りゅーとぴあ開館25周年記念事業の一環として、読売日本交響楽団を迎えてのコンサートです。25周年という記念すべき年ではありますが。財政厳しい新潟市では、大型の企画はありません。
開館5周年記念にはウィーン・フィル、そして開館10周年にもウィーン・フィルを迎えました。開館15周年にはたいしたイベントはなく、開館20周年はズビン・メータ指揮のイスラエル・フィルが予定されていましたが中止になり、NHK交響楽団がメインとなって、寂しい20周年でした。
そして、今年は節目である25周年記念ですので、さぞかしすごいイベントが組まれるものと期待したのですが、今回の読売日本交響楽団、チェコ・フィル、そして年末のジルベスターコンサートと、ほどほどのところで収めたようですね。衰退の道を歩む新潟ですので、芸術に割く予算などなく、仕方ないところでしょう。
海外のメジャーなオーケストラを期待しましたが、見事に水泡と消えました。勝手に期待する方が悪いのですが、私の残された人生を考えますと、新潟ではもう無理でしょうね。
ということで、今日は読売日本交響楽団の演奏会が開催されることになりました。この読響といえば、ヴィオラのトップに新潟出身の鈴木康浩さんがおられて親しみも感じるのですが、新潟市は東京交響楽団との関係が強すぎて、それ以外のオケの来演は少なく、読響の演奏会は、2000年7月以来、なんと23年ぶりです。
前回は佐渡裕氏の指揮で、フランス物が演奏されましたが、りゅーとぴあ主催の演奏会ではなく、新潟中央高等学校の創立100周年記念事業としての演奏会でした。そのときたまたまもらった佐渡さんのサインを今も大切に取ってあります。
さて、今回のプログラムは、「コバケン」の愛称で親しまれ、絶大な人気を誇る炎のマエストロ・83歳の小林研一郎さんの指揮によるチャイコフスキーの5番と、実力と美貌を兼ね備えたヴァイオリニスト・木嶋真優さんとのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲という直球勝負の名曲プログラムです。
7日(土)の長野市芸術館、8日(日)の群馬音楽センターでの公演に引き続いての3日連続公演の最終日になります。
小林さんといえば、2011年9月の東響第67回新潟定期演奏会で熱い「第九」で新潟の聴衆を熱狂させてくれたことが思い出されます。新潟での指揮は、2015年9月以来8年ぶりであり、次の来演は見通せませんので、この機会に「炎のコバケン」さんの熱い演奏を楽しませていただきましょう。
仕事は充実しているものの、ストレスいっぱいの毎日ですが、音楽と温泉が私の精神の破綻を踏みとどまらせてくれています。
今日は朝からどんよりとした曇り空が広がり、時折小雨もぱらついて、暗い心は益々沈んでしまいます。家にいてもストレスが募るばかりですので、某所に出かけて心身を癒し、束の間の安楽を得て、りゅーとぴあへと向かいました。
白山公園駐車場に車をとめ、県民会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあ入りしました。すでに開場されており、私も早めに入場しました。
今回のチケツトは、東響定期会員向けに発売された割引チケットのセット券でしたので、座席指定はできず、与えられた席は1階前方の中央でした。
日頃は決して選ばない席であり、前方過ぎて、ステージを俯瞰することができません。もう少し後方が良かったのですが、割引チケットですので仕方ありません。
ステージ上では、コントラバスと木管が音出しをしていました。開演時間となり、そのまま拍手とともに他の団員が入場して着席し、ひと呼吸置いて、コンマスの林悠介さんが入場。大きな拍手が贈られてチューニングとなりました。
女性陣は黒い衣裳。男性陣はノーネクタイの黒シャツです。オケの配置は通常の配置で、席が前過ぎてステージを見回すことができませんでしたが、弦は12型で、私の目視で
12-10-8-6-4 でした。指揮台は低めで、譜面台はありませんでした。
