オーケストラはキミのともだち
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2024年8月17日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮・話:原田慶太楼
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 
パイプオルガンによるウェルカム演奏 (濱野芳純)
 T. デュボワ:光あれ

J.ウィリアムズ:「ハリー・ポッターと賢者の石」よりヘドウィグのテーマ
小室昌広編:ディズニーのメロディによる管弦楽入門 (ナレーション:榎本広樹)
  1.グループの紹介(星に願いを)
  2.フルート、ピッコロ(ハイ・ディドゥル・ディー・ディー)
  3.オーボエ(ホール・ニュー・ワールド)
  4.クラリネット(狼なんか怖くない)
  5.ファゴット(ビビディ・バビディ・ブー)
  6.ヴァイオリン(イッツ・ア・スモール・ワールド)
  7.ヴィオラ、チェロ(いつか王子様が)
  8.コントラバス(イッツ・ア・スモール・ワールド)
  10.ホルン(美女と野獣)
  11.トランペット(チム・チム・チェリー)
  12.トロンボーン、テューバ(ジッパ・ディー・ドゥー・ダー)
  13.打楽器(ミッキーマウス・マーチ)
  14.トゥッティによるフーガ(エレクトリカル・パレード)
サティ:ジムノペディ 第1番
ニールセン:アラジン組曲より“黒人の踊り”
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番
ヒナステラ:バレエ組曲「エスタンシア」より“マランボ”
カバレフスキー:組曲「道化師」より “ギャロップ”
近藤浩治(栗田信生編):「スーパーマリオブラザーズ」より
エルガー:行進曲「威風堂々」第1番

(アンコール)
久石 譲:天空の城ラピュタ より 君をのせて
  
 かつて新潟市では、毎年秋に市内の小学校5年生全員をりゅーとぴあに招待して「わくわくキッズコンサート」を開催し、子供たちに大きな感動を与えてくれていましたが、市の財政難から2017年を最後に中止されてしまいました。
 それに代わるものとして、2018年からは同じ内容のコンサートを、夏休み期間中に有料のファミリーコンサートとして開催しており、これが「オーケストラはキミのともだち」です。

 指揮者は、2018年2019年は飯森範親さん、2020年は原田慶太楼さん、2021年は永峰大輔さん、2022年は原田慶太楼さん、2023年は永峰大輔さん、そして今年は原田慶太楼さんで、3回目の登場となります。
 曲目は、小室昌広編曲による「ディズニーのメロディによる管弦楽入門」による楽器紹介を基本として、その他の曲は年毎で変わりますので、毎年聴きに行っても飽きさせないように配慮されています。

 本来子供連れのファミリーを対象としており、11時開演の第1回は、3歳以上入場可で、14時開演の第2回は、小学生以上入場可となっています。
 私のような高齢者は本来の対象ではないのですが、精神年齢は子供のままですので、恥ずかしげもなく毎年聴かせていただいており、今年も14時の回に参加させていただくことにしました。

 東京交響楽団は、8月15日には軽井沢で原田慶太楼さんの指揮による名曲コンサートを2公演開催しており、昨日新潟入りしてリハーサルを行い、今日はこのコンサートを2公演、そして明日は成田で飯森範親さん指揮によるファミリーコンサートです。暑い中での長距離移動でご苦労様です。


 今日は朝から空は晴れ渡り、ギラギラと太陽が照りつけて、暑さが厳しい土曜日になりました。与えられた雑務をこなし、安価な昼食を摂り、りゅーとぴあへと向かいました。
 白山公園駐車場に車をとめて、県民会館を覗いてみますと、今日はM-1グランプリの予選があるようで、入口横でネタ合わせしている二人がおられました。健闘を祈ります。

 りゅーとぴあに移動して、ロビーで涼みながら開場を待ちました。開場とともに列に並んで入場しましたが、コンサートの趣旨通りに、たくさんの子供たちが来てくれていて良かったです。
 席に着いて開演を待とうと思いましたが、私の席の近くには、早々に親子連れが着席しておられ、ボッチの私は遠慮して、オルガンのウェルカム演奏が始まるまで、ホワイエの椅子に座って、この原稿を書いて待ちました。
 ホワイエにはご当地キャラクターがいて、子供たちとの記念写真に応じていました。スタンプラリーもあって子供たちは開演までの時間を楽しんでいました。
 オルガン演奏の時間になり、席に着きましたが、1階席から3階席まで、満遍なく客席は埋まり、なかなかの盛況となりました。東響定期もこれくらいの集客だと良いのですけれど。

 13時50分ちょうどに、りゅーとぴあ専属オルガニストの濱野芳純さんによるウェルカム演奏が始まりました。曲はデュポアの「光あれ」です。
 静かに演奏が始まり、次第に音量を増して、最後にはオルガンの最上部にあるカラカラも回って、爽やかに盛り上げて、オルガンの響きを堪能させてくれました。子供たちもオルガンの魅力を感じてくれたものと思います。

 開演時間となり、団員が入場しましたが、コンマスのニキティンさんが、弦楽器の中では真っ先に登場して席に着き、かなり遅れて他のヴァイオリン奏者が登場しました。全員揃ったところでチューニングとなりました。オケは12型の対向配置で、弦5部は 12-10-8-7-6 でした。

