み台や植木鉢を乗せる台にされそうになるが、隙をついて逃げ出し、そして川の土手からどぼん
浅瀬に流れ着いた小さい木の椅子は、やがて男の子のお父さんに見つけられ、家に連れて帰られた。修理してもらい、男の子も一目で気に入り、「これ、ぼくにぴったりだよ」、「ぼくのいすだ」と笑顔で嬉しそう。
小さい椅子は昔、幼稚園で子ども達の声を聞いて、「かわいいおしりをのせていたころのたのしかったこと」を思い出していた。
絵は東京在住の版画家、猫野ぺすかさん。今年のイタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選している期待の若手。
林原さんは巻末で、作品に込めた思いを次のように記している(全文)。
◆「君の居場所はここにあるよ」◆
北海道の、とある町で、「君の椅子プロジェクト」というすてきな取り組みが行われている。生まれてきた子に、「生まれてきてくれてありがとう。君の居場所は、ここにあるからね」という思いをこめて、北海道の森の木で作った椅子をプレゼントするというものだ。毎年特別にデザインされたすてきな木の椅子には、贈られる子どもの誕生日や名前も刻まれる。なんてすてきな取り組みだろう。
この椅子はその子の成長に生涯寄り添って、その子を見守り、勇気づけてくれるにちがいない。なぜって、この椅子は自分の誕生を待ち望んでいた大人がいて、子ども時代の自身が、あふれるほどの愛に包まれていたということの、証だからだ。だれでも長い人生の荒波の中で、疲れ果てることがある。でもこんな居場所があれば、そこに心を休ませて、また立ち上がれるだろう。
この物語の小さい木の椅子も冒険の末に、すてきな居場所にたどり着きます。すべての人とすべての物に、あたたかな居場所がありますようにと、祈ります。
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