2019年5月11日、りゅーとぴあ・1コイン・コンサートの100回目を記念して、 白石光隆、田村緑、中川賢一、デュエットゥ
かなえ&ゆかり の5人のピアニストが集まり、それぞれがたすきを渡しながら連続してコンサートを行う「ピアノ駅伝」が開催されました。
そして、翌日の5月12日に、この5人のピアニストが同じステージ上で共演する「5台ピアノの世界」が開催されました。
りゅーとぴあが所有するフルコンサート・グランドピアノ(スタインウェイ D274 2台、ベーゼンドルファー Model 290
Imperial 、ヤマハ CFVS 、カワイ EX )を使用してのコンサートは、これが最初で最後かと思われ、私の残された人生では、もはや体験できないものと思っていました。それが、3年半の時を経て、再演されることになりました。
フルコンサート・グランドピアノを5台揃えられるホールは僅かしかなく、このような企画は全国的にも珍しいものと思いましたが、前回の翌年の2020年に、同じメンバーで、三重県文化会館で5台ピアノのコンサートが開催されました。
今回も新潟でのコンサートの後、11月12日に、三重県文化会館で、同じメンバー、同じプログラムでのコンサートが開催されます。りゅーとぴあ同様にフルコンサート・グランドピアノを5台所有している三重県文化会館も素晴らしいですね。
ともあれ、5人のピアニストは新潟で2泊3日の合宿を4回も積み重ね、公募して決めたという「ピアノ・ツィルクス」というグループ名で今日の公演に臨みました。ちなみに、ツィルクスというのはドイツ語でサーカスの意味です。3年ぶり2回目となるピアニスト5人・50指によるピアノのサーカスを楽しませていただきたいと思います。
ちょっと天候が優れない土曜日。与えられた雑務をこなし、デパートに出掛けた暴君を見送り、ゴミ出しをして家を出ました。某所で昼食を摂り、白山公園駐車場に車をとめて、りゅーとぴあへと向かいました。白山公園の紅葉した木々は落葉が始まり、秋の深まりを感じました。
館内に入りますと、ちょうど開場が始まったところで、チラシ集めをして入場しました。チケットは、当日券がごくわずかあったのみであり、満席の客席を見るのは久しぶりに思います。
ステージには、りゅーとぴあが誇る5台のフルコンサート・グランドピアノが、扇型に5台並んでいて、視覚的にも豪華でした。
左からスタインウェイD274、ヤマハCFV、ベーゼンドルファーModel 290 Imperial 、カワイEX、スタインウェイD274で、横幅が大きいベーゼンドルファーの存在感が際立っていました。
新型コロナ感染の感染者数は下げ止まり状態で、新潟では今日も590人もの感染者が報告されています。今日は制限のない満席のホールですので、大きな声でのおしゃべりはやめてほしいのですが、開演を待つ客席は賑やかでした。まあ、いつものことですけれど。
開演前にりゅーとぴあ職員により横坂源さんのコンサートの宣伝がありましたが、担当が若い女性になりました。フレッシュでいいですね。
開演時間となり、5人のピアニストが登場し、四方に丁寧に礼をしました。左から、白石光隆さん、デュエットゥ かなえさん、田村緑さん、デュエットゥ
ゆかりさん、中川賢一さんという並びで、田村さんは白、デュエットゥの2人は、白地にキラキラのドレスでした。
1曲目は、加藤昌則さん作曲の「Five Kings」で、今日が世界初演です。最初にハッピーバースデーのメロディが聴こえてきましたが、今日がりゅーとぴあ開館24周年の記念日であり、それににちなんで付け加えられたようでした。
ピアノは楽器の王様ということで、5台のピアノで「Five Kings」ということだそうですが、パート分けすることなく、5台それぞれが主役となって、壮大な音楽を鳴り響かせ、観客の心をつかみました。
ここで中川さんによるMCでメンバー紹介があり、客席におられた作曲者の加藤さんも紹介され、大きな拍手が贈られました。
2曲目は加藤さんの作曲による 5台ピアノで歌う「イタリアオペラメドレー」です。各奏者にはフメクリストが付いて演奏が進められました。
各奏者が順に主となりながら、「セヴィリアの理髪師」「愛の妙薬」「トスカ」「カヴァレリア・ルスティカーナ」「椿姫」「トゥーランドット」からのお馴染みのメロディが次々と現れ、聴き入りました。
「私は町の何でも屋」や「乾杯の歌」などの楽しい曲も良かったですが、「歌に生き、愛に生き」や「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲」でのしっとりとした演奏が胸にしみて涙しました。
