5台ピアノの秘密 | |
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2024年9月28日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール | |
ピアノ・解説:中川賢一 | |
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」より 「プロムナード」 5台ピアノによる「プロムナード」弾き比べ カワイEX〜ヤマハCFIIIS〜ベーゼンドルファー290〜スタインウェイD274 〜スタインウェイD274 ピアノの仕組み ピアノの歴史・各社の特徴 スタインウェイ、ヤマハ、ベーゼンドルファー、カワイ (休憩15分) ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」より 第3曲「月の光」 「月の光」についての解説 「展覧会の絵」についての解説 ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」より 「キエフの大門」 写真撮影会(フォトセッション) |
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新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)は、ピアノの最高峰と称されるフルコンサートグランドピアノを5台を保有し、これをフル動員して「5台ピアノの世界」と題するコンサートを、2019年5月と2022年10月の2回開催しています。 これだけのピアノを有するホールは全国でも数少なく、貴重な公演となり、いずれもチケット完売となって、大きな盛り上がりを見せました。 今回、10月19日(土)に3回目の公演が開催されることになりましたが、3回目ともなりますと希少価値は薄れてしまうということは否めません。 また、今年の1月には、りゅーとぴあ主催ではないですが、仲道郁代さんのプロデュースによる「5台ピアノの祭典」が開催されていて、ますます「5台ピアノ」の希少価値も薄れてしまったように感じます。 そんなこともあってか、この公演(講演)は、10月19日(土)の「5台ピアノの世界」を盛り上げるために、プレイベントとして開催されました。「5台ピアノの秘密」と題して、ピアノの音の出る仕組みから、スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ、カワイの各社の特徴をピアニストの中川賢一さんが徹底解剖するというものです。 なかなか興味深い企画ではありますが、開催についてのアナウンスが最近までありませんでした。私には公演案内が郵送されてきましたが、りゅーとぴあに目立たない簡素なチラシが置かれていただけで、世間ではあまり知られていないように思われました。 今日はほかに予定がありませんでしたし、入場料はチケットレスで500円ですが、本公演のチケット購入者は無料で参加できるということもあって、せっかくですので、参加させていただくことにしました。 いつものルーチンワークを終えて、昼食を摂り、白山公園駐車場へと車を進めました。車をとめて、公園の通路を歩きますと、桜の葉が黄色〜赤へと色づいていました。秋なんですねえ・・。と、ちょっと寂しさも感じました。 県民会館に寄って、某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあに入館しますと、ちょうど開場されました。一般者は500円の現金払いでしたが、私はチケットを提示して、無料で入場できました。 2階正面に席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。ステージには、りゅーとぴあが誇る5台のフルコンサートグランドピアノが、屋根が外された状態で、扇型に並べられていて、後方にはスクリーンが設置されていました。 ピアノは、左からスタインウェイD274、ヤマハCFVS、ベーゼンドルファーmodel290インペリアル、カワイEX、スタインウェイD274 です。中央のベーゼンドルファー・インペリアルは、やはり目立ちますね。さすがピアノの皇帝です。 開演となり、中川賢一さんが登場しました。ステージを横切って、一番右に配置されたスタインウェイで、「展覧会の絵」の「プロムナード」を弾いてくれましたが、いつも聴くスタインウェイの音とは若干違った印象で、賑やかに感じました。 中川さんの挨拶があり、ステージ上に並ぶ各ピアノの説明がありました。そして、先ほど右のスタインウェイで弾いた「プロムナード」を、各ピアノで弾いて、弾き比べ、聴き比べとなりました。 まず、カワイを弾きましたが、落ち着いた暗目の音色に感じました。次はヤマハで、明るさと華やかさを感じました。次はベーゼンドルファーで、低音の響きが豊かで、ふくよかな、ゴージャスなサウンドでした。続いての左側のスタインウェイは、よくまとまった安定感のある音で、一番聴き慣れた音に感じました。そして、最後にもう一度、右のスタインウェイで弾きましたが、先ほどと同様に華やかで賑やかに感じました。