燕尾服の小林さんが登場して、「フィガロの結婚序曲」で開演しました。年齢を感じさせない颯爽とした指揮により、小気味良い音楽が生み出されました。細かくアクセントをつけて、躍動感のある音楽が生み出され、聴き飽きた感のあるこの曲に新鮮な喜びを感じさせてくれました。挨拶代わりの序曲で、聴きなれている東響とは一味違った読響の美しいサウンドがホールに響き渡りました。
ステージが整えられ、2曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲です。髪を束ね、上が黒で、下が七色のドレス姿が麗しい木嶋さんと小林さんが登場して演奏開始です。
お馴染みの甘美なメロディが、読響をバックに潤いのあるヴァイオリンとともに流れ出ました。小林さんは、控えめに木嶋さんの演奏を優しく引き立てていました。
ファゴットがつないで第2楽章へ。美しい調べにうっとりし、少し間を置いて第3楽章へ。熱く燃え上がる中にも春風のような爽やかさを感じさせてフィナーレを迎えました。
大きな拍手に応えて、アンコールとして、木嶋さん自身の編曲による「イグデスマン・ファンタジー」が演奏されました。木嶋さんは髪を振り乱しての熱演で、圧倒されるような演奏に息をのみ、演奏技術の素晴らしさと気概が感じられました。
休憩時間に、いつもお世話になっている音楽仲間とお会いして、札幌遠征のお土産をいただきました。ありがとうございました。
休憩後の後半は、コバケンさんがお得意のチャイコフスキーの交響曲第5番です。弦は14型に増強され、私の目視で 14-12-10-8-7
となりました。前半同様に指揮台には譜面台はありません。
小林さんが登場して、クラリネットの暗い音で「運命の主題」が奏でられて第1楽章が始まりました。弦楽による甘美なメロディの歌わせどころはゆったりと演奏し、緩急・強弱自在のコバケンワールドへと誘われました。
第2楽章は低弦に導かれて、ホルンソロが美しく ゆったりと音楽に身を委ねました。甘く美しいメロディが、うねるように情熱的に燃え上がり、全休止の後の力強いピチカートから、ゆったりと歌わせた後、再び情熱が激しく高まり、熱く燃え上がりました。そして静かに楽章を閉じました。緩急を大きく揺り動かし、こんなにも劇的な第2楽章は聴いたことがありません。
第3楽章の美しいワルツは、美しい管の響きと弦とが絶妙に絡み合い、第1ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いも美しく感じられました。
アタッカで第4楽章へ。弦楽により力強く「運命の主題」が奏でられ、管に引き継がれて次第に熱量を増しました。強弱を繰り返しながら音量とスピードを増して、勝利のファンファーレが奏でられました。全休止の後は、コバケンさんは客席を向くようにして指揮をせず、うっとりと音楽に聴き入るようにしていました。オケからは勝利の音楽が湧き上がり、力強くリズムを刻み、エンジンの出力を上げ、アクセル全開の興奮の中で感動のフィナーレとなりました。まさに炎の指揮者・コバケンさんです。期待を裏切らない熱い演奏に、胸は高鳴りました。
小林さんと読響に盛大な拍手が贈られ、幾度かのカーテンコールの後、小林さんの挨拶があり、アンコールに弦楽だけでダニー・ボーイがしっとりと演奏され、興奮を鎮める絶妙なデザートとなりました。
小林さんは何度も客席に挨拶し、優しさを感じさせる話しぶりにより、その人柄がしのばれました。83歳という年齢を感じさせない指揮ぶりで、強弱・緩急を大きく揺り動かし、個性的なコバケン節というべきエネルギー感に溢れる音楽で新潟の聴衆を楽しませてくれました。これからも元気に指揮を続けて、再度の来演を期待したいと思います。
いい音楽を聴いた喜びと満足感を胸に、ホールを後にし、つかの間の夢の世界から現実の世界へとギアチェンジしました。
(客席:1階6-28、S席:バリューパック:¥4900) |