3曲目は、駒井一輝さん編曲による「ボレロ」です。フォーメーションが変わって、左から田村さん、ゆかりさん、中川さん、かなえさん、白石さんとなりました。客席にいた編曲者の駒井さんが紹介され、演奏が始まりました。
1台のピアノから始まり、各奏者がいろんな楽器パートを順に奏で、次第に音量を上げながら、壮大なオーケストラサウンドを、ピアノで見事に表現していました。
休憩の後の後半は、白シャツと黄色のズボンのラフな衣裳に着替えた白石さんが登場してMCがあり、メンバーが呼び出されました。女性陣は赤い衣裳が華やかで、中川さんは黒シャツです。
後半最初は、前回にも演奏された駒井さん編曲の「木星」です。フォーメーションは1曲目と同様の並びで演奏されましたが、壮大なオーケストラ作品を、5台のピアノで迫力いっぱいに表現し、管弦楽に負けない聴き応えある音楽に仕上げてくれました。中越地震後、新潟県民であれば誰でも聴き馴染みのある曲ですが、明日で18年になるんだなあ、などと思いながら聴いていました。
左側のスタインウェイを右に若干移動させてステージ展開している間に、女性3人による楽しいMCがあり、2曲目は、この3人でのピアノ3台により、前回も演奏された駒井さん編曲による「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。
左からかなえさん(スタインウェイ)、田村さん(カワイ)、ゆかりさん(スタインウェイ)です。これは超絶的に美しく、しっとりと胸に響き、汚れきった私の精神が浄化されるようでした。
ここで中川さんが登場し、ピアノの並びが元に戻されて、各ピアノの紹介がありました。他のピアノにはないベーゼンドルファーの低音側に9鍵拡張された超低音も鳴らしてくれました。
他の奏者が呼び出され、プログラムの最後は駒井さん編曲の「ラプソディ・イン・ブルー」です。奏者の並びは、左から白石さん、かなえさん、中川さん、ゆかりさん、田村さんでした。
通常はピアノとオーケストラによりピアノ協奏曲的に演奏されますが、駒井さんの編曲はピアノをパートわけせず、5台のピアノが、場面場面で主役となり、新たな音楽に作り変えられ、魅力あるピアノ作品に仕上げていました。
デュエットゥの2人は通常2台ピアノや連弾で活動されており、かなえさんのパートのときにゆかりさんが移動してきて連弾したり、ゆかりさんのパートのときにかなえさんが移動してきて連弾したりなど、遊び心も散りばめられ、このメンバーならではの編曲になっていて楽しめました。
大きな感動に包まれて、数年ぶりに聴く満席の聴衆の拍手がホールいっぱいに響きわたり、それに応えてのアンコールは、デュエットゥ
かなえ こと木内佳苗さんが、新潟市を流れる信濃川を見て作曲したという「信濃川悠々」です。
かなえさんのコメントの後、白石さん、かなえさん、田村さん、ゆかりさん、中川さんという並びで演奏されました。前回もアンコールで演奏されましたが、非常に美しい曲であり、新潟市を題材にした名曲として、末永く演奏し続けていただきたいですね。
しっとりとした感動の後、再び大きな拍手が沸きあがり、客席にいた加藤さん、駒井さんにも大きな拍手が贈られて、記念すべきコンサートは終演となりました。
ピアノは1台でもオーケストラ並みの感動を与えてくれますので、それが5台となりますと、その感動はひとしおです。ただし、正直申し上げれば、感動が5倍になるかというとそうでもなく、ここは難しいところです。
それなりの奏者が演奏すれば、1台で十分すぎる感動が味わえますので、2台では2倍にはならず、当然5台でも、視覚的豪華さや大音量を別にして、与える感動としては5倍になりません。それでも、5台揃えたという意義は大きいと思われ、お祭りとしては素晴らしいと思います。
来年はりゅーとぴあ開館25周年ですが、すぐに再演ということはないでしょうね。二度とないイベントが何度もあれば感動が薄れますから。でも、私が元気なうちにまた聴きたいです。
ともあれ、こんな企画のコンサートを聴けるのはりゅーとぴあならではであり、新潟市に住むありがたさを感じました。
りゅーとぴあに隣接して新潟市音楽文化会館、新潟県民会館があり、音楽施設がこれだけ密集している場所は全国的にも珍しいはずです。そこにもフルコンサート・グランドピアノが数台ずつありますから、それをお借りすれば10台ピアノも可能であり、そんなばかげたコンサートを夢想しながら、この記事を閉じたいと思います。
(客席:2階C*-**、東響定期会員招待) |