横坂 源 無伴奏チェロ・リサイタル
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2023年1月28日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
チェロ:横坂 源
 

J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲

 第1番 ト長調 BWV1007

 第2番 ニ短調 BWV1008

 (休憩20分)

 第6番 ニ長調 BWV1012

 (アンコール)
 J.S.バッハ:G線上のアリア

 今日は、新潟出身のチェリスト・横坂 源さんのリサイタルです。今回6回目となる「りゅーとぴあ会員限定コンサート」としてのリサイタルで、2022年度は、6月の外村理紗さん、8月の山縣美季さんに引き続いて3回目であり、横坂さんがトリを務めます。

 横坂さんは新潟が世界に誇るチェリストであり、その活躍は改めて紹介するまでもないでしょう。これまで何度か聴かせていただきましたが、新潟市での演奏は、2021年5月の「東京グランド・ソロイスツ with 横坂 源」以来になります。なお、その直後に柏崎で「横坂 源 チェロ・リサイタル」がありましたが、それも聴かせていただきました。

 ふるさと新潟でのリサイタルということで期待が高まりましたし、私もりゅーとぴあの有料会員ですので、昨年8月のチケット発売開始とともに購入していました。
 しかし、その後、同日・同時刻に、大ファンである品田真彦さんのリサイタルが開催されることが発表になりました。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタを全曲演奏するというベートーヴェン・チクルスの第1回であり、後半はシェーンベルク(ウェーベルン編曲)の室内交響曲第1番を演奏するという意欲的なプログラムであり、これは聴きに行きたかったのですが、身体はひとつ。先にチケットを買っていた横坂さんを選んでしまいました。日時がずれてくれたら両方行けたのですが、世の中うまくいきませんね。

 今週は、今シーズン最強の寒波に襲われ、猛吹雪と寒さで散々な日々でした。今日も雪の予報でどうなるか心配されましたが、上越・中越地方の大雪をよそに、新潟市の降雪は小康状態となり、何とか出かけることができて良かったです。

 生活道路は圧雪状態ですが、幹線道路はきれいに除雪されており、いつもの近道はやめて、広い道を選んでりゅーとぴあへと向かいました。
 いつもの駐車場は混雑しており、入場待ちの車が並んでいましたので、陸上競技場の駐車場に車をとめました。所用がありましたので、白山公園を抜けて、古町通りを滑らないように早足で歩き、某所での用件を済ませました。
 帰りは東堀から白山公園に入りましたが、品田さんの顔が思い浮かび、優柔不断な私は、どうしようかと思い悩みながら音楽文化会館へと向かってしまいました。
 近道しようと除雪されていない階段を登って、音楽文化会館への通路を進みましたが、結局思い直してりゅーとぴあの東玄関へと方向転換しました。

 りゅーとぴあに入りますと、他の催しもあって、東側ロビーは賑わっていました。チラシ集めをして入場し、この原稿を書きながら開演を待ちました。
 客の入りは良く、1階席や2階正面はびっしりで、横坂さんの人気のほどが伺えました。ステージ中央にはチェロの演奏台と椅子がぽつんと置かれていました。

 開演時間となり、場内が暗転。横坂さんが登場して、無伴奏チェロ組曲第1番で開演しました。無音の静寂の中に、チェロの音が、朗々と音量豊かに響き渡りました。ホールを埋めた聴衆は一気に演奏に引き込まれ、固唾を呑んで聴き入りました。
 響きの良いホールですので、椅子がきしむ音、奏者の息遣いや唸り声、擦れる音などが聴こえ、否が応でも緊張感が高まりました。
 圧倒されるような演奏ですが、心に優しく染みてきて、疲れた心を癒してくれるような暖かさが感じられました。6曲があっという間に終わり、早くも大きな満足感に満たされました。

 一旦ステージから下がり、この間に遅れてきた客がゾロゾロと多数入場して来られました。雪で交通事情が悪く、通常に比して遅れた人が多かったようです。

 横坂さんが登場して、続いては組曲第2番です。今度はニ短調ですので、ちょっと暗めで、重厚感を感じさせる曲です。演奏は何も言うことはありません。心に響く6曲を、ゆったりと味わいました。

 休憩後の後半は組曲第6番です。ニ長調であり、再び明るさを取り戻しました。第5曲は、これまでのメヌエットではなくガヴォットで、各曲の対比も鮮やかに、楽しませていただきました。

 数度のカーテンコールの後、大きな拍手に応えて、横坂さんがマイクを持って登場し、挨拶とトークがあり、アンコールに「G線上のアリア」を演奏して終演となりました。

 豊かな残響を誇るホールいっぱいに響き渡るチェロの音はふくよかであり、聴衆を包み込むような温かさを感じさせました。
 これまでもチェロのリサイタルは何度か聴いてきましたが、ピアノとの共演が普通であり、チェロ1本で大ホールで演奏するというのは、あまりないのではないでしょうか。
 バッハの無伴奏だけというプログラムで、単調になるかもとも思いましたが、杞憂に終わり、飽きることなくバッハの世界に身を委ねました。
 ちなみに、バッハの無伴奏チェロ組曲だけの演奏会としては、2010年のLFJ新潟でのウィスペルウェイによる全曲演奏会以来になります。

 素晴らしい演奏を聴いた満足感を胸にホールを出ますと、冷たい風とともに雪が吹き付けて来ました。空気は冷たかったですが、良い音楽聴いた後の心は温かでした。

  

(客席:2階C2-9、¥3000円)