ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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2008年9月20日(土) 16:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:リッカルド・ムーティ
 
 
ハイドン:交響曲第67番 ヘ長調 Hob.I-67

(休憩20分)

シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D.944 「グレイト」

(アンコール)
シューベルト:「ロザムンデ」間奏曲

 
 

 新潟では5年振りとなるウィーン・フィル公演です。前回はティーレマンの指揮でベートーヴェンの「田園」、R.シュトラウスの「英雄の生涯」が演奏されました。今回のプログラムでは「グレイト」が楽しみです。今年のウィーン・フィルハーモニー・ウィーク・イン・ジャパンで「グレイト」を演奏するのは新潟だけなので、全国的にも注目されたようです。チケットは前回と同様に、東響定期会員枠、N-PAC mate枠、そして一般発売の3段階での発売となりました。私は東響定期枠で早々にチケットを購入しました。抽選販売だったはずですが、落選した人は知りません。前回にも増して高額になり、躊躇した人も多かったようです。とは言っても天下のウィーンフィル。一般発売は電話受付販売のみでしたが、早々に完売となり、立ち見席も完売となりました。しかし、開催間際となって、S席券が若干余っているとのアナウンスがありました。どういう事情かはわかりませんが、電話申し込みしたものの、料金を払い込まなかった人もいたようです。そういえば先回も完売のはずがS席の当日券がありましたものねえ・・。

 さて、日本列島は台風13号が関東沖を通過中で、大雨の被害が出ているようですが、幸い新潟県は影響はなく、朝から快晴の好天です。気温もぐんぐん上がり、残暑が身に染みます。早めに駐車場に車を停め、信濃川のやすらぎ堤のベンチに座ってまどろみ、時間をつぶしました。開場時間が近くなり、ホールに向かうと、別のベンチでウィーンフィルの楽員と思われる人が信濃川を眺めながら休んでおられました。ホールの楽屋口の外でも楽員の皆さんが談笑しながら休憩されていました。ホールに入るとチケット売り場には予想通りに「当日券あります」の張り紙が・・・。やっぱりねえ・・。

 今回抽選で指定された席はお馴染みのCブロック左側。なかなかいい席です。開演時間となりましたが、所々に数は多くはありませんが空席があります。しかし、立ち見席を含めてこれだけの客の入りは、5月の小澤/新日本フィル以来です。客はいつもの東響定期とは異なり、めかし込んだ人も多いようでした。市長を始めVIPのお姿もあります。

 前半はオケの編成は小さく、ハイドンの67番です。拍手の中楽員が入場。全員揃うまで起立しているのは前回同様です。この曲は全く知らない曲であり、数あるハイドンの交響曲の中で、どうして67番なんだろうと不思議に感じました。予習のためCDを捜しましたが、市内のCDショップには何もありませんでした。お馴染みの某書店でNAXOS盤を手に入れましたが、演奏も良く、明るく軽快で、聴き応えのあるいい曲だと感じました。実際の演奏は、当然ながらCD以上の感激を与えてくれて、弦の美しさ、管の美しさにうっとりしました。初めてウィーンフィルの音を聴いた前回ほどの感激は感じませんでしたが、やっぱり天下のウィーンフィルです。有名じゃないこの曲の味わい深さをしっかりと聴かせてくれます。ムーティの指揮ぶりもかっこいいです。第3楽章、第4楽章では第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロのソロで室内楽的な聴かせ所があり、ウィーンフィルの奏者の力量を見せてくれました。このときはムーティは指揮をせず、奏者に演奏を任せていました。ハイドンの交響曲はあまりにも数が多すぎるので、一部の有名曲以外は聴く機会が全くないのが残念ですが、こんないい曲も隠れているんですね。この曲を知ることができたことは大きな収穫でした。熱狂的な拍手の中に前半を終了しました。

 休憩時間にホワイエをうろついていると、県外からの客の会話が聞こえてきました。やはり「グレイト」を聴くために各地から来られているようです。東京のホールで見かけたことのある人の姿もありました。りゅーとぴあの評判はいいようで、ここをホームとする私としましてもうれしくなります。ホワイエではCDやウィーンフィル・グッズが売られていて、お祭りのように賑わっていました。

 後半はお待ちかねの「グレイト」です。この曲は私が大好きな交響曲のひとつですが、新潟で生演奏で聴く機会がこれまでありませんでした。今回の日本公演では新潟だけでこの曲が演奏されるので得した気分でした。ムーティは2005年のウィーン・フィル来日公演でも「グレイト」を演奏しており、大変な名演だったとの評判でした。今回もすばらしい演奏をしてくれるものと期待は高まりました。
 前半同様に楽員が全員揃うまで起立して待っていました。前半と違ってフル編成のオケは壮観です。ムーティが登場して演奏開始。最初のホルンの出だしの音程が怪しげに感じましたが、私の気のせいでしょうか。その後はキビキビとしたメリハリのある演奏に引き込まれました。やっぱりいい曲だなあと感銘を新たにしました。第2楽章でのオーボエが少しお疲れなように感じましたが、これも私の気のせいでしょうか。第3楽章の弦のリズムのキレの良さ、そして、たたみかけるような第4楽章のダイナミックさ。「天国的な長さ」と表現される長大な曲ですが、長さを感じさせない名演奏だったと思います。少し早めのテンポで、力強さの中に繊細さがあり、歌わせ所はよく歌ってくれました。CDではベームやヴァント、フルトヴェングラー盤(いずれも何故かベルリン・フィル)を愛聴していますが、生で聴く感動はCDの比ではなく、気分の高揚を感じました。

 演奏が終わりカーテンコールが始まろうとしているときにさっさと帰った最前列の客が興ざめでしたが、会場は大盛り上がりの拍手です。アンコールは予想通りに、シューベルトつながりで「ロザムンデ」間奏曲でした。これまた柔らかな優しさのあふれた演奏でした。これで終演となりましたが、楽員が退場した後も拍手はおさまらず、ムーティがステージに登場し、スタンディング・オベーションでお開きとなりました。

 私も耳が肥えてきたのか、オケの音色としては前回ほどの感激は感じませんでしたが、演奏は期待に違わずにすばらしかったです。背筋を伸ばし、キビキビとしたムーティの指揮ぶりもかっこよかったです。長らく女性団員のいなかったウィーンフィルですが、今日の公演では数人の女性がステージに上がっていました。時代とともにウィーン・フィルも変わっていくのでしょうね。
 ちょっと気になったのですが、第1ヴァイオリン2列目の譜面台にバイオリンが1台ぶら下がっていました。またヴィオラの3列目の譜面台にもヴィオラが1台ぶら下がっていました。演奏中にこの楽器は使用されることがなかったように思いましたが、何のためだったのでしょうか。マーラーの交響曲第4番でコンマスがヴァイオリンを持ち替えて演奏するのを見たことがありましたが、今回はどういう目的だったのか気になりました。おそらくは弦が切れたりのトラブル用かと推測されますが、ほかのコンサートでは見かけなかったように思います。

 ということで、すばらしいコンサートでした。正直言えば、高額な料金に見合った演奏だったかどうかは疑問ですが、値段分は感激しなけりゃ損ですものねえ・・。
 

(客席:2階 C4−5、S席:34000円)