コバケンとその仲間たちオーケストラ in 新潟
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2015年9月23日(水) 15:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮・ピアノ:小林研一郎
司会:朝岡 聡
ソプラノ:池田理代子、バリトン:村田孝高
ヴァイオリン独奏(コンサートミストレス):瀬ア明日香
和太鼓:瑞宝太鼓
管弦楽:コバケンとその仲間たちオーケストラ
吹奏楽(バンダ):新潟県内の高校生 ほか
 
(ロビーコンサート)
NIIGATA にし コカリナ合奏団


ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より 凱旋の行進曲

サラサーテ:チゴイネルワイゼン (Vn:瀬崎明日香)

シベリウス:交響詩「フィンランディア」

小林研一郎:パッサカリア より 「夏祭り」

時勝矢一路:「漸進打波」 (和太鼓:瑞宝太鼓)

(休憩20分)

プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より 私のお父さん (S:池田理代子、Pf小林研一郎)

新井 満:千の風になって (B:村田孝高、S:池田理代子、Pf:小林研一郎)

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならぬ (Tb:鈴木加奈子)

ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」より 第4楽章

チャイコフスキー:荘厳序曲「1812年」

 シルバーウィークの最終日。今日は枝並清香さんのリサイタルを初め、様々な催しがあり、どこに行こうか悩ましかったですか、障がい者を応援するため、この公演を選びました。
 時間がずれてくれたら良かったのですが体はひとつ。こういう悩みがあるということは、新潟の音楽界が盛況だということですので、喜ばしいことだと思います。どの会場も賑わってくれることを祈ります。

 さて、この公演は来年開催される知的障害のある人たちによるスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス新潟大会」を応援するために開催されたものです。日頃障がいがあるためコンサートに行けない人たちが、健常者と一緒にコンサートを聴く環境を提供しようという目的で、小林研一郎さんが企画し、10年の歴史があるそうです。
 演奏するオーケストラは、プロ・アマ・年齢を問わず、趣旨に賛同した人たちがボランティアで集まったものであり、障がいを持つ人たちも多数参加されています。私もこのコンサートに参加することで、少しでも障がい者福祉に貢献できればと思います。

 入場しますと、ロビーでは「NIIGATA にし コカリナ合奏団」の皆さんの演奏が始まっていました。素朴なコカリナの調べがホワイエにこだまし、心が洗われるようでした。
 ホールに入りますと、たくさんの観客でいっぱいです。コンサートの趣旨の通り、身体障害、知的障害を持つ人たちがたくさん招待されていました。手話通訳や盲導犬の姿もあり、ホール内は温かな空気で満たされていました。

 開演時間となり、団員の皆さんが出てきましたが、視覚障害の方々も何人かおられました。バンダとして参加した新潟県の高校生を中心とする皆さんもステージ後方に整列していました。

 TVでお馴染みの朝岡さんの司会で、いよいよ開演です。コバケンさんが登場して、最初は「アイーダ」です。ゆっくりとしたテンポで演奏が進められ、ゆっくりすぎじゃないのと心配するほどでしたが、大人数のバンダの威力はすさまじく、迫力ある演奏を聴かせてくれました。特別に借りてきたというアイーダ・トランペットもすばらしい演奏効果をあげていました。

 続いては、今日のコンミスを務める瀬アさんを独奏に迎えて、「チゴイネルワイゼン」です。最初は、これまで聴いたどの演奏よりもゆっくりで、思い入れたっぷり。驚きすら感じましたが、情感の豊かさに聴き入りました。フィナーレでは一転してエンジン全開で猛スピードで突進し、ノックアウトされてしまいました。この人の演奏は初めて聴きましたが、演奏は個性的であり、容姿も端麗。なかなかのヴァイオリニストですね。

 続いて、「フィンランディア」を高らかに演奏し、小林さん作曲による「夏祭り」では和太鼓との共演もあり、大盛り上がりとなりました。
 オケは降壇し、知的障害者の和太鼓集団である瑞宝太鼓の皆さんによる迫力ある太鼓演奏に圧倒され、前半は終了しました。

 後半は、漫画家の池田理代子さんがソプラノ歌手として登場。真っ赤なドレス姿は年齢を感じさせません。マエストロ・小林さんのピアノ伴奏でプッチーニを切々と歌ってくれました。
 続いてバリトンの村田さんが登場し、昨日秋川雅史さんの歌で聴いたばかりの「千の風になって」が歌われました。池田さんもハミングで色をつけてくれました。

 ここでオーケストラが再登場し、「誰も寝てはならぬ」が演奏されました。歌の代わりにトロンボーンの独奏で演奏されたのですが、奏者は盲目の鈴木さん。盲導犬を連れてステージ中央に出てこられ、j情感溢れる演奏を聴かせてくれました。演奏の間、指揮台の前で待っている盲導犬にも感激でした。

 続いて「新世界」の終楽章を迫力いっぱいに演奏し、最後は再びバンダの皆さんが加わって、「1812年」です。吹奏楽団ひとつ分はありそうなバンダで強化されたオケの音量はすさまじく、ステージ上で一大スペクタクルが演じられました。大砲の代わりは瑞宝太鼓の大太鼓が使用されました。ホールは興奮のるつぼとなり、スタンディングオベーションの中、終演となりました。

 3時に開演して、終演は5時40分。内容豊富なコンサートでした。プロ・アマ混成のオケでしたが、限りなくプロに近いサウンドで、障害ある皆さんが多数参加しているオケとは信じられませんでした。
 ホールに来られた障がい者の皆さんの多くは、オーケストラの演奏を聴くのは初めてのようでしたが、生演奏の迫力に感動してくれたものと思います。知的障害を持つ人が多数来られており、「声や音を出すことがあるので協力してください」というようなアナウンスがありましたが、演奏中の声出しは気になるほどでもなく、皆さん演奏を楽しんでおられたようで何よりです。

 朝岡さんの適切で分かりやすい解説も良かったです。通常のクラシックコンサートでも、このような司会付だともっと分かりやすく、観客の新規獲得に良いのではないかと思います。

 このような活動を始められたコバケンさんに拍手を贈り、これからの活動を応援したと思います。11月にはサントリーホールで活動10周年を記念するコンサートを開催するそうです。成功をお祈りします。
 


(客席:1階9-17、\3000)