 原田さんが登場し、チェレスタのミステリアスな響きに始まって、1曲目は、J.ウィリアムズの「ハリー・ポッターと賢者の石」からの「ヘドウィグのテーマ」です。美しいオーケストラサウンドは、さすが東響であり、厚みと透明感を併せ持つゴージャスなサウンドに、一気に引き込まれました。

 ここで原田さんの挨拶があり、以後原田さんのお話とともに演奏が進められました。客席の子供たちと原田さんとの楽しいやり取りがあり、お馴染みの榎本さんが呼び出され、2曲目は、このコンサートの中核となる小室昌広編曲による「ディズニーのメロディによる管弦楽入門」です。
 榎本さんのナレーションにより、オーケストラの楽器紹介が、お馴染みのディズニーのメロディにのせて行われましたが、榎本さんも慣れたもので、タイミングもバッチリでした。ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」に模して編曲されており、最後のフーガはブリテンそのものです。東響の各セクションの演奏も素晴らしいものであり、単なる楽器紹介に留まらず、聴き応えのある変奏曲とフーガを楽しませてくれました。

 3曲目は、サティの「ジムノペディ第1番」です。ピアノ曲を、サティの友人のドビュッシーが管弦楽版に編曲したものですが、しっとりと、柔らかく、心に優しく響くオーケストラに、うっとりと聴き入りました。

 4曲目以降はダンス曲が続き、照明による演出も交えて演奏が行われました。4曲目は、ニールセンの「アラジン組曲」から「黒人の踊り」です。ディズニー映画の「アラジン」とは関係なく、劇音楽としての組曲です。
 激しいリズムが魂を揺さぶるようで、ダイナミックで迫力いっぱいな演奏でした。大太鼓がこれほどまでに連打される曲も珍しいのではないかと思いながら聴いていました。
 アラジンということで、アラビア風のメロディも交えながら、楽しませてくれました。ニールセンといえば交響曲しか知りませんでしたが、こういう曲も書いていたとは勉強になりました。

 5曲目は、ブラームスの「ハンガリー舞曲第6番」です。お馴染みの曲ですが、原田さんは、緩急の幅を大きくつけて、新鮮な味わいを創り出してくれて、この曲の新たな魅力を引き出してくれました。最後は手拍子で盛り上がりました。

 6曲目は、ヒナステラの「エスタンシア」からの「マランボ」です。客席から指揮をしたい子供たちを募って、子供たちがステージに上がり、一人ずつ順に指揮台に上がって指揮をして演奏が進められました。もちろん隣で原田さんが指揮をしていましたが、迫力満点の演奏で、団員による足踏みも交えて熱い演奏を聴かせてくれました。
 最後には、原田さんが最前列に座っておられた高齢の客をステージに呼び寄せて、原田さんとともに指揮をして、爆発的な盛り上がりとともに、フィナーレとなりました。
 曲自身が盛り上がる曲なのですが、客席も一体となって、最後は団員は立ち上がり、踊りながらの演奏となり、ホールに熱狂をもたらしました。
 原田さんの誘いにより、たくさんの子供たちがステージに上がって指揮をしてくれました。引っ込み思案な県民性ですので、昔ならステージに上がる子供は数少なかったと思いますが、今や列を成して指揮台に上がろうとしています。時代は変わりましたねえ・・。と、感慨もひとしおでした。

 7曲目は、カバレフスキーの「道化師」よりの「ギャロップ」です。シロフォンが活躍する曲だと原田さんが紹介していましたが、綱川さんの演奏はお見事。軽快な演奏で大盛り上がりでした。

 8曲目は、近藤浩治の「スーパーマリオブラザース」からの音楽です。ちょっとコミカルな音楽を楽しく演奏しましたが、演奏の質は素晴らしいもの。ゲーム音楽も聴き応えのある立派な管弦楽曲に昇華されていました。

 そして、最後の9曲目は、毎回演奏しているエルガーの「威風堂々第1番」です。オルガンの濱野さんを紹介して、演奏が始まりましたが、スピードは速めで、ダイナミックであり、重厚感というより軽快感を感じさせ、これまでのこの曲のイメージを覆すような、爽快な演奏が心地良かったです。
 終盤になってオルガンが加わった後の迫力と高揚感は、ホールで生で聴いてこそ味わえる喜びです。オーケストラの魅力、オルガンの魅力、そして新潟にりゅーとぴあがある幸せを、子供たちは感じ取ってくれたものと思います。

 拍手に応えて、アンコールはこれまで同様に「君をのせて」です。美しく爽やか演奏で、極上のデザートをプレゼントして、感動の演奏会は終演となりました。

 初めてオーケストラに接する子供向けのファミリーコンサートなのですが、東響の演奏は素晴らしく、りゅーとぴあ開館以来、東響の演奏を長らく聴いてきたジジイの私も、新鮮な感動をいただきました。
 同じ曲でも、年毎に印象は異なります。原田さんが創り出す音楽は、色彩感豊かで、躍動感に満ち溢れています。オーケストラを初めて聴いた子供たちも、オーケストラの魅力、音楽の喜びを感じてくれたものと思います。

 原田さんの魅力、東京交響楽団の魅力を再確認し、いい音楽を聴いた喜びとともに、明るい気持ちで外に出ますと、快晴の空が広がり、日光が容赦なく照りつけてきました。暑さは厳しいですが、東響の熱い演奏にはかないません。

 付記:8月18日の新潟日報記事によりますと、2公演併せて3000人が演奏を楽しんだそうです。盛況で何よりでした。
 

(客席:2階C2-9、¥1500)