東京交響楽団 川崎定期第93回 Live from MUZA!
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2023年10月14日(土) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノ:カテジナ・クネジコヴァ、メゾソプラノ:ステファニー・イラーニ
テノール:マグヌス・ヴィギリウス、バス:ヤン・マルティニーク
合唱:東響コーラス (合唱指揮:冨平恭平)
コンサートマスター:小林壱成
 
ドビュッシー / ノット編:交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」

(休憩20分)

ヤナーチェク:グラゴル・ミサ (Paul Wingfieldによるユニヴァーサル版)
   T.イントラーダ  U.序奏  V.キリエ  W.グローリア 
   X.クレド  Y.サンクトゥス  Z.アニュス・デイ 
   [.オルガン・ソロ  \.イントラーダ


 

 恒例の東京交響楽団の無料生配信です。今回は川崎定期演奏会第93回で、明日のサントリーホールでの第715回定期演奏会と同一プログラムです。
 今回の指揮者は、音楽監督のジョナサン・ノットさんです。前半はドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」の全曲から、ノットさん自身が15曲選んで一部を加筆した交響組曲版が演奏されます。
 後半は、ヤナーチェクの「グルゴル・ミサ」が、最も複雑で大オーケストレーションで描かれたという「Paul Wingfieldによるユニヴァーサル版」で演奏されます。
 どちらも聴く機会がなく、馴染みのない曲であり、こういう機会でもなければこれからも聴くことはないと思われますので、配信をありがたく視聴させていただくことにしました。

 ニコニコ生放送のサイトに接続しますと、無人のステージが映し出されていました。ステージ後方の席は合唱団席になるためか、空席になっていました。
 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟方式が、川崎や東京でも定着しましたね。最後にコンマスの小林さんが登場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。弦は対向配置での16型で、16-14-12-10-8 です。

 ノットさんが登場してドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」の演奏開始です。重厚な出だしから神秘的な深遠な音楽が始まりました。柔らかな響きはいかにもドビュッシーです。ビロードのようにしっとりとした弦楽。16型の厚みが幽玄で芳醇な響きを創り出していました。
 組曲ということですが、各曲が切れ間なく演奏され、どういうストーリー展開なのか良くわかりませんでした。各曲に副題でも付いていればどういう場面かわかって、曲のイメージを膨らませやすかったかもしれません。
 ときに大きなうねりや不気味さを感じる場面があり、緩急の変化によって場面が変わったということは感じられましたが、基本的にはゆったりとした同じような曲調が続いて、全体としては単調に感じたというのが正直な感想です。
 でも、最上さんのイングリッシュホルンを始め、管楽器は美しく、弦もマントヴァー二のカスケードサウンドのように美しく魅惑的でした。
 静けさの中に曲は終わりましたが、曲を楽しんだというよりは、オーケストラの美しいサウンドを楽しんだという印象でした。

 休憩時間にオルガン席に明かりがつき、ステージ後方の席に合唱団が1席おきに着席しました。通路沿いは隣り合って着席してどうしたのかと思いましたが、歌うときには通路に立ちましたので、ちょうど良い配列になりました。

 後半の開演時間となって拍手の中に団員が入場。小林さんが登場して大きな拍手が贈られてチューニングとなりました。
 独唱者4人とノットさんが登場して、独唱者は指揮台前に着席し、ヤナーチェクの「グルゴル・ミサ」の演奏開始です。
 ミサ曲らしからぬちょっと賑やかで混沌とした第1曲のイントラーダで始まりました。金管の響きはいかにもヤナーチェクというような感じがします。
 そして、シンフォニエッタを髣髴させるファンファーレが鳴り響く第2曲の序奏から、第3曲のキリエへと進み、清廉な合唱とソプラノが絡み合いました。
 第4曲のグロリアは、ソプラノと合唱、そしてちょっと荒々しいオーケストラにオルガンも加わり、複雑なリズムで曲が進みました。ティンパニの連打にテノールが加わって、激しさを感じさせました。
 第5曲のクレドは、合唱とオケが対峙し、テノールが荒々しく歌い、安らかな静けさが訪れたかと思うも、3組のティンパニが鳴り響くオケとオルガン、合唱、バスが混沌とした音楽を奏でました。
 第6曲のサンクトゥスは、美しくも劇的な音楽が、ソプラノ、テノール、バスと合唱で歌い上げられ、遅れてメゾソプラノも加わりました。
 第7曲のアニュス・デイは、合唱がとオケとが神秘的な響きで絡み合い、4人の独唱者が加わって、再び静けさが訪れました。
 そして、第8曲のオルガン・ソロは、劇的で激しいオルガンが鳴り響き、神の審判を受けるかのようでした。大木麻理さんの演奏が素晴らしかったです。
 第9曲のイントラーダは、冒頭と同じようないかにもヤナーチェクというような金管の響きに、ティンパニがリズムを刻んでフィナーレとなりました。ミサ曲ではありましたが宗教的雰囲気は感じられませんでした。
 珍しい曲を聴くことができて良かったです。カーテンコールでは、ソリストのほか、オルガンの大木さんにも大きな拍手が贈られました。

 カーテンコールが繰り返され、最後にコンマスの小林さんが礼をしてお開きとなりましたが、拍手は鳴り止まず、ノットさんだけ再登場となりました。
 珍しいプログラムを無料で聴けて良かったです。終演後に舞台袖で奏者からのコメントがありましたが、3階席でバンダの演奏もあったそうですね。実際に会場で聴いたら音響的にも素晴らしかったことでしょう。

 配信の感想の集計に「とても良かった」をクリックして、サイトを後にしました。明日はサントリーホールで同じプログラムが演奏されますので、今度は東京の聴衆に感動をもたらしてくれるものと思います。今日の見逃し配信はこれから1週間あるはずですので、是非ご視聴ください。
 

(客席:PC前、無料)