、 以上は私の感じ方でしたが、屋根が外された状態であること、ステージ上の位置が異なることなどもあって、通常のコンサートで聴く音とは違うかも知れません。 続いては、ピアノの仕組みについての解説です。ハンディカメラを駆使して、アクション・カット・モデルを用いて、鍵盤からハンマーへと動きが伝わるメカニズムを、わかりやすく示してくれました。 その後、調律師の石川さんにより、スタインウェイからアクション部分が引き出されて、ハンマーの軽やかな動きを見せてくれました。ピアノの鍵盤部分の下に、大きなネジがあるんですね。低音部のハンマーは大きく、高音部は小さいというのは興味深かったです。 そして、弦の振動が駒に伝わり、さらに響板へと伝わって、音が増幅される仕組みを解説してくれました。単体ではほとんど聴こえないオルゴールを、響板に着けると大きな音として聴こえる実演はわかりやすかったです。ピアノの各部位にオルゴールを当てて、響きの様子を示してくれたりして、非常に勉強になりました。 続いてのペダルの話も興味深く、ダンパーペダルの上げ下げでの響きの違いや、隣のピアノも共鳴する実演には驚きました。ピアノ同士が共鳴しあうというのはすごいですね。 フレームの説明へと話は進み、ピアノの歴史、そして、ピアノの発展に大きく寄与したスタインウェイ社の歴史が詳細に解説されました。 創業者のハインリヒ・シュタインヴェーグがドイツからアメリカに渡って、ヘンリー・シュタインウェイと名前を変えて、シュタインウェイ社を設立し、息子のセオドア・スタインウェイが数々の特許を取り、大きな功績を残したこと、特に20トンもの力に耐える金属フレームの設計に当たっては、物理学者のヘルムホルツと共同したこと、その設計は現代のピアノでもそのまま引き継がれていることは素晴らしく、スタインウェイのロゴマークのデザインに込められた意味など、興味深く拝聴しました。 その後は、ヤマハ、ベーゼンドルファー、カワイの歴史が解説されました。ヤマハとカワイのフレームは、スタインウェイとほとんど同じですが、ベーゼンドルファーは違うこと、ベーゼンドルファー・インペリアルの低音部に拡張された鍵盤の意味とその効果など、実際に音を出しながらの解説はわかりやすかったです。 ここまでで、かなり詳細かつ長時間の講演になり、疲労感も感じましたが、休憩時間になりました。ホワイエでは、5台のピアノの人気投票が行われ、私も投票察させていただきました。 休憩後の後半は、コンサートのプログラムであるドビュッシーの「月の光」とムソルグスキーの「展覧会の絵」についての解説がありました。 中川さんが登場して、右のスタインウェイで「月の光」を演奏しました。ちょっと賑やかで、音量も豊かでしたが、無音のホールに響く余韻が美しく感じられました。 そして、足早に「月の光」についての解説が行われました。「タイスの瞑想曲」の冒頭を演奏し、これと同時期の曲であること、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の一節を演奏して、ワーグナーに影響を受けていたことを説明してくれました。「月の光」という曲名は、出版時に付けられたもので、作曲時にドビュッシーが意図したものではないというのも興味深く感じました。 続いて、「展覧会の絵」についての解説に移りました。作曲して今年は150年になるそうですね。全10曲と、それを結ぶ「プロムナード」からなる曲です。 友人の画家・ハルトマンの死後に開催された展覧会で見た10枚の絵のイメージから、10曲が作られたとされてはいるものの、実際に絵が特定されているのは5曲だけにすぎないこと、「展覧会の絵」という題名も、英訳に基づくもので、ロシア語での本来の題名とは若干意味するところが違うかもしれないというのも興味深く感じました。 そして、最後に右のスタインウェイで「キエフの大門」を華やかに演奏し、ピアノの魅力と迫力、響きの豊かさを堪能させてくれて、内容豊富な公演といいますか、講演会は終演となりました。 その後は、ステージ上に自由に上がって、写真撮影会(フォトセッション)となりました。演奏者ではない私は、こういう機会でもなければステージに上がれませんし、ピアノにも接近できませんので、ステージ上の各ピアノをじっくりと見させていただきました。 ステージに上がったのは、バックステージツアーに参加して以来でしたが、ピカピカに磨き上げられたピアノの神々しいまでの美しさにうっとりし、ピアニストの気分になってピアノに向かってみたりしました。 帰りに、ホワイエでの5台のピアノの人気投票の結果を見てみましたが、ベーゼンドルファーがダントツの1位でした。私は左側のスタインウェイを推しましたが、見事に最下位でした。私の耳が悪いのか、好みがずれているのかわかりませんが、個人個人の好みの違い、感性の違いなんどでしょうね。 どのピアノも各社のフラッグシップモデルであり、優劣を比べるのも困難なほど素晴らしい響きですし、ステージ上でのピアノの位置が異なりますので、単純な比較はできないものと思います。でも、ベーゼンドルファーの芳醇な響きは抜き出ていたことは間違いありません。 さて、10月19日の本番が楽しみですりゅーとぴあで録音した特典CD付ですので、皆さんも是非参加されますことをお勧めします。 (客席:2階C2-11、無料) |